リモートハラスメントとは? 実例をもとに対策を解説

リモートハラスメントのイメージ

リモートワークの普及により、「リモートハラスメント」(リモハラ)が起こるようになりました。一体、どのような行為がリモハラにあたるのでしょうか。実際に起こっている例を踏まえ、人事側でできる対策について、ハラスメント対策専門家の倉本祐子さんに伺いました。

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リモハラは、通信環境や自宅への言及も該当する

リモハラとは、リモートワーク中に行われるセクハラやパワハラなどのハラスメント行為全般を指します。オフィスに出社するときとは異なり、第三者の目が届きにくい場所で起こる点が最大の特徴といえるでしょう。
 
主に、以下のような行為がリモハラに該当します。

◆社員の監視

リモートワーク時の勤務状況を確認するために、常にウェブカメラをオンにすることを強要するような「監視」は典型的なリモハラにあたります。よりひどくなると、席を立っただけで叱責が飛んでくることもあります。
また、ウェブカメラを使用せずにリモートワークをしている企業では、きちんと働いているか確認する名目で、特定の社員に対してカメラを起動させて、定期的に自分の顔が映る画面のスクリーンショットを送るように指示があったケースもあります。
 
上司に必要なのは業務の「管理」であり、社員の「監視」ではありません。

◆通信環境への言及

会社からWi-Fi端末を支給されている場合もありますが、各社員の自宅にあるネットを利用している企業もあるでしょう。このとき、「通信速度が遅い」といったネット環境への言及も、リモハラになります。業務に必要な設備を会社で補填せずに、社員を叱責するのはハラスメントになるのです。

◆時間外労働の強制

仕事とプライベートのオンオフがつきにくいのはリモートワークのデメリットです。勤務時間外の労働を強制するケースは、自粛期間中にとくに顕著に現れたリモハラでした。仕事の納期が先なのにもかかわらず、「どうせ家にいるんだから働け」などと上司から指示された方もいたようです。

◆プライベート空間に対する言及

オンラインミーティング中に背景に映り込んでいるものへの言及は、セクハラに分類されるリモハラの一種です。「どうせ外出できないのだから、オンラインで一緒に飲もう」といった誘いや、「そのベッドでいつも寝ているんだ」といった性的な話に発展しうる話題も絶対に避けましょう。

リモハラは「上司から部下」の関係に限らない

2020年6月1日に施行された「パワハラ防止法」によると、以下を含む行為がハラスメントとされています。
 

  • 優越的な立場の人間から行う
  • 業務上、必要かつ相当な範囲を超えたものによって就業環境が害される


ここで指す「優越的な立場の人間」とは、上司と部下の関係に限りません。たとえば、同僚に仕事で必要な情報をわざと共有しない場合や、気に入らない上司に対して部下が結託して仕事を放棄する場合なども該当します。
 
さらに、業務に必要のない指導や指示によって、相手の尊厳が傷つけられたり、不快な思いをさせられたりすることがハラスメントになります。逆に言えば、単に「不快な思いをした」というだけではハラスメントにならないのです。

人事の担当者ができる対策とは

リモハラは第三者の目が届きにくい場所で起こります。人事の方で気づくのは極めて難しいのが現状です。被害者的な立場である社員が声をあげるか、複数人でのミーティング中に第三者が異変に気づくほかありません。
 
そこで、人事側でできる対策は、パワハラの相談窓口を設置することが第一です。大企業の場合、パワハラ防止法で相談窓口の設置がすでに義務付けられています。中小企業においても、窓口の設置とともに従業員へ窓口の周知・啓発を促すことが重要です。
 
リモハラは、働き方が変わりつつある現代だからこそ起きやすい問題です。前例がない分、対処が難しいですが、パワハラの1つであることを認識し、社内全体でリモハラへの知識を深めていきましょう。

 

※記事内で取り上げた法令は2020年9月時点のものです。
 
<取材先>
ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社
代表 倉本祐子さん
ハラスメント対策専門家/ハラスメント研修専門講師/キャリアコンサルタント
1968年 和歌山県和歌山市生まれ。自身のハラスメント経験を最大限に活かした、ハラスメント専門研修講師として、年間150日以上登壇。研修を実施した企業や自治体は200社以上にのぼる。年平均30〜人を超える受講者からは「行動に移しやすい講座」と好評。また、クライアント企業からは、高いリピート率を誇る。
 
TEXT:佐々木ののか
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト

 
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