採用市場が変化しても、求められる資質は変わらない
――業界によって程度の差はありますが、2020年は採用市場全体に影響がありました。それに伴い、人事の業務にはどのような変化があったのでしょうか。
人事は「事業を支える」というミッションを軸に、採用活動をはじめ、社内の教育や評価などを行う部署です。どのような状況下でも求められる役割は同じなので、仕事内容は基本的に変わりません。ただし、その時々で細かいやり方は変わってきますよね。
たとえば、現在は求職者と対面してコミュニケーションがとりにくい状態です。説明会や選考をオンラインに切り替えるなど、臨機応変に対応しなければなりません。状況に応じて、採用活動全体の見直しは必要でしょう。
とはいえ、大まかな業務は同じである以上、根本的に求められる人事の資質は変わらないかと思います。
――人事に必要な資質とはどのようなものでしょうか。
最も重要なのは、人に興味があることではないでしょうか。社内外で他者とのコミュニケーションが多く発生するので、モノづくりを極めたい場合よりも、人と話すのが好きな人の方が人事に向いています。
また、過去の事例を踏まえて、対応を考える力も重要です。イレギュラーな問題が起こると、イチから解決策を考えようとする人もいますが、似たような事例があるケースも少なくありません。
たとえば、昨今注目されている施策の一つに「オン・ボーディング(on-boarding)」という教育・育成プログラムがあります。入社した社員が早期から活躍できるよう、企業側がサポートすることを指します。しかし、これまでに似たような考え方がなかったかと言えば、そうではないですよね。昔流行ったファッションが再び流行するように、人事領域においてもリバイバルのような動きがあります。
今回、雇用情勢を踏まえて採用人数を減らした企業も存在しますが、全く同じような状況ではなくとも似たような例が過去にあるはずです。自社だけでなく、他社のケースを調べて、対応を模索できる人事は強いですよね。
世の中のトレンドを抑え、採用に生かそうとする姿勢も重要
――過去の解決策をアレンジしながら対応するのが重要ということですね。
そうですね、過去のやり方だけに固執してしまうのも難しいでしょう。状況に応じて自らアレンジするには、いろいろなところにアンテナを張っておくのも大切です。人事・採用領域の知識だけでなく、世の中全体のトレンドを抑えておくと良いですね。
――たとえば、どのようなトレンドをチェックしておくのが有効でしょうか。
仕事に直結しなくとも、ファッションや有名人、アニメや映画など、幅広くキャッチしておくと話題にもなります。あとは、世界的に流行している音声SNS「Clubhouse」を早くも採用に取り入れた企業もあります。「Clubhouse」で説明会を開催し、求職者が自由に参加できるような使い方はできるでしょう。もちろん、最終的に採用の効果があるのか、さらに言うと自社にとって必要なツールなのかは検討すべきです。「今はこういうものが流行っているんだ」とトレンドを把握した上で、人事業務に生かそうとする姿勢は大切かもしれないですね。
予測しにくい採用市場、情報収集力が問われる
突然オンラインで選考を行うことになり、対応に戸惑った企業は意外と少なくないかもしれません。しかし、人事に求められるスキルは基本的には変わらないものです。新たなトレンドを抑えながら、過去の事例をヒントに最適な解決策を導き出しましょう。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を生かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。
TEXT:成瀬瑛理子
EDITING:Indeed Japan + ノオト