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会社が求める「人材像」と人材が求める「会社像」 – [第4回]中小企業経営者が知っておきたい「いまどき採用事情」黒田真行さんに聞く


過去30年以上にわたり中途採用市場に携わってきた黒田真行氏に、今、中小企業の経営者が実践するべき人材戦略について伺うインタビュー企画。
 
連載第4回は、実際の採用活動において中小企業が意識しなければならないポイントを解説します。連載を通して確認してきたように、新型コロナ以降の景気の先行きは不透明で、人材市場も好材料と悪材料が入り乱れ、将来の予測が難しい状況にあります。
 
しかし、これからしばらくの間は、大きな変化の波にさらされることだけは間違いありません。その変化に備えるためには、「コア人材の採用を進めながら、それ以外の職種は雇用以外の方法で確保する“持たざる経営”も検討するべき」と黒田氏は言います。
 
また、求職者側の価値観も変化していて、「給料が高い、休みが多いといった労働条件より、“価値があると思える仕事”ができる会社で働くことを重視する人が増えています」。そんな状況で、自社が求める人材に「選ばれる」ためのポイントとは――黒田氏に伺いました。

 
 

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先行きが不透明な時代は、「持たざる経営」も検討


――前回、「採用戦略を考える前に、経営戦略そのものを練り直す必要がある」というお話がありました。次に、採用活動を進めていく段階になってから、中小企業が念頭に置くべきポイントはありますか。
 
企業にもよりますが、「そもそも、本当に雇用しないといけないのか」という点は、考える必要があると思います。ヒト・モノ・カネを、会社を動かすための資本と考えると、従業員の雇用は労働力を調達するための方法の一つ。労働力を調達するには、採用以外にも、業務委託、業務提携、M&Aによる買収、派遣会社、フリーランスに外注と、様々な手法があります。
 
採用メディアでこんなことを語るのは問題かもしれませんが、経営者に向けて本気で語りかけるなら、雇用するべき領域と、そうでない領域を分けて考えることは大切だと思うのです。当然ながら、雇用が増えると固定費がかさみます。そして、これだけ経済の変化が激しく、人材市場の動向も先行きが見えない状況では、固定費をできるだけ減らしておくことも大切な経営戦略です。
 
過去、景気がよく、自社の「勝ちパターン」が確定している時期であれば、その勝ちパターンを増強するようなかたちで人をどんどん採用し、企業は成長していくことができました。しかし新型コロナ以降は、今日の勝ちパターンが明日どうなっているかわからない状況です。そういうタイミングでは「持たざる経営」、つまり過度な固定費を抱えない経営が望ましいという判断は大いにあり得ます。
 
人材不足解消のための採用活動を始める前に、本当に雇用をしないといけない職種なのかそうでないのか、あらためて考えていただきたい。雇用する優先度が高いのは、経営のコア領域にある人材です。例えば次世代の経営を託せるような仕事を自社の社員に担わせながら、営業業務は代理店に、事務仕事は派遣スタッフに、開発は外部の受託開発専門会社に依頼する、といったすみ分けは可能です。そういった意味で、「自社のコア人材とは?」という部分を、あらためて明確にしておく必要があると思います。
 
――現在は、コロナ禍以前に比べ、人材の流動性が高まっており、採用しやすくなっている面もあるのではないですか?
 
別段、人の流動性は高まっていないと思います。人が動く理由と、動いている人の業種業界が変わっただけです。過去の好景気・不景気を振り返っても、求職活動をしている人の数自体に目立った変化はない。景気がいいときは「給料をもっと上げたいから転職したい」というポジティブな理由で転職する人が増え、景気が悪いと「会社が潰れたから・給料が下がったから転職せざるを得ない」というネガティブな理由で転職する人が増えるというだけです。

 
 

優秀な人材が企業に期待するのは「価値ある仕事」


――Indeedを利用している中小企業の経営者は、「社員やアルバイトを採用したい、雇用したい」と思っているはずです。そうした採用意欲の強い企業に向けて、アドバイスをお願いします。
 
