人手不足の原因はどこにある?
2020年は新型コロナウイルスの影響によって企業活動が制約され、蔓延していた人手不足の問題が急速に緩和されました。しかし、少しずつ持ち直しの動きをみせる中で、再び人手不足を感じる企業も緩やかに増加している傾向にあります。
企業が人手不足に悩まされる原因はいくつか考えられます。たとえば中小企業では、大手企業と比較して知名度が低いだけでなく条件面が厳しいために、採用がうまくいかない場合もあります。求職者に採用情報が届かなかったり、大手に待遇面で負けてしまったりすることもあるでしょう。どうしても採用活動において、不利な部分が生じてしまいます。
しかし、人手不足に陥る原因はこのような採用活動だけに限りません。より直接的な言い方をすれば、採用できないのであれば、代替する方法を考えるほかないでしょう。たとえば、以下のように「業務量」や「離職率」といった社内の問題解決を考えていかなければ、仮に頑張って採用したとしても、意味がなくなってしまう可能性があります。
◆業務量の拡大
内閣府の「企業意識調査」によると、人手不足の要因は「業務量の拡大」にあるという企業の回答が最も多い結果となりました。とくに企業規模が大きいほど、その傾向は強まっているようです。業績の悪化などにより、本来必要な人員を確保できず、結果として一人あたりの業務量が増えてしまうケースもあります。
業務は全体の絶対量よりも、“一人あたり”の業務量を考え、要員計画を立てていく必要があります。その要員計画が現在の採用力では実現できないものなのかどうかを検討し、そうであれば、生産性の向上を考えていかなくてはなりません。
◆離職者の増加
業務量自体は増えていなくても、社員の退職によって一人あたりの業務量が増加し、人手が足りなくなるケースも少なくありません。退職率の高さには様々な要因が考えられますが、給与が低く、結果として離職率に表れている場合もあります。給与面が退職理由の場合、新たに人材を募集しても求職者も給与面でのメリットを感じられず、応募が集まらないという悪循環にもつながっています。
また、収入というものは絶対額だけではなく、“自分が投入する労力”(≒労働時間)と比べて適切かどうかを判断する社員もいるでしょう。つまり、ここでも生産性の向上の問題は関わってきます。生産性が向上すれば、同じ給与額であっても印象は異なります。
社内の生産性を上げるためにできる対策
このように、これらを解消する有効な手段の一つが「生産性の向上」なのです。生産性が上がると売上増加にもつながる場合もあるため、従業員の給与アップや労働環境の改善を行い、働きやすい環境を整備できます。そうすれば、採用力の向上にもつながり、企業は人手不足を解消する選択肢を増やせるようになるでしょう。
◆業務のマニュアル化を行う
すぐに着手できる対策として、属人化している業務があれば、マニュアルの作成によって生産性が上がる可能性があります。マニュアル化は、社員ひとりの頭の中に暗黙知として入っている知識やスキルを、誰でもできるように顕在化・明確化することです。その業務に対応できる人材を増やせるため、特定の人に業務が偏らなくなり、1人あたりの作業負荷の軽減につながります。また、マニュアル化を進めることで、不要な業務も見えてきます。業務を整理するうえでも重要です。
◆社員の育成に力を入れる
中長期的な視点で生産性を向上して人手不足を解消する方法としては、今いる「社員を育てる」「能力を高める」という意識も必要です。後継者が見つからず、廃業しなければならない中小企業も存在します。自社の教育体制を見直し、社員を育てていくことが長い目で見たときに大切になります。
採用とは、労働市場を相手にするものです。景気の変動や自社の採用力の高低によって、いくら採りたくても採れないといったケースもよくあります。一方、社内の人材であれば、会社の指示によって能力開発を行いやすいといえます。即効性という面では難がありますが、中長期的には育成に力を入れ、社員の能力を高めて生産性を向上させていくことはベースとしてやっておくべきでしょう。
◆ITツールや新設備を導入する
従業員の負担を軽減させるには、ITツールなどの新しい仕組みを導入することも一つです。業務フローの見える化を行い、問題点や解消できるポイントを洗い出し、適切なツールや設備を取り入れることで生産性の向上が期待できます。単純作業を自動化させたり、事務作業を効率化させたり、チャットツールを利用してコミュニケーションコストを見直すといった改善策も考えられます。
業務の一部を外注や委託でまかなうことを視野に入れてもいいでしょう。
経営陣が積極的に対策を行うことが重要
社内の生産性を向上させるには、現状どのような点がネックになっているのか明らかにすることが第一です。一方で、人手不足を感じている企業はすでに余裕がなく、業務を見直す時間がとれない点がハードルになる場合もあります。
だからこそ経営者および経営層がリーダーシップを発揮し、積極的にはたらきかけることがポイントです。事態が深刻化しないうちに、適切な対策を講じましょう。
監修:人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
TEXT: 成瀬瑛理子
EDITING:Indeed Japan + ノオト




