給与デジタル払いが解禁 企業にメリットはある?


2021年1月、政府は今春より給与支払いのデジタル化(以下、給与デジタル払い)を解禁することを発表しました。キャッシュレス化に向けた法整備の一つです。
 
これまで労働者に支払われる賃金は、労働基準法で定められた手渡しの現金支払いと金融機関への振り込みの2種類とされていました。給与デジタル払いが実現した場合、企業にはどのような影響があるのでしょうか。
 
給与デジタル払いのしくみや、導入した際のメリット・デメリットについて、特定社会保険労務士・杉山晃浩事務所・代表の杉山晃浩さんに伺いました。

 
 

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給与の支払いに関する原則


労働基準法第24条では、給与の支払いについて次のように定めています。

 
 

◆賃金支払いの5原則

 

  1. 通貨(現金)払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上払いの原則
  5. 一定期日払いの原則


1の「通貨(現金)払いの原則」の例外として、企業と労働組合が労働協約を締結している場合に限り、現物支給が認められています。
 
また、2の「直接払いの原則」の例外として、企業は労働者の同意を得た上で、金融機関(銀行・証券会社)の口座に給与を振り込むことができます(労働基準法施行規則第7条)。

 
 

給与デジタル払い解禁の背景


これまで従業員への給与の支払い方法には、基本的に「現金の手渡し」もしくは「金融機関への振り込み」の2つの方法しかありませんでした。3つめの方法として、今春より解禁になるのが「給与デジタル払い」です。
 
給与デジタル払いの導入は、キャッシュレス決済を利用する人が増えたことや、行政サービスを含め社会のデジタル化を促進するための法整備の一つといえます。
 
2019年12月に開催された「第42回国家戦略特別区域諮問会議」において、デジタル給与払いについて規制改革事項が決定されました。
 
キャッシュレス社会の促進 《デジタルマネーによる賃金支払いの解禁》」と題した会議資料には、以下のように記されています。

 

「労働者本人が希望する場合、資金移動業者の口座への支払いも解禁。キャッシュレスの推進や外国人材も含めた勤労者の利便性向上に貢献」
 
「解禁の前提として、万が一、資金移動業者が破綻した場合であっても、十分な額が労働者に支払われる資金保全手段の設計を早期に具体化」

 
 

給与デジタル払いのしくみ


給与デジタル払いとは、資金移動業者が提供する携帯アプリやプリペイドカードなどによって、デジタルマネーで給与を支払うしくみです。
 
方法は多々ありますが、具体的な案として有力視されているのが、アメリカで普及している「ペイロールカード」方式です。
 
ペイロールカードとはプリペイドカードの一種で、給与の振込先として利用できるカードのことです。企業は金融機関を通さずに直接カードに給与を支払い、従業員は現金を移動したり引き出したりすることなく、ペイロールカードでショッピングの決済や交通機関の運賃払いができます。
 
給与デジタル払いを導入する際には、まず就業規則の改正が必要です。賃金の支払い方法に「給与デジタル払い」を追記します。その後、同意書を作成し、労働者の同意を得ることで、給与デジタル払いが可能になります。ペイロールカードを導入する際の流れは以下の通りです。

 
 

◆デジタル払いまでの流れ(企業)

 

  1. デジタル払いを可能にする「就業規則」の改正
  2. デジタル払いへの労働者の同意確認(同意書にサインをもらう)
  3. ペイロールカードへの支払い

 
 

◆デジタル受け取りまでの流れ(労働者)

 

  1. 資金移動業者の選定とペイロールカードの入手
  2. デジタル払いへの同意(同意書にサインする)
  3. ペイロールカードでの受け取り

 
 

給与デジタル払いのメリット・デメリット


トラブルを回避するためにも、給与デジタル払いの導入を検討する際は、メリットとデメリットを十分に把握しましょう。

 
 

◆給与デジタル払いのメリット

 

  • 支払手数料が削減できるか、もしくは無料になる可能性がある
  • 振り込み作業が電子化され、業務効率の向上が期待できる
  • 銀行口座を持たない外国人就労者への支払いが可能になる
  • 電子マネーの利用頻度が高いとされる若者を採用する際、デジタル払いが他社との差別ポイントになる

 
 

◆給与デジタル払いのデメリット

 

  • 企業が指定した資金移動業者が破綻したときに、労働者から責任を追及される恐れがある
  • 従業員になりすました相手に給与を支払ってしまう恐れがある
  • 情報が漏洩したときに、どこまで被害が広がるか予想できない


現状、デジタルマネーの換金の利便性や資金移動業者の破綻による資金保全の不安、また、なりすましの発生やデータ流出といったセキュリティなど、懸念材料があることは否めません。
 
しかし、これからの時代、給与デジタル払いが若者や外国人を雇用する際のアピールポイントになり得ます。こうした方法がスタンダードになる前に自社に導入することで、他社との差別化につながり、人材確保の一助になるかもしれません。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年3月時点のものです。
 
<取材先>
特定社会保険労務士 杉山晃浩事務所 代表 杉山晃浩さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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