退職代行とは
労働者には退職の自由が保障されています。ところが、社内の人間関係の問題や、強引な引き留めを恐れるあまり、社員が第三者を通して退職の意思を伝えるケースがあります。そこで利用されることがあるのが退職代行業者です。
退職代行によって起こり得るトラブル
退職は様々な事情や感情が介在する手続きだけに、代行業者を介することでかえってトラブルに繋がるケースも少なくありません。ここではとくに起こりがちな3つのトラブルを紹介します。
◆退職拒否によるトラブル
人手不足を理由に、社員の退職の意思を上司が拒絶するケースは珍しくありません。しかし、退職の自由は民法や労基法で定められた権利であり(※有期契約の場合には契約期間の初日から1年が経過した労働者が対象)、職業選択の自由は憲法で認められています。会社側が退職を拒否することは違法であり、争議の元になるので注意が必要です。
◆退職理由の顕在化によるトラブル
退職の理由を突き詰めた際、パワハラやモラハラ、あるいはセクハラが社内に蔓延している事実が明らかになるケースもあります。こうした原因による退職は怨恨を伴うことが多く、事後、SNSなどで自社の悪評が拡散されるリスクが付きまといます。原因が明らかになったのであれば、会社としてできるかぎりのフォローを行ない、円満退社に導くのが得策でしょう。
◆関連書類のトラブル
退職が確定すると、会社は退職証明書を発行してハローワークに提出し、退職者には離職票を発行する義務が生じます。しかし、代行業者が介在したことで、こうした手続き上の実務が円滑に進まないケースもあるでしょう。とくに退職者は、これらの手続きが遂行されなければ、失業保険を受給することができなくなります。
不要なトラブルを避ける方法
契約期間の決まっていない無期雇用の社員の場合、民法上の定めにより、退職日の2週間前までに退職の意思を表明すれば、退職が認められます。
逆の見方をすれば、「今日で辞めます」「今週一杯で辞めます」といった一方的な希望は認められず、交渉の余地があると言えますが、辞意の固い社員を執拗に引き止めるのは、感情的なトラブルに繋がるリスクが高くおすすめできません。
退職自体は認めたうえで、有給消化や退職日については就業規則に則って事務的に話し合い、退職金、最後の給与額についてきちんと説明するのが不要なトラブルを避ける有効な方法でしょう。そして、退職が避けられないのであれば、せめてその理由をヒアリングし、社内改善に結びつけようという謙虚な姿勢が今後の会社の発展に繋がるのではないでしょうか。
※記事内で取り上げた法令は2021年6月時点のものです。
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + ノオト
