採用活動に「自社の強み」が必要な理由
採用活動における強みとは、求職者が「就職先を決める理由」です。昨今は、求職者側が有利な売り手市場。採用側は自社の強みを打ち出し、求職者に選ばれないといけません。逆に言うと、何も強みがない=求職者に選ばれる理由がない状態ですので、採用活動をいくら頑張っても成功につながりにくくなってしまいます。
◆求職者の志向は年々変わる
新卒採用の場合、働き方を優先したり将来性に重きを置いたりと、毎年少しずつ就職先を選ぶ理由は変化しています。中途採用の場合でも、景気によって年収を重視したりやりがいを求めたりするなど、就職先を選ぶ理由は時代によって変わるもの。求職者の志向に合わせつつ、企業は自社の強みをアピールする必要があります。
◆求職者を惹きつける「強み」とは
最近では、どんな強みを打ち出せばよいのでしょうか。「就職プロセス調査(2020年卒)」(調査:リクルートキャリア 就職みらい研究所)によると、2020年卒の学生に対して「就職先を確定する際に決め手となった項目」を尋ねたところ、1位は「自らの成長が期待できる」で56.9%、2位は「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」で35.0%、3位は「希望する地域で働ける」で34.3%という結果になりました。
2位の「福利厚生」や3位の「希望勤務地」については、規模が大きく体力もある大企業の方が中小企業よりも有利になることが多いでしょう。福利厚生をより充実させるためにはこれまで以上の経費が必要ですし、勤務地についても全国各地に支社や支店がないと希望を叶えることはできません。つまり、中小企業がアピールしていくべき強みは、「自らの成長が期待できる」職場環境を整え、それを求職者に伝えていくことなのです。
自社の強みの見つけ方
企業の強みは求職者に共感してもらえるものでなくてはなりません。たとえば、充実した研修制度が強みだとしても、単に「研修制度が充実していることが強みです」とアピールするだけでは、求職者の心を掴むことはできないでしょう。研修を受けた社員がどのように成長していったのか、短いエピソードでアピールすれば、求職者にも「自らの成長が期待できる」と感じてもらいやすくなります。強みとともに、関連するエピソードを見つけ出してみましょう。
◆自社の強みとエピソードの見つけ方
求職者にとって自らの成長とはキャリア形成を指し、「いかによいキャリアを築ける会社なのか」が重要な情報になります。そこでまずは、自社の社員はどのようなキャリアを築いているのか、ヒアリングによって分析してみましょう。
この時にポイントになるのは、「以前・今・これから」をフレームワークとして、順を追って質問していくことです。たとえば、3年目から5年目までの若手社員の中から評価の高い社員を選び、彼らの学生時代から順を追ってヒアリングしていきます。以下に質問例を挙げてみます。
- 「以前」に関して
(1)学生時代はどんなことに興味があり、どんな生活を送っていたか
(2)どんな就職活動を行って、自社に入ったのか、何が決め手だったのか
(3)入社後に苦労したことは何か、その時誰に助けられたか、会社のサポートはあったか
- 「今」に関して
(4)(3)の結果、どうなったか、どんなことに成長を感じているか
(5)今の課題は何か
- 「これから」に関して
(6)自分の将来像
特に注目したいのは、(3)の質問です。丁寧に情報を拾い上げるよう気をつけながら、ヒアリングの中で登場した“助けた人”にも当時の話を聞きましょう。さまざまな立場の情報を集めることで、新たな視点から自社の強みにつながる要素を見つけだせるかもしれません。
また、時間軸に従ったフレームワークを使うことによって、ヒアリング対象者はゆっくりと過去から順に思い出していくことができます。聞き手は成長の過程を把握することで、成長できた理由を探しやすくなります。また最後に将来像を聞くことによって、今後どのように成長していきたいかわかり、エピソードを作ることができます。
◆自社の強みをどう生かしていくのか
社員のこれまでのキャリアと成長の要因が見つかったら、それがそのまま「自社の強み」になります。そして、その強みが見つかったら、そこにエピソードを添えます。たとえば、先輩が後輩の面倒をよくみる社内文化があれば、それを強みとし、ストーリーとして明文化できるでしょう。
「売れなくて悩んでいた時に、一つ上の先輩が時間を割いて営業先に同行してくれました。その後も毎日声をかけてくれて……。来年には自分も後輩を助けられるだけの実力をつけたいと思いました。それで頑張れてあの数字が達成できました。そんな雰囲気の会社です」
このように、エピソードを先輩の声として求人情報に添えることによって、いままで以上に求職者の共感を得やすくなるでしょう。
社員を知ることが、自社の強みを知ることにつながる
求職者に「自らの成長が期待できる会社だ」と思ってもらうのは、一朝一夕にできることではありません。本稿でご紹介した時間軸のフレームワークを使って丁寧にヒアリングし、自社の強みを発見しながら具体的なエピソードを作り上げていきましょう。
参考文献:
リクルートキャリア 就職みらい研究所『就職プロセス調査(2020年卒)』
https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2020/200330-01/
TEXT:国家資格キャリアコンサルタント 戸田敏治
EDITING:Indeed Japan + ノオト