面接ではどのような質問をするべきか
採用選考における面接は、候補者をより深く知るための重要なステップの1つです。できる限り、書類選考や適性検査などではわからない候補者の情報を聞き出したいところですが、面接官の中には「選考書類以上の話ができずに面接が終わってしまった」という経験をした人もいるのではないでしょうか。その原因は、質問をすること自体が面接の目的になってしまっているからです。
まずは面接の目的が「自社に合った人を採用すること」だと再認識し、「この質問をすることで、どんな情報を聞けるのか」を考えながら質問をしてみましょう。
質問集に+αで覚えたい2つのテクニック
面接をする際は、まず「この会社を選んだ理由」「学生時代に頑張ったこと」など、聞き出したい基本的な質問をまとめた質問集を準備します。ただし質問集の順番通りに質問を投げかけるだけで終わってしまうと、それ以上の情報を得ることはできません。より詳しい情報を聞き出すポイントは、候補者の回答に「さらに質問を重ねて深掘りすること」です。質問を重ねる際は、以下の2つを意識することが大切です。
◆理由(回答のベースにある候補者の考え)
候補者に質問をして回答を得たときは、「そう考えた理由はなんですか?」と理由を聞きましょう。これにより、候補者のベースにある考え方や価値観を知ることができます。
たとえば、「なぜこの会社を選んだか」の質問に対する回答には、「その考えに至った理由をもう少し詳しく教えてください」「なぜ他の企業ではなく弊社なのでしょうか」などの質問を続けます。
また、「学生時代に頑張ったこと」の回答に対しては、「それを『頑張ったこと』に選んだ理由はなんですか?」などと聞き、回答の理由をとことん深掘りしていきましょう。これを繰り返すことで、面接のために用意された回答ではなく、候補者の本音に近い考えを引き出すことができます。
◆実績(行動)
候補者が実際に「どのような行動をしたのか」についての深掘りも大切です。たとえば「保険会社で営業の仕事をしていた」という情報に対しては、「営業について、過去に携わった具体的な業務内容を説明してもらえますか?」などの質問をします。また、「営業のスキルがある」という情報に対しては、「営業のスキルがあることが証明できるような実績はありますか?」などと尋ね、過去の実績を話してもらいます。
候補者の中には、自分の実績や能力を実際よりも高く見せようとする人もいます。具体的な過去の「実績」や「行動」を聞き出すことにより、その人の客観的な能力や、仕事に対する向き合い方を知ることができます。
事前に用意した質問集に加えて、これらの質問テクニックを押さえれば、候補者の本音を引き出すことができるでしょう。面接が進むうちに本来の質問から話題がそれてしまっても、無理に軌道修正をせず、興味深いと感じた話題をどんどん掘り下げてみてください。候補者の人となりは、定番の質問よりもその場のリアルなコミュニケーションによって見えやすくなるからです。
「体験入社」の導入も検討
さらに採用の質を高めるには、最終面接の前など、選考プロセスに「体験入社」を導入するのも効果的です。採用候補者と企業との間で日程を調整し、2日ほどの期間を設けて実際に職場で働いてもらうことで「自社への適性」「仕事に対する姿勢」などを確かめることができます。
また、面接だけではどうしても面接官の主観が入り不公平な判断を下してしまうことも考えられますが、体験入社を行えば候補者をほかの社員の視点からも見てもらえるため、採用結果の公平性を担保できるというメリットもあります。
新卒だけでなく中途採用の候補者にとっても、前職を退職してしまう前に職場の雰囲気や仕事を体験できることで、リスクなく入社を検討することができます。企業と候補者のどちらか一方に「思っていたのとは違った」という気持ちが生じた場合は、そのまま不採用や選考を辞退することが可能です。雇用のミスマッチをなくすために、体験入社もぜひ検討してみてください。
候補者の本質を知るための質問をしよう
面接では、候補者の「本質」を知るための質問をすることが重要です。基本的な質問集を準備したうえで、面接時に「理由」と「実績」を聞き出すことを意識して候補者とコミュニケーションをとれば、選考がより質の高いものとなるはずです。
<取材先>
人材採用コンサルタント/社会保険労務士 稲田行徳さん
『採用の教科書®』シリーズ著者。2000年長崎大学工学部卒業後、社会保険労務士の資格取得。その後社会保険労務士事務所に入所、人事労務コンサルティングを行う。電機メーカーに転職後、人事担当として採用・教育・人事に関わり、仕組みを変えることで多くの実績をあげる。2007年、中小企業専門の人材採用に特化した採用コンサルティングを行う「いなだ社会保険労務士事務所」を設立。国内・海外企業、病院、公的機関に正しい採用の方法を教えている。
TEXT:稲垣恵美
EDITING:Indeed Japan + ノオト