SWOT分析とは
「SWOT分析」とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)それぞれの頭文字を集めた造語で、経営戦略の策定、マーケティング戦略を行うための代表的なフレームワークです。
自社の内部環境要因と外部環境要因について、「好ましい側面」と「好ましくない側面」から整理していきましょう。具体的には、下記の4つの象限に分析します。
<内部環境要因>
●強み(Strength)
自社における強みとなる人材、ノウハウ、機能、技術、体制などの経営資源
●弱み(Weakness)
競合と比べて見劣りしていたり、不足していたりする経営資源
<外部環境要因>
●機会(Opportunity)
好景気、技術革新、トレンドの変化など、企業にとって追い風となる要因
●脅威(Threat)
自社の努力だけでは防ぎようのないリスク。市場環境の悪化や法規制などの悪影響の要因
採用活動におけるSWOT分析の手順について
採用活動において、SWOTをどのように使えばいいか、その活用手順を解説します。
(1)自社の「求めるターゲット」を明確にする
現場の社員を統括している管理職にヒアリングしたり、ターゲットに近い優秀な従業員にインタビューしたりして、自社の「求めるターゲット」を作り上げます。
(2)「強み」「弱み」「機会」「脅威」に当てはまる要素を書き出していく
このとき大切なのは、目的とする「採用活動」にとっての内部環境要因(強み/弱み)、外部環境要因(機会/脅威)を洗い出すことです。
(3)内部環境要因と外部環境要因をかけ合わせ、自社のアピールポイントを整理する
SWOT分析した、内部環境要因(強み/弱み)と外部環境要因(機会/脅威)を掛け合わせることで、より深掘りした自社のアピールポイント(戦略)を見つけていきましょう。
「強み」×「機会」=自社の強みと機会を最大限に発揮する
「強み」×「脅威」=強みを活かして、脅威において差別化を図る
「弱み」×「機会」=弱みを克服して、機会を活かす
「弱み」×「脅威」=弱みと脅威による最悪な結果を回避する
このやり方を「クロスSWOT分析」といいます。
特に押さえておきたいのは、「強み」×「機会」と「強み」×「脅威」です。「強み」×「機会」によって、「求めるターゲット」に対して、自社の競争優位性を訴求できます。また、「強み」×「脅威」では、競合や市場における脅威を逆手にとり、強みとなる差別化ポイントを抽出することが可能です。
採用活動におけるSWOT分析の活用例 〜美容室を経営するA社の場合〜
都心に4店舗の美容サロンを展開する企業A社の美容師採用に、SWOT分析を活用してみましょう。A社は、新たな店舗展開を計画しており、今回は将来店長を任せられる若手を募集したいと考えています。
(1)まずは、自社の「求めるターゲット」を明確にする
将来店長をやってみたいと考えている、野心のある美容師(スタイリストもしくはアシスタント)。具体的には、現在、大手ヘアサロンに勤務しているものの、なかなかチャンスに巡り合えず、より活躍できるフィールドを求め、中堅美容室への転職を考えている20代の若手を「求めるターゲット」に設定しました。
(2)「強み」「弱み」「機会」「脅威」に当てはまる要素を書き出していく
内部環境要因(自社の強み/弱み)と外部環境要因(機会/脅威)の4つの象限に該当する要素を、下記に洗い出してみます。
<強み(Strength)>
- 新店舗の立ち上げを計画中
- 年齢や社歴を問わず、実力主義
- みんなで連携して、顧客満足度の高いサービスを提供
- アシスタントのモチベーションと技術向上のために歩合制を導入
<弱み(Weakness)>
- 新しい企業のため、仕組みや体制が整っていない
- マンパワーが足りない
<機会(Opportunity)>
- 「店長になりたい」という夢をもった美容師(経験3年未満のアシスタント)が一定数いる
- 大手企業のオフィスができ、新規のお客様が増えている
<脅威(Threat)>
- 売り手市場で採用しにくい
- 周囲に競合他社の美容室が増えつつある
(3)内部環境要因と外部環境要因をかけ合わせ、自社のアピールポイントを整理する
「強み」×「機会」では、「求めるターゲット」には、「実力主義」という社風と「新店舗の立ち上げを計画中」という将来性の組み合わせが一番のアピールポイントとして考えられます。さらに経験3年未満のアシスタント層を「求めるターゲット」として絞った表現にすれば、より採用にもつながりやすくなります。
また「強み」×「脅威」からは、「アシスタントのモチベーションと技術向上のために導入した歩合制」という、他社にはない差別化ポイントを見出すことができます。これも当社のアピールポイントの1つなので、合わせて求人情報に反映しましょう。このように総合して活用することで、採用効果が高まる求人情報を作成します。
過小評価していた自社の魅力を正当に評価できる
企業の経営者や人事担当者の中には、「自社には強みや魅力はない」と思っている方が少なくありません。あるいは、「これがウチの魅力だ」と思っていても、「求めるターゲット」は「魅力(強み)」と感じていなかったり、採用担当者が「弱み」と思っていたことが、ターゲットにとっては「魅力(強み)」であったりします。
SWOT分析を活用すれば、そんな人々の誤解を払拭することができるでしょう。自社の魅力を正当に把握し、より魅力的な求人情報づくりに役立ててください。
TEXT:キャリアコンサルタント 西谷忠和
EDITING:Indeed Japan + ノオト