面接官はどのような質問をするべきか
履歴書などの応募資料を見ながら、ただ思いのままに質問を重ねていくだけでは、本当に必要な情報を聞き出すことはできません。効率的に情報を聞き出すために、質問項目をあらかじめ、現在・過去・未来と時系列別に分けて整理しておくことをおすすめします。具体的には次の通りです。
(1)応募者の背景(現在)
まず、なぜその人物が自社の採用試験を受けようと考えたのか、その背景をあぶり出す質問から始めましょう。志望動機はもちろん、何を望んで応募を決めたのかという志向性、転職にあたって重視している要素など、転職活動を始めるに至った理由を探ります。
(2)評価項目(過去)
続いて、用意された評価項目に照らし合わせて、これまでのキャリアや実績を探ります。ここで有効なのが、「STAR」のフレームワークです。これはSituation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Result(結果)の頭文字を並べたもので、この4要素を押さえることで、簡潔かつ具体的なエピソードを聞き出すことができます。
(3)入社後のイメージ(未来)
自社のどのような点に関心を持ち、入社後はどのような働き方をしたいのか、応募者の展望をヒアリングします。こうした質問により、入社意欲の度合いを測ることができます。
目的別の質問例
さらに目的別に、具体的な質問例を見ていきましょう。
◆前職の不満点を探る場合⇒「前職の良かった点は何ですか?」
応募者がなぜ前職を離れたのかは、自社にとっても重要な情報です。しかし応募者側の心理からすれば、退職の理由がネガティブであるほど詳細を語りたがらないもの。そこで、先にポジティブな面に触れることで、ネガティブな話題へのハードルを下げる効果を狙います。「では逆に、前職の不満点は何ですか?」と続ければ、応募者の口がいくらか滑らかになるでしょう。
◆前職での実績を探る場合⇒「チームの中での、あなたの役割は?」
例えば相手が「前年比130%の成果をあげました」とアピールしている場合でも、それが個人の実績なのか、それともチームとしての実績なのかはわかりません。何人構成のチームに属し、そこでどのようなポストや役割を与えられ、具体的にどんな業務を担っていたのか詳しく聞き出すことで、本当の実績が見えてきます。
◆実績に対する貢献度を探る場合⇒「その目標を達成するために、あなたはどのような行動をとりましたか?」
仮に「今期の目標を達成しました」と言われても、100人のうち80人が達成している目標設定なのであれば、評価には繋がりません。重要なのは、目標を達成するためにその応募者が何を果たし、どの程度貢献したかです。前出のSTARメソッドを用い、具体性のあるエピソードを聞き出しましょう。
◆仕事に対するモチベーションを探る場合⇒「なぜその行動をとろうと思ったのですか?」
こちらもSTARメソッドの一環です。応募者に前職でめぼしい実績をあげてもらい、そのためにどのような行動をとったのかを聞き出したら、次はなぜその行動をとろうと思ったのかを聞いてみましょう。上司に命じられて行ったのか、自ら思いついて行ったのかによっても、評価は大きく変わるはずです。
◆入社意欲を探る場合⇒「弊社にどのようなイメージをお持ちですか?」
たいていの応募者は、複数の企業の採用試験を並行して受けています。そこで、自社に対するイメージを深堀りしていくことで、会社に対する理解度がわかり、どの程度の入社意欲を持っているかをはかる指針になるでしょう。
質問をする際の注意点
憲法や職業安定法、男女雇用機会均等法などのルールにより、面接の場でしてはいけない質問が定められています。個人の出自や境遇に関する質問は、たとえ雑談の流れであっても禁物です。
家族構成や親の職業など、つい触れたくなることもあるでしょうが、能力や適性と無関係な質問は避けるべきです。
<取材先>
クレド・ライフクリエイション株式会社 代表 深堀一雄さん
北海道札幌市出身。大学卒業後、百貨店外商部勤務を経て外資系生命保険会社にコンサルタントとして入社し、人材開発に関わる多くのプロジェクトに携わる。2018年にクレド・ライフクリエイション株式会社を設立。「ひと」の潜在能力開発とパフォーマンス(成果につながる行動)発揮を専門領域とする。
TEXT:友清 哲
EDITING:Indeed Japan + ノオト