賞与不支給報告書とは?
「賞与不支給報告書」とは、企業が対象となる労働者に賞与を支給しなかった場合、日本年金機構(所轄の年金事務所)に提出しなければいけない書類のことです。
対象となる労働者は以下の通りです。
- 健康保険・厚生年金保険、船員保険・厚生年金保険のいずれかの被保険者
- 70歳以上の被用者
※厚生年金加入対象ではない70歳以上の労働者は「被保険者」ではなく「被用者」(雇われている人の意)といいます。提出する賞与不支給報告書は、日本年金機構のサイトからダウンロードした様式、もしくは「e-Gov」による電子申請が可能です。
・新設された書類
「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与不支給報告書」
「船員保険・厚生年金保険 被保険者賞与不支給報告書」
賞与不支給報告書の新設と同時に、以下の書類が廃止されました。これらの改正をまとめて「賞与支払届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設」といいます。
・廃止された書類
「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表」
「船員保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表」
「健康保険・厚生年金保険 被保険者月額算定基礎届総括表」
これまで、企業が従業員に賞与を支払った場合は「被保険者賞与支払届(70歳以上被用者賞与支払届)」(賞与支払届)と上記の総括表を提出する必要がありました。また賞与の支給がなかった場合は、総括表に「不支給」と記載して、日本年金機構(所轄の年金事務所)に提出しなければなりませんでした。
制度の変更により、不支給の場合には賞与不支給報告書を、支給の場合には賞与支払届を提出するだけになりました。
制度変更の背景と目的
従来の書類の廃止や新たな書類を新設した背景には、「デジタルガバメント実行計画」(2019年12月に閣議決定)などの行政改革があげられます。
デジタルガバメント実行計画とは、国民の利便性の向上につながる行政手続きについて、優先的にオンライン化、添付書類の省略を進める策定です。
厚生年金保険関係の手続きにおいても例外ではありません。添付書類を省略し、手続きの簡易化を図ることで、事業主に電子申請(e-Gov:事前にアプリケーションのインストールやアカウントの登録が必要)の利用を促すことを目的としています。
企業のメリットと提出しなかった場合の罰則
制度の変更による企業のメリットは、提出書類が簡易化されたため、簡単に手続きができるようになった点です。
ただし、簡易化されたとはいえ、年に1、2回の手続きのため、制度の変更にかかわらず忘れてしまいがちな業務でもあります。どんなにベテランの担当者でもうっかりミスの可能性がないとはいえません。
提出を忘れた場合、その理由を報告書にまとめて提出しなければならなかったり、保険料の延滞金が生じたりすることもあります。
また、事業主が正当な理由なく届出をしなかった、もしくは虚偽の届出をした場合には、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられるケースもあるので注意してください。
うっかりミスを防ぐためには、事前に「賞与支払月の予定」を年金事務所に提出しておくことが大切です。そうすると日本年金機構から、賞与支払月の前月に賞与支払届や賞与不支給報告書が送られてきます。
提出書類の省略など、行政手続きは今後ますます簡略化していくことが予想されます。電子申請の方法がわからない、覚えられない、もしくは紙での管理のほうが安心という人もまだまだ多いかもしれません。しかし、一度覚えてしまえば電子申請は非常に便利なシステムです。完全なペーパーレス社会になる前に、徐々に移行していくことをおすすめします。
※記事内で取り上げた法令は2021年6月時点のものです。
<取材先>
堀下社会保険労務士事務所 代表 堀下和紀さん
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト