保育士採用を成功させるために知るべき、業界事情と仕事内容から見る採用テクニック

子供たちと遊ぶ男性の保育士

ここ数年、待機児童の問題がメディアで取り上げられて以降、関心が集まる保育業界。そうした問題からも分かるとおり、保育士の不足が深刻な状況となっています。貴重な人材を採用するには、そして長く働いてもらうためにはどのような工夫が必要なのでしょうか。業界の現状を改めて確認しつつ、課題とその対策を解説し、今後の展望についても触れていきます。

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保育業界の現状

◆保育士が不足している

冒頭でも触れた「待機児童」の問題からも分かる通り、近年の保育業界では保育士の不足が大きな問題となっています。その理由の大きな理由として「需要と供給のバランスが崩れている」ことが挙げられています。
 
国は2016年から「企業主導型保育事業(※1)」などの施策で、保育事業の環境整備に動いてきました。その結果、保育園の数が増え、2012年と比較して約1.5倍の数となりました。これが保育業界における人手不足の要因の一つであると考えられます。
 
(※1)地域の企業が共同で設置・利用する保育施設や、従業員のために企業が設置する保育施設に対し、国から助成金が支給される制度。
 
国の制度と保育の関係など、保育業界の現状についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
なぜ保育士は不足するのか? 保育業界が抱える課題と今後の展望

保育士の仕事とは? 保育士として働くには?

人手不足の業界において、貴重な人材の採用を効果的に行っていくためには、何よりも求職者の目線に立って考えることが必要です。今保育士として働こうとしている人はどのような情報を集めているのでしょうか。まずはそもそも保育士の仕事とは、そして保育士になるためのプロセスなどについて、改めて確認していきましょう。

◆保育士とは

保育士とは、児童福祉法に基づく国家資格であり、同法では保育士を「専門的な知識と技術を持ち、児童の保育、児童の保護者に対する保育に関する指導を行う者」と定めています。
 
その仕事は、おもに保育園や乳児園、児童養護施設などの場で、乳児や幼児を保育し、基本的な生活習慣を養うことです。

◆保育士の職場

保育士は、保育園のほか以下のような「児童福祉法で定める児童福祉施設」でも働くことができます。

・保育所
・幼保連携型認定こども園
・児童厚生施設
・児童養護施設
・児童自立支援施設
・児童家庭支援センター
・助産施設
・乳児院
・母子生活支援施設
・障害児入所施設
・児童発達支援センター
・情緒障害児短期治療施設


また、ベビーシッターや、民間業者が運営する幼児教室や無認可保育所などでも保育士の資格保有者は有利だとされています。

◆「幼稚園の先生」との違いは?

幼稚園教諭と保育士は似たような仕事だと思われがちですが、両者の間には以下のように明確な違いがあります。
 
保育対象
保育士:0歳から小学校就学前
幼稚園教諭:3歳から就学前となります。
 
主な仕事内容
保育士:保育中心
幼稚園教諭:就学に備えた教育
 
管轄
保育士:厚生労働省
幼稚園教諭:文部科学省

◆保育士になる方法

1. 保育士養成課程を修了する

保育士養成課程のある学校として、4年制大学、2年生の短期大学、専門学校などがあります。それぞれで学べる内容や学習期間が異なる他、職場によっては学歴によって初任給に差がつくこともあります。

2. 保育士試験に合格する

国家試験である「保育士試験」には、筆記試験と実技試験があります。その合格率は10%から20%程度と、比較的高い難易度の試験だと言えるでしょう。
 
なお、複数ある科目の内、合格したものについては3年間有効なので、一度の試験ですべての科目に合格する必要はありません。
 
受験資格については以下の通りです。

・ 大学・短期大学・高等専門学校を卒業した人
・1991年3月31日以前に、高等学校を卒業した人
・中学か高校を卒業し、児童福祉施設で2年以上かつ、2,800時間の実務経験のある人・ 児童福祉施設にて5年以上かつ、7,200時間の実務経験のある人

3. 保育士登録する

保育士試験に合格した後、保育士として働くには、各都道府県が発行する「保育士証」の交付を受ける必要があります。保育士証は一度交付されれば、保育士証に記載されている名字や本籍地などが変わらないかぎり更新する必要はありません。また、保育士登録をしない場合でも、「保育士となる資格を証明する書類」は無効となりません。

◆保育士の雇用形態

保育士にはさまざまな雇用形態があります。

 

1. 正規職員

公立保育園であれば公務員として、私立保育園であれば園と雇用契約を交わした保育士として働きます。
 

2. 契約職員

契約職員は期間限定で働く形態です。正規職員と同じ給与と福利厚生が設けられていますが、有給休暇やボーナス、契約期間の更新などは、園により異なります。
 

3. 派遣職員

派遣社員は、派遣業者を通して園に派遣される職員です。パートタイマーに比べて責任は重く、フルタイムだけの求人が多く、週5日の勤務が一般的です。
 

4. パートタイマー

働く日数や時間、曜日など、ある程度柔軟な働き方ができます。
 

5. アルバイト

アルバイトは無資格でも学生でも働けます。無資格の場合は、「保育補助」という名目で勤務することになります。あくまで補助ですので、給食の補助をしたり、清掃、洗濯などの雑務をこなしたりすることが多いようです。
 

