青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)とは
「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)」は、平成27年に制定された比較的新しい法令です。若年層が適職に就けるよう雇用を促進し、能力を有効に発揮できる環境を整備するため「勤労青少年福祉法」を改正する形で制定されました。
これから社会を支える存在である若い世代(青少年)が不安定な就労を繰り返すことを防ぐため、国や地方公共団体、事業者の責務を明確にし、連携することを促しています。
◆対象者
当該法における「青少年」とは、15歳以上35歳未満の若年労働力人口を指します。ただし、厚生労働省が示した「青少年雇用対策基本方針」(平成28年1月)では、個々の施策・事業の運用状況等により、おおむね45歳未満の者も対象と述べています。
事業者が取り組むべき措置
青少年の雇用に関して、事業者が取り組むべき措置は以下のとおりです。
◆労働条件を明示する
労働基準法では、人材を採用する際に労働条件の明示が義務付けられています。特に若い世代は残業代をめぐるトラブルが見受けられるため、募集・採用において適切に賃金表示をしなくてはいけません。固定残業代(※1)の制度を導入する場合は、
- 固定残業代に関する労働時間数と金額の計算
- 基本給の額面
- 固定残業代を超える時間外労働、深夜・休日労働分の割増賃金の追加支払い
上記3つについて、具体的に示しましょう。
※1……「固定残業代」という名称に関わらず、一定時間分の時間外労働や休日労働、深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金を指す
◆原則、労働条件の変更をしない
特に卒業見込みの学生に内定を出した場合は配慮が必要です。採用活動の際に提示した労働条件を入社までに変更することは不適切だと見なされます。業績や人事制度の改訂等により変更が予想される場合は、内定時にその旨を示しておきましょう。
◆採用内定の不合理な取り消しをしない
内定によって労働契約が成立していると見なされることが多く、客観的に合理的な理由のない採用内定取り消しは認められません。企業は採用内定取り消しを防止するために最大限の努力を払いましょう。やむを得ない事情で取り消しを行う場合は、新卒であれば他の就職先の確保に努めることが求められています。
◆違反事項があると、関係機関で求人が不受理になる場合も
新卒で入社した会社がブラック企業だったばかりに退職し、その後も短期間で就職と退職を繰り返すことになってしまう……というケースなど、若いときの勤務先はその後の職業生活に長期的な影響を及ぼすおそれがあります。そのため、一定の労働関係法令違反があった事業所は、ハローワークでの求人を一定期間受け付けてもらえなくなります。また、民間の職業紹介事業者にも、ハローワーク同様の取り組み(求人申込みの不受理)を求めていますので、実質的に採用活動が行えなくなるおそれがあり、注意が必要です。
雇用情報の提供義務
事業者は自社の雇用情報を積極的に発信し、求職者への周知に努めましょう。広報活動を通じて詳しい求人情報を提供することは、採用活動の円滑化と就業後の定着率アップにつながります。
また、応募者本人や職業紹介事業者としての学校などから求めがあった場合、事業者は次の(ア)〜(ウ)のカテゴリから、最低1つ以上の項目の情報提供が義務づけられています。
(ア)募集・採用に関する状況
- 過去3年間の新卒採用者数と離職者数
- 過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
- 平均勤続年数
※可能であれば平均年齢も
(イ)職業能力の開発・向上に関する状況
- 研修の有無と内容
- 自己啓発支援の有無と内容
- メンター制度の有無と内容
- キャリアコンサルティング制度の有無と内容
- 社内検定制度の有無と内容
(ウ)企業における雇用管理に関する状況
- 前年度の月平均所定外労働時間の実績
- 前年度の有給休暇の平均取得日数
- 前年度の育児休業取得対象者数と取得者数(男女別)
- 役員に占める女性の割合と管理的地位にある女性の割合
情報提供の方法は、ホームページでの公表や会社説明会での提供、求人票への記載などのほか、応募者から個別の求めがあった場合は、メールや書面でも対応します。このとき、情報提供を求められたことを理由に、応募者を不利に扱うことは禁止されています。
若年層の採用活動こそ、情報発信に注力しよう
新卒や若年層の採用時にフォローを手厚くすることは、彼らが順調なスタートを切り、社会人としての基盤を築くことにつながります。その大切さは、就職氷河期世代の雇用対策が長期化していることからも分かるでしょう。若年層は自らの就労経験に基づく判断がしにくいため、企業の発信する情報が就職先を判断する重要な材料となるのです。
また企業側としても、働く意思のある若い世代の雇用は安定した人材確保に繋がります。若者雇用促進法は、採用が難しくなる時代に意識するべき事柄を示す法律とも言えそうです。
※記事内で取り上げた法令は2020年3月時点のものです。
参考文献:
厚生労働省『若者雇用促進法のあらまし』
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000498451.pdf
監修:うたしろFP社労士事務所 歌代将也
TEXT:森夏紀
EDITING:Indeed Japan + ノオト




