雇用形態の種類
法的に定められている雇用制度には、「無期雇用」と「有期雇用 」の2種類があります。労働契約上、「労働期間の期限の定めなし」とした雇用制度を「無期雇用」、「労働期間の期限の定めあり」とした雇用制度を「有期雇用」といいます。
一般的には、それぞれ以下のような雇用形態があります。
- 無期雇用……正規社員:正社員
- 有期雇用……非正規社員:契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイト など
また、労働期間の期限だけでなく、就業時間にも違いがあります。企業で定めた始業・終業時間で労働する正規社員に対して、非正規社員は正規社員よりも労働時間が短いケースがほとんどです。
ただし、近年では正規社員でも短時間正社員制度やフレックスタイム制などで労働時間を選べたり、非正規社員でも条件次第で無期雇用契約が結べたりと、上記の枠組みを超えて働き方は多様化しています。


嘱託社員とは?
「嘱託社員」とは、一般的に有期雇用で契約した労働者の呼び名のひとつです。法律上、嘱託社員に関する定義はありません。
企業は同じ有期雇用である「契約社員」との違いを、以下のように区別していることがあります。
- 定年後に再び雇用した労働者を嘱託社員と呼ぶ
- フルタイム勤務を契約社員、非常勤を嘱託社員と呼ぶ
いずれにしても、「労働期間の期限の定めあり」「賞与なし(出ても寸志程度)」「退職金制度なし」など、嘱託社員と契約社員に同条件を提示している企業が多く、法的な定義もないため、便宜上の呼び名といえます。
嘱託社員を採用する際のメリット・デメリットは?
嘱託社員は、一般的に定年を迎えた人を再雇用するケースがほとんどです。そのため、次のようなメリット・デメリットがあります。
◆嘱託社員を採用するメリット
- ゼロから人材を育てるよりも、生産性や効率が上がりやすい
- 職場や仕事に慣れている従業員なので、経験・能力を活用しやすい
- 人件費を抑制できる
◆嘱託社員を採用するデメリット
- 中高年が多いので、病気やケガのリスクが増える
- 年齢に伴う短期間での退職リスクが高い
上記を考慮して採用を検討する場合、労働条件や賃金の設定については次のように考えるとよいでしょう。
- 労働条件の設定
これまでと同じような勤務時間や業務内容で働けるのか、企業側の判断と、労働者側の意向を調整する - 賃金の設定
定年前と同じ役職を担わせるのであれば待遇は定年前と同等にするべきであり、役職を外したり職責を軽くしたりする場合は、60%を限度に賃金を低減させるなど、労働条件と待遇面から算出する
嘱託社員採用時に知っておきたい無期転換ルール
嘱託社員は有期雇用ですが、企業は条件を満たす労働者からの申し出があれば、無期雇用に転換することができます。
これは、労働契約法の改正に伴ってスタートした「無期転換ルール」によるものです(労働契約法第18条/2013年4月1日施行)。
無期転換ルールとは、嘱託社員など有期雇用契約者を対象とした制度です。労働契約期間が通算5年を超えた時点で、期間の定めのない労働契約(無期雇用)に転換できます。
◆無期転換ルールの概要
- 対象は同一の会社で通算5年を迎える有期雇用契約者すべて(契約社員、嘱託社員、アルバイト、パートタイマーなど名称を問わず)
- 有期雇用契約者の申込みによって成立し、企業が申し出を拒否することはできない
- 原則として有期雇用時の契約と同一の労働条件にする
- 定年を超えての適用については、無期転換申込権(※)が発生しない「特別措置法」がある
※有期契約労働者が企業に対して無期転換の申込みができる権利のこと
無期転換申込権の発生期間例)
有期雇用の契約期間が1年の場合……5回目の更新後、次の更新までの1年間
有期雇用の契約期間が3年の場合……1回目の更新後、次の更新までの3年間
このルールは、有期雇用契約者が契約更新の有無を心配せずに安心して働き続け、キャリアを形成できる環境を整備するために設けられました。企業にとっても長期的な社員育成につながるといったメリットがあります。
ただし、概要の4にあるように、定年後の嘱託社員については無期転換申込権が発生しません。こうしたルールも考慮し、中・長期的に人事管理できる体制を整えましょう。
※記事内で取り上げた法令は2020年11月時点のものです。
<取材先>
堀下社会保険労務士事務所 代表 堀下和紀さん
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