6. 臨時職員

公立の保育園で、保育士の欠員が出た時に、期間限定で雇用されるケースです。正規職員よりは給与は安いですが、月給制で有給もあります。

 

◆保育士のキャリア

・保育士のキャリアアップ

厚生労働省は2017年4月に、保育士の経験年数に応じ、所定の研修を受け技能を習得することで給与面の処遇改善が受けられる「保育士等キャリアアップ研修」を発表しました。
 
また、新たに以下の役職も定められました。

・副主任保育士

次の要件を満たす場合、月額4万円の処遇改善がされます。
 
1. 保育士の経験年数が7年以上であること。
2. 職務分野別リーダーを経験していること。
3. マネジメントに加えて3つ以上の分野の研修を修了していること。
4. 副主任保育士としての発令。

 

・専門リーダー

次の要件件を満たせば、月額4万円の処遇改善がされます。
 
1. 保育士の経験年数が7年以上であること。
2. 職務分野別リーダーを経験していること。
3. 4つ以上の分野の研修を修了していること。
4. 専門リーダーとしての発令。

 

・職業分野別リーダー

次の要件を満たせば、月額5,000円の処遇改善がされます。
 
1. 保育士の経験が3年以上であること。
2. 担当する職務分野研修を修了していること。
3. 修了した研修分野にかかわる職務分野別リーダーとしての発令。

保育士の仕事や求められる資格、スキルなどについて、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
Indeedキャリアガイド『保育士の仕事をするには』

保育士採用のためにできる、保育園の取り組み

人材採用や定着率アップのため、実際に行われている取り組みについて紹介します。

◆写真や動画を使って求職者の目に留まる求人情報を作成する

人材不足の状況においては、定型文を書いているだけでは応募は集まりません。テキストだけでなく、写真や動画など、視覚に訴える要素を多く盛り込み、職場の雰囲気が伝わるオリジナルの求人情報を作りましょう。

◆SNSを活用した情報発信に力を入れる

より多くの人に職場の情報を知ってもらうにあたり、SNSは有効な手段となります。職場の雰囲気や、園としての文化や理念が伝わるような情報を積極的に発信しましょう。

◆名簿作成とアプローチ管理

応募者を増やす施策とともに、応募してもらった人の名簿作成とアプローチ管理も大事です。しかし実際は、保育業務と兼任しながら採用活動を行っている施設が多いため、応募のメールを見落とすミスが発生しているようです。せっかくお金をかけて求人を出しても、管理を徹底しなければ意味がありません。
 
応募者名簿を作成し、応募動機や面接内容、選考結果やその理由などをデータベース化することで、次の採用につなげることができます。また、面接の際に求職者の来園が園長以外のスタッフに周知されておらず、心象を悪くするケースも少なないようです。些細なことですが、細かなプロセスに気を配る必要があります。
 
求人情報の作成方法やSNSの活用方法など、保育士採用のための工夫についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
保育士の採用に成功している保育園の施策とは

◆長く働ける環境をつくる

保育園の中には2~3年で転職を繰り返す「転職回数が多い人」をNGとしている園も少なくないようです。しかし、キャリアアップのために転職する人材が増えていることから、転職歴だけを理由に不採用を判断するべきではありません。面接などで退職理由を丁寧に確認しつつ、保育観が合致するかどうかを慎重に見極めることが重要です。
 
長く働いてくれる保育士を採用する面接術について、詳細はこちらをご覧ください。
長く働いてくれる保育士を見抜く面接術

◆定着率アップを図る

「長く働いてくれる人を選ぶ」だけでなく、「長く働いてもらえる環境を作る」という、定着率の向上方法も重要な要素となります。しかし、結婚や出産により30代の女性が手薄になってしまうケースは現在でも多く見られます。そこで「産休・育休後に戻ってきて欲しい」と声をかけている園もあるようです。
 
また、新卒採用しても辞めていく人材が多いことから、新人教育のシステムを整備する向きもあります。従来は就職後すぐに子供たちと向き合うことも少なくありませんでしたが、一般的な会社員のように研修期間をしっかりと設けようという考え方です。
 
保育士の定着率を高める施策について、詳細を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
保育園も働き方改革が必要?保育士の定着率を高める施策とは

保育業界の今後の展望と、保育士の将来性

保育業界の展望として「ニーズの高まり」と「男性保育士の活躍」の2つが予想されています。

◆保育士のニーズはさらに高まる

厚生労働省が2017年4月に公表した「保育人材確保のための 『魅力ある職場づくり』に向けて」によると、待機児童を解消するために新たに必要となる保育人材は9万人。さらに共働き家庭のが増加により、幼稚園よりも子どもを預かる時間の長い保育施設は、これまで以上に注目を集めています。これらのことから、保育士のニーズは今後さらに高まることが予想されます。

◆男性保育士が活躍

深刻な保育士不足を補うために期待されているのが、男性保育士の活用です。
 
厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、男性保育士の数は1万3,400人で全体の5.8%となっています。しかし、男性の方が有利な力仕事があることや、防犯上の観点などからも、男性保育士を求める声も少なくありません。さらに近年は育児に参加する父親が増えていることから、彼らの相談に答える存在としても男性保育士には期待が集まっています。
 
今後ますますニーズの高まりが予想される保育業界。働く環境の整備と、求職者目線に立った魅力的な情報発信で、効果的な採用活動を進めていきましょう。

 
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