“できる人事”を採用するコツは? 選考・面接で見るべきポイント

採用や教育、評価などを通じて人的資源のマネジメントを行う「人事」は、企業の業績向上や成長に大きな影響を与える重要なポジションです。会社の円滑な経営に欠かせない、“できる人事”とは一体どのような人物なのでしょうか。また、“できる人事”を採用するために、選考・面接で見るべきポイントとは?
 
人事コンサルティング会社「人材研究所」の代表、曽和利光さんに話を伺いました。

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できる人事とは?

“できる人事”が共通して持っているコアスキルは「人と組織を見立てる力」です。例えば、面接に訪れた個人がどのような性格や能力の持ち主なのか? モチベーションは高いのか、低いのか? それらはパッと見ただけでわかるものではありませんよね。組織についても同様です。例えば社員同士の仲がいい状況を「一体感があって組織が活性化している」と見るのか、「なれ合いの関係で競争原理が働いていない」と見るのかでは、人事として講じるべき対策がまったく変わってきます。目に見えない、個人や組織の現状と本質を「正しく見立てられる力」が人事に共通して求められるスキルです。
 
一方で、人事には社員や組織に興味を持ち、コミットしていくことも求められます。人や組織に対して熱い気持ちを持ちながらも感情移入しすぎず、俯瞰してフラットに、事実に基づいて物事を見る。「情熱」と「冷静さ」の2つを併せ持つのが、“できる人事”の条件なのです。
 
加えて、企業の成長フェーズによって以下のような能力も求められます。

◆創業期

創業から間もない時期は、経営者が人事を兼務するのが一般的です。この時期に参画する人事担当者は経営者から業務を引継ぎ、いわば経営者と同じ目線で仕事をすることが求められます。最も重要なのは「柔軟性」「変化対応力」「スピード感」です。どんどん変わっていく会社の状況に対応しながら、守備範囲を広げて、マルチタスクをこなしていく力が求められます。

◆成長・拡大期

組織規模が大きくなり、一つひとつの仕事のボリュームが拡大します。加えて人手不足で採用の比重が大きくなるのも特徴です。毎日10人の面接を数カ月にわたり行うなど、採用を中心としたルーティンワークに対応できる「知的体力」「知的持久力」が求められます。企業や採用ブランドが確立していない中で、人事担当者としての“個”の魅力で採用活動を行わなければならないため、「口説き力」や「動機形成力」も必要になるでしょう。

◆安定・変革期

人事としてのコアスキルである「人や組織を見立てる力」が最も必要となるフェーズです。創業期や成長期に比べ、組織規模が大きく複雑化しているので、事業の方向性も見えにくくなります。そのため、現状を把握して課題解決につなげる「分析力」や「論理的思考力」がより一層求められます。また、見立て力の精度をあげていくためには「想像力」が欠かせません。その想像力を支えるという意味で「心理学」や「統計学」「組織学」などの体系的な知識も役立つでしょう。

人事を採用する際、書類選考・面接で見るべきポイントは?

書類選考で注目したいのは「数字」です。これまで勤めていた企業の設立年や従業員数など具体的な事実を確認します。これらの情報をもとに「創業期」「成長・拡大期」「安定・変革期」のうち、どのフェーズにある企業で経験を積んできたのかを判断します。あくまで一つの目安ではありますが、自社と同じフェーズの企業で就業経験があれば、入社した際に経験を生かして活躍しやすいといえるでしょう。
 
もしも、候補者が創業期の会社を1年以内に退職していたとしたら「このフェーズに合わなかった可能性がある」と推察できます。ただし、書類選考では判断しきれないことも多いため、これらの情報は参考程度に留め、面接で確認するほうがいいでしょう。
 
面接で見ておきたいのは「カルチャーフィット」です。人事は、企業の文化や価値観を体現し、浸透させていく存在ですから、「候補者の人材観や組織観が自社とフィットするか」は重要です。
 
おすすめなのは、過去に勤めていた会社のカルチャーや組織観、トップの考え方について聞くこと。そのうえで「その考え方や環境についてどう思っていましたか?」と質問すると、個人の考え方や価値観を知る手がかりになります。
 
候補者が、人事のコアスキルである「人や組織を見立てる力」を有しているかどうかも、面接で見極めたいポイントです。「前職で組織の現状をどのように把握していましたか?」とストレートに質問するのも一案ですし、「候補者が過去に取り組んだプロジェクトでの経験」を細かく質問するのも有効でしょう。そうした問いに対して候補者がどう説明するかで、人や組織の状況をどのように把握し、どの程度の解像度で見ていたのかが垣間見えるはずです。
 
例えば職場のカルチャーについて質問した際に「自由な社風でした」と回答する人と、「全体の8割は自由さを求め、残りの2割は規律性を求める傾向がありました」と回答する人では、組織を見立てるときの解像度が違います。決してパターン化せず、真摯に現状を見つめ、より深い角度で組織の状況を見立てられる人が“できる人事”です。

会社のフェーズに適した“できる人事”を採用しよう

“できる人事”を採用するにあたって、選考・面接で見るべき3つのポイントをおさらいしましょう。

  • 人事のコアスキルである「人や組織を見立てる力」を有しているかどうか
  • 「創業期」「成長・拡大期」「安定・変革期」など自社の成長フェーズに合った能力やスキル、ポテンシャルを有しているかどうか
  • 自社の文化や価値観、カルチャーにフィットする人材かどうか


“できる人事”を採用するために、選考の過程でこの3点に注目するようにしてみてください。


<取材先>
株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後も一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『「できる人事」と「ダメ人事」の習慣』、『人事と採用のセオリー』、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』などがある。
 
TEXT:猪俣奈央子
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
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