採用管理システム(ATS)とは何か
採用管理システムとは、採用業務を効率化するためのシステムのこと。「Applicant Tracking System」の略で、「ATS」とも呼ばれています。
応募者の情報管理や説明会などのイベントへの誘導、面接時の日程調整、合否通知など、採用に関するあらゆる業務を一元管理するもので、何かと煩雑になりがちな採用業務の効率化に欠かせないツールです。
とりわけ近年では、経歴や能力の異なる多彩な層に採用の対象を広げ、多様な人材を確保しようとする「複線型採用」が注目を集めています。加えて、日本企業が旧来より行ってきた、終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用から、職種などの雇用条件を絞って採用を行うジョブ型雇用に移行する風潮も顕著であることから、採用プロセスはますます複雑化しています。
ジョブ型雇用では職種など条件ごとに採用プロセスが変わるため、ATSを用いた管理を行うことで、大幅な効率化が見込めるのです。
ATSを使うメリット、デメリットは?
ATSを導入する最大のメリットは、採用業務の効率化とスピードアップでしょう。昨今のように売り手市場が続いている求人市場では、選考や手続きに長い時間をかけてしまうと、優秀な人材をどんどんライバル企業に奪われてしまいます。的確な情報を適切なタイミングで発信し、応募者に対して迅速なレスポンスを行うことは、採用戦略において非常に重要です。
また、これまでは人事部が担う採用や労務情報、評価、勤怠、研修といったタスクは個別に管理されてきましたが、タレントマネジメントシステムの普及によって、社員情報の一元管理化が進められています。そうした社内ツールとATSを連携させれば、一人ひとりの入社時の希望や前提条件などが引き継ぎやすく、入社後の配属や異動の検討時に情報を生かしやすくなります。結果的に人材の有効活用に通じ、生産性や経営効率の向上に寄与することになるでしょう。
ただし、あまり頻繁に採用を行わない小規模企業であれば、手製のエクセルシートなどで情報を管理するほうがコスト削減に繋がっていいという考え方もあるでしょう。導入に際しては、企業規模に合わせて費用対効果を見極める必要があります。
導入する際の注意点
ATSの導入により、採用業務が有利になることは間違いありません。しかし、特定のATSの機能に採用プロセスを合わせて変更するようでは本末転倒です。自社の採用戦略を吟味したうえで、それに適したサービスの導入を検討するべきでしょう。
たとえば、漠然と良さそうに見えたATSを導入したのはいいものの、それまで利用していた求人メディアと連携できなかったり、既存のタレントマネジメントシステムに対応していなかったりするようでは、業務の効率化は望めません。まずは現状の課題をベースに考えるべきで、集客が弱いならメディアとの連携性を重視したり、選考プロセスの効率化を求めるならオンライン面接機能の精度を重視したりと、個別の事情に合わせてサービスを選びましょう。
なお、ATSにもアレンジの自由度の高いものもあれば、特定の機能をまとめてパッケージ化したものもあります。たとえば成長基調にあるベンチャー企業であれば、組織の成長や変化に応じて機能を拡充できる自由度の高い製品を選ぶべきで、最初から多くの機能を求める必要はないと言えます。
業務の行程が徹底的に磨き上げられ、それが競争優位性に結びつくオペレーションエクセレンスを目指すには、自社にとって最も適切なATSサービスを探すことが第一なのです。
<取材先>
株式会社人材研究所・代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ+ ノオト