「労働法」とは何か
労働法とは、労働に関する法令の総称であり、労働法という名称の法律が存在するわけではありません。労働者を守るための基本的な法律である「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」(労働三法)だけではなく、「労働契約法」「労働安全衛生法」「職業安定法」「男女雇用機会均等法」「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)」など、採用および人事領域の担当者が知っておきたい労働法は多岐にわたります。
法律ごとに「労働者」や「使用者」が示すものは異なるため、労働法全般において「労働者」や「使用者」を一律に定義することはできません。今回は、労働基準法における「労働者」や「使用者」の定義を考えてみます。
労働基準法における「労働者」とは
労働基準法における「労働者」は、使用者に使用され、賃金を支払われる人を指します。この条件に当てはまるのであれば、職業分野や職種、雇用形態は問われません。正社員、パートやアルバイトなどの短時間労働者なども労働者にあたります。「業務委託」や「業務請負」といった一部の労務を委ねられる人は、労働基準法上の労働者には当てはまりません。
労働基準法における「使用者」とは
労働基準法における「使用者」は、労働者を使用する立場にあり、労働の対価として賃金を支払う人を指します。
この条件に当てはまるのであれば、経営者や社長など必ずしも経営のトップの立場にある人だけが使用者とは限りません。たとえば、役員は基本的に経営者と同じ立場ですが、工場長や営業部長などを兼任する「兼務役員」は、労働者と使用者の両方の立場にあります。このほか、人事担当者や役員秘書など、会社側の立場で業務にあたる従業員は、業務上は使用者の立場です。また、上司が部下に指揮命令を出す場合、この上司は「使用者」になります。
「労働者」と「使用者」の定義は法律により異なる
労働基準法における「使用者」や「労働者」は、職種や雇用形態に関わらずそれぞれの条件に当てはまる立場の人を指します。
また、形式上は雇用関係にない場合でも、労働実態を加味して「労働者」または「使用者」の性質があると判断する場合もあり得ます。企業の人事担当者は、一労働者として企業に雇用されていると同時に、業務上で指揮命令の権限があれば使用者の立場でもあると見なされるでしょう。
今回は労働基準法を例に労働者と使用者の定義を考えました。様々な労働法の中で、「労働者」と「使用者」の定義は、その法律により異なります。労働関係の法律の内容を確認する際は、「労働者」と「使用者」といった言葉の意味もしっかり確認するようにしたいですね。
※記事内で取り上げた法令は2020年6月時点のものです。
監修:志村経営労務事務所 社会保険労務士 小林寛子
TEXT:森夏紀/ノオト
EDITING:Indeed Japan + ノオト