採用面接で聞いてはいけないことは決められている
採用選考を行うための基本的なポイントは、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」というガイドラインにまとめられています。
そのなかで大原則として示されているのが、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」です。
つまり、裏を返すと、基本的人権を尊重しない質問、応募者の適性や能力に関係のない質問はしてはいけないということです。
具体的には、以下のような項目が「採用選考時に配慮すべき事項」として挙げられています。
◆本人に責任のない事項の把握
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
◆本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 人生観、生活信条に関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 思想に関すること
- 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
◆採用選考の方法
- 身元調査などの実施
- 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
特に社会的差別の原因となる恐れのある個人情報などの収集は、個人情報保護の観点からも認められておらず、職業安定法(職業安定法第5条の4及び平成11年告示第141号)に触れることになることを知っておきましょう。
聞いてはいけない質問をしてしまったときのリスクとは?
採用面接でNGとされている質問をしてしまった場合、コンプライアンス意識の低い会社だと認識・拡散されるリスクがあります。
最近は、就職や採用に関する情報が豊富にあり、様々な情報を収集・交換して面接に挑む応募者も多くいます。採用選考時に聞いてはいけない項目を知っている応募者からすれば、もしも応募シートや面接でそのような質問をされれば、法令を守る意識が低い会社だと認識されてしまい、信用を失うリスクがあるのです。
また、聞いてはいけない項目を知らない応募者にとっても、他社では聞かれないような質問をする時代遅れの会社だと感じられてしまうかもしれません。
そういった情報がインターネット上の就職活動口コミサイトやSNSなどに書き込まれると、またたく間に広がって、会社の評判が落ちるということもあるので注意が必要です。
質問内容以外でも要注意 企業の評判を下げるダメな面接
面接では応募者に聞く内容に加えて、話し方や聞き方にも配慮が必要です。面接担当者は、普段の口調で質問していても、応募者によってはキツい口調に感じられ、いわゆる「圧迫面接」と捉えられる可能性もあります。
また、面接官の面接中の態度も応募者に見られています。たとえば、応募者の顔をあまり見ないで書類やタブレットばかりに目を向けてしまうことは、ついやってしまいがちです。しかし、応募者から「自分に興味がないのだろう」と認識されてしまい、会社の印象を悪くすることもあります。
面接で炎上しないために、会社がしておくべきことは?
採用面接では、各部署の面接担当者や会社の役員、社長など、様々な立場の人が面接官となって選考を行います。どのような人が面接官になっても対応できるように、事前に面接で聞くべき内容、聞くとNGの質問についての資料を配付したり、研修を行ったりして、面接官のスキルアップを図っておくとよいでしょう。
少子化が進むなか、採用はゆるやかな売り手市場になっていると見られています。自社が求める人材に合った応募者を確実に確保するためにも、また、会社の信用を失わないためにも、応募者との最初の接点となる面接という場での正しい対応について配慮しておきましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年5月時点のものです。
<取材先>
うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:武田明子
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト