安全配慮義務と自己保健義務とは? ペナルティや対応策を解説

診察をする医師のイメージ

安全配慮義務とは、企業が労働者の安全や健康に責任を負う義務のことです。一方で労働者も自分の健康を管理する自己保健義務を負っています。そもそも安全配慮義務や自己保健義務とは何なのでしょうか。また、違反した場合の罰則や違反しないための対応策などについて、ゆら総合法律事務所代表弁護士の阿部由羅さんに伺いました。

 

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安全配慮義務とは

「安全配慮義務」とは、労働者の安全や健康を守るために、使用者(企業)に課せられた法的な義務です。
 
労働契約法第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。

 
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安全配慮義務違反になるケース

企業のミスや管理不行き届きによって、労働者が危険に晒された場合、企業は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
 
具体的には以下のようなケースです。

 

◆安全配慮義務違反に問われる例

  • 工場や作業現場での事故によって労働者がケガをした場合
  • ハラスメントによって労働者がうつ病を発症した場合
  • 長時間労働によって過労死した場合


不幸にも事故やトラブルが発生してしまった場合、企業が労働者の危険を予測できたかどうか、それに対して予防措置を行っていたかどうかが、大きなポイントになります。

 

安全配慮義務を怠った場合のペナルティ

労働契約法では、安全配慮義務を怠った企業への罰則は定められていません。ただし、以下の民法の規定により、企業は労働者に対して損害賠償責任を負う可能性があるので注意しましょう。

 

◆債務不履行による損害賠償(民法第415条1項)

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、または債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

 

◆不法行為による損害賠償(民法第709条)

故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

自己保健義務とは

「自己保健義務」とは、労働者が使用者に対して労働を提供するため、自身の健康維持に努める義務・努力義務のことです。ただし、法律上の用語ではありません。以下の規定が、労働者の自己保健義務を定めたものと解されています。

 
 

◆自己保健義務の根拠

  • 労働災害の防止措置に協力する努力義務(労働安全衛生法第4条)
  • 健康診断の受診義務(労働安全衛生法第66条第5項)
  • 保健指導を利用した健康保持の努力義務(労働安全衛生法第66条の7第2項)
  • 事業者の措置を利用した健康保持増進の努力義務(労働安全衛生法第69条第2項)

 
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自己保健義務違反を問う際の注意点

労働者が「健康診断の受診義務」を怠り企業が実施する定期的な健康診断を受けない、かつほかの医師などによる健康診断の結果を企業に提出しない場合は、自己保健義務違反に該当すると考えられます。ただし、そのほかの努力義務を含め、法的な罰則はありません。
 
労働者が自己保健義務に違反していると判断しても、企業はそれだけを根拠に労働者に対する処分を行うのは困難です。
 
健康管理ができていないために職務怠慢や遅刻・早退などが発生していると判断し、労働者に対して懲戒処分を行う際には十分に検討してください。行為の内容・悪質性などに釣り合った処分でなければ、無効になる可能性があります(労働契約法第15条)。

 

安全配慮義務、自己保健義務に対する企業の対応策

企業が安全配慮義務を果たすために大切なのは、作業環境の整備と労働者の健康管理です。以下は安全配慮義務を果たすための対応策の例です。また、労働者が自己保健義務を果たすための企業努力も必要です。

 

◆安全配慮義務を果たすための対応策の例

  • 危険な機械、設備などについては、熟練した労働者のみに取り扱わせる。
  • 機械や設備などの点検や安全確認を徹底する。
  • ハラスメントを防止するため、労働者向けの研修を定期的に行う。
  • 労働者の就業状況を正確に把握し、長時間労働の抑制を図る。

 

◆労働者の健康管理に関する対応策の例

  • 上司や人事部などを通じて労働者の生活状況をヒアリングする。
  • 必要に応じて口頭で改善指導などを行う。


いずれにしても、企業が積極的に労働者とコミュニケーションを図りながら、しっかりと職場環境を管理することが大切です。

 

 

※記事内で取り上げた法令は2022年7月時点のものです。
 
<取材先>
ゆら総合法律事務所 代表弁護士 阿部由羅さん
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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