今すぐ採用難に陥るとは限らない
「2022年問題」と言われている採用難の大きな原因は、少子化による若者の減少です。一世代の人口が減少することによって、若手人材の採用について企業間での争いがさらに激しくなると予想されます。企業側は学生に入社してもらえるようにアプローチしなければなりません。
しかし、実際には2021年から急に採用難が進むとは言い切れない側面があります。たしかに若者の人口は減少していますが、一方で大学進学率は増加傾向にあるからです。文部科学省の「令和2年度学校基本調査」によると、大学の在学者数は291万6000人程度。前年度より約3000人減少しているものの、4年生学部においては前年度より約1万4,000人増加しており、過去最多の学生数となりました。
つまり、実は採用の対象となる母数に大きく変化はありません。もちろん今後、少子化とともに学生数が減っていく可能性はありますが、今すぐに企業の採用活動に大きく影響するとは考えにくいでしょう。
学生数が増加傾向にあるのは、企業側よりも学生にとって不利な状況です。大学の進学率が低かった時代、大卒であることは他の求職者と差別化できるポイントであり、大学の先輩からのつながりで入社するケースも見受けられました。しかし、現在は選考のステップが複雑化し、就職活動そのものが難しくなっています。内定を勝ち取るために、より周到な準備や入社後に生かせる学生時代の経験が求められている状況です。
そもそも、採用市場は年々厳しくなっている
企業からすると、この流れはメリットに見えるかもしれません。しかし、採用活動が複雑化しているのは、従来のやり方では良い人材を集められない背景があります。また、最近ではフリーランスなど、1つの会社に所属する以外の働き方も可能になりました。学生の価値観が変化していることもあり、2021年よりも前から採用は年々難しくなっているのです。
また、どちらかといえば、企業にとってこれからますます採用が難しくなるのはアルバイトの雇用です。大卒の人口が増え、正社員として働きたい層は増加しています。今後、アルバイトを採用する際は、若手にとらわれず、シニアや主婦、外国人など幅広い人材の雇用を視野に入れることも一案です。
採用難でも採用活動を成功させるためには
新卒の採用が難しいならば、中途採用に力を入れようと考える企業もいるかもしれません。新卒を採用する場合、どうしても入社後に教育コストが発生します。そうした体力がない企業は、中途採用に絞って経験者を募集することも多いでしょう。しかし、中途採用こそ企業にとっては激戦となります。
経験や実績が豊富な人材は、多くの企業が入社してほしいと思うものです。そのため、中途で採用するには、より魅力的な条件を提示したり、積極的に自社のアピールをしたりと対策しなければなりません。他社に負けない自社のアピールポイントを把握し、求職者に情報発信するようにしましょう。
学生数に大きな変化がないからといって、採用しやすいわけではないのが採用市場の現状です。企業側は引き続き採用活動に工夫を凝らし、適切なアプローチを心がけましょう。
参考:
文部科学省『令和2年度学校基本調査』
https://www.mext.go.jp/content/20200825-mxt_chousa01-1419591_8.pdf
<取材先>
採用コンサルタント/アナリスト 谷出 正直さん
新卒で大手人材サービス会社に入社。子会社への出向を含め、新卒採用支援事業に約11年間携わる。独立後、フリーランスとして企業の採用コンサルティングや採用アナリストとして活動。新卒採用に関する情報、ノウハウの収集や発信、共有の仕組み、人のつながり作りに強みを持つ。メディアへの情報提供やコラム連載、記事の寄稿、企業や大学でのセミナーの講師、人事・経営者向けの勉強会・交流会の主催、オリジナルのメルマガの配信などを行う。
TEXT: 成瀬瑛理子
EDITING:Indeed Japan +ノオト