選択的週休3日制とは
多くの企業が週休2日制度を設けているなか、1週間あたりの休みを1日増やして週休3日とする制度の導入を検討する企業が見られるようになりました。それまでは週5日で行っていた業務を週4日とすることで、より多様な働き方ができると期待されています。
2021年4月に、加藤勝信官房長官が「選択的週休3日制」の導入について検討する考えを示したことで話題になりました。「選択的」というのは、企業自体が強制的に週休3日制にするのではなく、正規・非正規雇用を問わず希望する人が週休3日制という働き方を選べることを指しています。


導入が検討されている背景と目的
近年、ワークライフバランスが重視されるようになっていることが背景として考えられます。従業員それぞれが育児や介護、家事と仕事を両立させるために多様な働き方が選べる必要性が高まっているといえるでしょう。
またコロナ禍による感染防止の観点や、業績が低迷する企業が増えていることから、従業員の労働時間や出社日数を減らす目的もあります。
さらに、政府は、大企業で人材が充足していて能力を発揮する機会のない人が、人材不足の中小企業で働いたり、副業を行ったりするなど、労働力の固定化を解消して、多様な人材を企業間で活かすことができるという効果も期待しているようです。
選択的週休3日制を導入するために変更するもの
選択的週休3日制を導入するためには、就業規則を変更する必要があります。休日や休暇に関する規則は、就業規則の「絶対的必要記載事項」であるため、必ず記載しましょう。今まで週休2日や完全週休2日などに設定していた場合は、新たに週休3日を追加します。
また、選択的週休3日制を導入するにあたって、該当する従業員の給与体系をどのようにするかを決めなければなりません。同制度の給与体系には、主に以下の3つのパターンが想定されます。
1. 労働時間が減少し、給与は現状を維持
1日の労働時間が8時間×5日だった場合、このパターンだと8時間×4日となります。給与はそのままで、従業員にとっては休みが1日増えたということになります。
2.労働時間が減少し、給与も減少する
1日分の労働時間の減少に合わせて、給与を減額して改定するパターンです。
3.労働時間を維持し、給与も維持する
1日の勤務時間を長めにすることで、労働条件と給与条件を維持したまま週休3日制を導入します。このパターンでは、通常1日の勤務時間が法定の8時間を超えることになるので、1カ月単位の変形労働時間制やフレックスタイム制を適用する必要があります。
これらのパターンからいずれかを選択しなければならないわけではなく、同一企業で複数のパターンを選ぶこともできます。
社会保険料、雇用保険はどうなる?
◆社会保険料
所定労働時間が、ほかの正社員の4分の3以上であれば加入できます。たとえば、ほかの正社員の所定労働時間が週40時間だとすると、30時間以上勤務であれば引き続き加入ができます。
社会保険料は、事業主から受け取る賃金の月額を区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」に、保険料率を掛けて算出されます。そのため、選択的週休3日制の導入によって「標準報酬月額」が下がることになれば、社員にとって毎月支払う保険料も減りますが、将来受け取る厚生年金額も減ってしまうことになります。
保険料は会社と社員で半分ずつ負担しているので、会社の負担も減ることになります。
◆雇用保険
所定労働時間が週20時間以上であれば引き続き加入できます。選択的週休3日制の導入により賃金が減額した場合は、毎月支払う雇用保険料も、失業したときの求職者給付も減額します。そのほか育児休業給付金や介護休業給付金など在職中に受給できるものもありますが、そちらも減ることになります。
トラブルを避けるためにも、選択的週休3日制を導入する際は従業員に上記の点を説明することが大切です。


企業側のメリット、デメリット
◆メリット
- 人件費などのコストが削減される
- 限られた時間の中で業務にあたることで、従業員の生産性の向上が期待できる
- 多様な働き方を求めている従業員が満足し、離職が減る可能性がある
- 多様な働き方に理解を示すことで、人材を採用しやすくなる
◆デメリット
- 週休3日制の社員の業務負担が減る分、ほかの従業員の負担が増える可能性がある
- 全員が顔を合わせる機会が減るため、社内でのコミュニケーションが取りにくくなる場合がある
- 職種によっては、顧客や取引先とのやりとりが滞る可能性がある
- 変形労働時間制などの給与体系が増えることで、勤怠管理が煩雑になる
選択的週休3日制は、活用次第では、労働人口が減少する日本の企業にとって画期的な働き方になる可能性があります。その一方で、これまでとは異なる就業スタイルを導入するためには、企業側の仕組みの改善や、働く側の意識改革が必要になります。
※記事内で取り上げた法令は2021年6月時点のものです。
<取材先>
うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也さん
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 +ノオト
