賞与支給時の社会保険料の計算方法(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は? 給与計算との違い


企業によって支給の有無や回数が異なる賞与(ボーナス)。支給時の社会保険料の計算方法も毎月労働者に支払われる給与とは異なります。賞与の基礎知識を確認するとともに、社会保険料の計算方法についても解説します。寺島戦略社会保険労務士事務所代表で社会保険労務士の寺島有紀さんと社会保険労務士の大川麻美さんに伺いました。

 
 

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賞与とは


賞与は労働基準法で「定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの。定期的に支給され、かつその支給額が確定しているものは、名称に関わらず、賞与とはみなさないこと」と定められています。
 
また、健康保険法、厚生年金保険法で、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、3カ月を超える期間ごとに受けるもの」とされています。つまり、労働者が労働の対償として受け取るもののうち、年3回以下のものであることが条件です。この条件を満たせば、賃金、給料、俸給、手当など名称に限らず該当します。
 
そのため、労働の対価としての性質を持たない、雇用主が恩恵的に支給する「大入袋」や「見舞金」「結婚祝金」などは賞与とみなされません。

 
 

賞与の支給ルールは法律に定めはない


賞与は、毎月支給する給与とは異なり、必ず支払わなければならないものではありません。支給要件や支給時期、計算方法などは、労働基準法やそのほかの関連法令に定めはなく、原則として雇用主と労働者の間で自由に決められます。また、通貨に限らず、自社製品などの現物で支給するケースも賞与に含まれます。

 
 

賞与支給の有無はどのように決められるのか


賞与の支給の有無は、会社ごとに決定します。そのため、賃金規定に詳細を定めている会社から、「業績が好調な時に支給する場合がある」などのざっくりとした文言のみとしている会社まで、その内容はさまざまです。
 
賞与について細かくルール化することで、支払えなかった場合に労働者とトラブルに発展する可能性もあります。賞与は会社の経営状況や業績とも関わるため、不要なトラブルを防ぐのであれば、「賞与を支給する場合がある」のように大まかに定めておくほうがベターといえます。
 
また、賞与支給額も同様です。会社が就業規則に具体的な算定基準や支給率、支給金額を定めると、労働者が賞与の支給を権利として請求できる「賞与請求権」が発生するため、「給与の◯カ月分」などの具体的な金額を明記しないことが肝心です。
 
実際に、賞与の支給に関する裁判例の多くに「就業規則上、賞与の支給規定に具体的な支給率や額が定められておらず、使用者の決定や労使の合意・慣行がない場合は、賞与請求権は具体的に発生しない」と判決が出ています。

 
 

支給日在籍の要件とは


賞与の支給日在籍要件とは、「賞与支給日に在籍しない場合は賞与を支給しない」と就業規則等において定めることをいいます。この規則がない場合、賞与支給期日の前日に退職した労働者でも、計算期間の勤務期間の割合に応じて請求権を有します。規定があれば、支給日在籍要件が有効となります。
 
ただし、会社の都合で賞与支給日が大幅に遅れた場合、本来の支給日に在籍していた労働者に対しては、その後に退職したとしても賞与を受給する権利があると認められた判例があります。

 
 

支給日や支払い回数の設定に必要な手続き


就業規則に記載すべき事項は、労働基準法第89条に定められています。

 

  • 絶対的必要記載事項:必ず記載しなくてはならない事項
  • 相対的必要記載事項:事業所でルールを決めるときに記載しなくてはならない事項

賞与は「相対的必要記載事項」の「臨時の賃金(賞与を含む)」に該当するため、会社で賞与のルールを設ける際には賃金規定として定める必要があります。ただし、具体的な記載内容については、企業の裁量が認められています。

 
 

賞与の社会保険料や雇用保険料、所得税の計算


続いて、賞与にかかる社会保険料・雇用保険料・所得税の算出方法について紹介します。

 
 

◆社会保険料の計算方法


健康保険料厚生年金保険料のいずれも以下の計算方法で算出できます。
 
標準賞与額 × 健康保険(厚生年金保険)の保険料率
 
保険料は事業主と被保険者が折半で負担するため、事業主の負担は算出された額のそれぞれ1/2です。
 
賞与が現物で支給される場合、食事や住宅であれば「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)で定められた額に基づいて通貨に換算し、標準賞与額を算出します。
 
自社製品などほかのもので支給される場合は、原則として時価に換算して、その額に応じた社会保険料を支払う必要があります。

 
 

◆雇用保険料の計算方法


雇用保険料は、以下の方法で算出します。
 
標準賞与額 × 雇用保険料率
 
雇用保険料率は事業によって異なり、厚生労働省の公式ページで確認できます。
 
例)令和2年度の場合
一般の事業…0.3%
農林水産・清酒製造の事業…0.4%
建設の事業…0.4%

 
 

◆所得税の計算方法


賞与にかかる所得税は、以下の方法で求められます。
 
(賞与の総支給額 − 社会保険料の合計額) × 源泉徴収率
 
源泉徴収率は、国税庁の「賞与に関する源泉徴収税額の算出率の表」に記載されていて、前月の給与の課税対象額と扶養親族の数で税率が決まる仕組みです。
 
ただし、前月に給与を支払っていない場合や賞与が前月度給与の金額の10倍を超える場合は、給与と同じ「給与所得の源泉徴収税額表」(月額表)を使います。

 
 

賞与支給後の各種届出・所得税の納付


事業主が被保険者及び70歳以上被用者(従業員)へ賞与を支給した場合、支給日より5日以内に毎月の健康保険・厚生年金保険料と同率の保険料を納付します。日本年金機構に登録されている賞与支払予定月の前月に、日本年金機構から事業所へ「被保険者賞与支払届」が送付されます。会社は事業所の所在地を管轄する年金事務所に「被保険者賞与支払届」を提出。提出方法は、電子申請のほか、窓口や郵送でも可能です。
 
所得税は、源泉徴収した所得税を控除した月の翌月10日までに事業所の住所を管轄する税務署への納付が必要です。「源泉徴収した所得税を控除した月」とは、賞与を支払った月を意味します。つまり、労働者への賞与の支給が12月10日の場合、納付期限は1月10日です。
 
賞与規定については、会社によってその内容が異なります。どの範囲までを決めておく必要があるかを社内で検討し、無理のないルールを設けることが大切です。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。
 
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん 社会保険労務士 大川麻美さん
 
TEXT:畑菜穂子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト


 
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