人事がスキルアップする方法とキャリアの選択肢


人事担当者は、採用業務、人材育成業務、労務管理業務など、従業員一人ひとりが安心して能力を発揮できる環境を作ることに従事しています。しかし業務が多岐にわたるため、外部からは具体的にどんな仕事をしているのか見えにくいのも事実。さらに、従業員のスキルアップやキャリア形成を支援しているのに自分はどうか――。本稿では、あらためて人事担当者の業務をおさらいし、資格取得などを通じたスキルアップによって人事担当者がどのようなキャリアを構築できるのか、その一例を紹介します。

 
 

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人事の仕事は、従業員一人ひとりが安心して能力を発揮できる環境を作ること


人事の仕事は会社の規模によって異なりますが、一般的には以下の3つに分類できるでしょう。
 
(1) 採用業務
 
自社の事業活動を支援してくれる人材を採用するために、採用計画を立て、実行します。
業務例:要員計画に基づいて、各部署が必要とする人材像をヒアリングする。求人媒体に出稿する原稿を作るなど。
 
(2) 人材育成業務
 
入社後の教育をはじめフォローアップ研修などを行います。業務に必要なスキルを身に着けてもらうだけでなく、研修を通じて他部署の従業員とコミュニケーションをとる機会を作ることもできます。
業務例:従業員各自の声を聞いて適切なカウンセリングを行う。また、各部門長と研修計画を立案・実施することなど。
 
(3) 労務管理業務
 
従業員一人ひとりが安心して能力を発揮できるよう、自社の人事評価の仕組み作りや、雇用環境を幅広く整えていきます。
業務例:社会保険加入などの法的手続き、勤怠管理、給与計算・支払い、衛生管理、ハラスメントへの対応などの労務管理業務など。
 
こうした業務は、従業員数が多い会社だと複数のメンバーで担当しますが、小規模な会社では一人で担当することもありえます。スタートアップ企業であれば、他業務と兼任して行うケースもあるでしょう。
 
また、他部署から人事部に異動になるケースもよく耳にします。一例ですが、営業部から人事部に異動してきた場合、これまでお客様へ自社の説明をしてサービスや商品を売ってきたので、新卒中途問わず応募者から会社について質問されてもすらすらと説明できるでしょう。コミュニケーション能力も培われている可能性も高いので、採用業務をこなす上では戦力となります。しかし、営業部の社員にとって人材育成業務や労務管理業務は未知の世界。採用することはできても、入社後のフォローまで完璧にこなせる人は少ないはずです。
 
これから人事のプロとしてスキルアップを目指すのであれば、こうした他部署で培ったスキルではカバーできない「人材育成業務」と「労務管理業務」の領域を極めるのが先決といえます。ここからは、人事としての体力をつける手法を紹介します。

 
 

人材育成業務のスキルアップ手法の一例


人材育成業務では、単に研修を行うだけでなく、一緒に働く従業員それぞれが、「どのような仕事に興味を持っているのか」、「どのようなキャリア形成を望んでいるのか」まで把握する必要があります。人材育成業務を担当されている方の中には、日頃の業務をこなしながら経験を積むだけでなく、キャリアコンサルタントの国家資格取得を通じてスキルを磨く方も少なくありません。
 
試験勉強をしていく過程で、キャリア理論やカウンセリング理論を身に付けることができ、従業員に対して理論的なキャリア教育をすることが可能になります。また、カウンセリング手法を実技で教わるので、キャリア教育のプロフェッショナルの技術を体験することができます。
 
受講生は当然ながらキャリア育成・教育に興味を持っている方々です。企業の人事担当者や人材系ビジネス(人材派遣、人材紹介、求人媒体など)はもちろんのこと、定年後のセカンドキャリアとして勉強している方もいらっしゃるので、社内だけで得ることのできない他社情報やキャリアパスなどを聞くことができます。人事部は、業務は広いが担当者は少ない狭い世界です。気軽に相談できる仲間が増えることに価値を見出している方は多いです。

 
 

労務管理業務のスキルアップ手法の一例


労務管理業務はどうでしょう。労働法や社会保険関係の法律や制度と向き合うことが多い業務です。知識が乏しい方は、社労士(社会保険労務士)を頼ることになります。顧問社労士がいる会社は多いでしょう。よって、この業務でのスキルアップを目指すために社労士の国家資格取得を通じてスキルを磨く方も少なくありません。
 
「外部の社労士に頼めばいいのになぜ勉強するのか」と疑問に思う方もいるでしょう。人事担当者で、社労士の資格を持つ方に聞いてみました。その解は「知識」です。
 
社労士になる勉強を通じて、法律や公的な制度(助成金なども含めて)の知識が身に付くので、経営者や従業員からの労務上の相談にのることができ、自身の社内評価が上がるのだそうです。また、労務に必要な各種申告・手続きを簡単にこなせるようになるので外部に依頼する必要がなくなりコスト削減になります。就業規則の改定も、自社にあったものを自由に作成できるので、たとえば今回のコロナ禍のように、皆の働き方が一瞬で変わった際の対応が早い。様々な労務知識があるので、他にもイレギュラーなケースにスムーズに対応できるのが強みだそうです。
 
実は、社労士の独占業務となっていても社労士資格がないとできない業務は少ないそうで、「資格」よりも、資格取得の勉強を通じて「知識」を身に付けることが最も大事だそうです。

 
 

「人は問題を感じた時に行動するもの」、そこから新たなキャリアが生まれていく


スキルアップのために資格取得を目指す方法を紹介してきましたが、お金と労力が生じることですし「必ずしも」ということではありません。まずは、キャリアコンサルタントについての本を読んでみる、社労士についての本を読んでみる。そこからでも構わないかと思います。しかも斜め読み程度で。なにせとっつきにくいですからね。
 
「人は問題を感じた時に行動するもの」といわれています。日々の業務の中で壁にあたった時、「どうしよう、あれ、これって」と思った瞬間に「あ、あの本のどこかに書いてあったな」と思い出すことでしょう。そして興味を深めて勉強する。そこから皆さんの新たなキャリアが形成されることになると思っています。

 
 
 

※この記事は2021年2月に執筆されたものです。
 
TEXT:国家資格キャリアコンサルタント 戸田敏治
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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