求職者側の「仕事探しリテラシー」は高くなってきています。また、彼らの仕事に対する価値観も変わりました。給料が高ければいい、休みが多ければいい、だけではなく、自分のワークライフバランスに合う企業や、社会にどんな価値をもたらす仕事かに関心を持つようになっています。「心理的報酬」を求める傾向が強くなっている、ということですね。大企業か中小企業かによらず、「価値があると思える仕事」ができる会社で働きたいと考える人が増えているのです。
 
となると、彼らに向けた自社のアピールをどうするか、企業側もしっかりと考え、対応しなければなりません。もちろん自社がどんな人を採用したいか、求人票などにわかりやすく盛り込むことは大切です。それに加えて「自社が求める人材が求める会社像」を意識して、情報を発信すべきだと思います。
 
基本的に、これまでの採用活動は「当社はこんな人を求めています」と企業側が一方通行的に発信するだけでなんとかなっていた。しかし、これからの採用は「人材が求める会社像」と、「会社が求める人材像」をどう近づけるかが、ポイントになってくる。
 
特に大企業や知名度の高い企業で顕著でしたが、ひと昔前の採用は、強烈な買い手市場でした。採用する側が一方的に求める能力や経験を発信していれば、候補者が何人も集まってくれた。でも今の時代の企業は、自社が「求めている人材から求められる企業」であるかどうかをしっかりと考え、足りない部分を埋めていかないといけない。要は、選ぶ側と選ばれる側のパワーバランスが対等に近づいているんですね。
 
企業が強かった昭和のやり方のままの採用ではうまくいきません。仮に採用できたとしても、すぐに自分の居場所ではないと去っていく。採用活動の効果を高めるために、今の時代に合った採用戦略を今一度考え直してほしいと思います。

 
 

JDとSVC、両面の情報発信を心がける


――自社に来てほしい人材から選ばれるために、「うちの会社はこんな価値観で経営していて、入社したらこんなやりがいを得られます」という点をしっかりと考えなければならないということですね。
 
そうですね。結婚のプロポーズに例えれば、「僕と結婚してくれたら、あなたが望むこんな生活ができます」とアピールしないといけない。求職者が「自分の思いと未来を託せる相手かどうか」を判断できる情報を再編集するということです。
 
そのために書くものが、連載第2回で重要性を話した「ジョブディスクリプション(JD)」。JDをおさらいしておくと、募集する人材に任せたい詳細な職務内容について記載された文書のことです。職種や資格・給与、勤務時間に休日といった一般的な求人情報とは異なり、任せたい職務の目的やミッション、いつまでに、どれくらいの成果を出してほしいかといった達成目標などを記載します。簡単にいうと、求職者に「入社後の働くイメージを明確にしてもらう」ための文書ですね。
 
さらには「シェアードバリューコンテンツ(SVC)」も大切です。JDが仕事・業務に関する文書とするなら、SVCは自社の価値・魅力について求職者との間でシェアする文書です。具体的には、企業文化、理念、社風、行動様式、行動規範など、従業員と共有したい企業の価値や魅力を求職者に伝えるための情報発信ということです。
 
JDとSVCという両面の情報発信を心がけておけば、採用側は「会社が求める人材像」をしっかりとアピールでき、求職者から「自分の価値観と合う会社か」どうかを判断してもらうことができる。自社が求める人材から「選ばれる」企業になるためには、JDとSVCを準備しておくことが必須といえるでしょう。

 
 
 
黒田 真行(くろだ まさゆき)
Profile
黒田 真行(くろだ まさゆき)
 
1989年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、「リクルートエージェント」ネットマーケティング企画部長、株式会社リクルートドクターズキャリア(現:リクルートメディカルキャリア)取締役などを歴任。現在は「ミドル世代の適正なマッチング」を目指す、ルーセントドアーズ株式会社の代表取締役を務める。人材マーケット分析ならびに人材戦略構築の専門家。

 

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