実践企業事例 フューチャー株式会社/Owned Media Recruiting/フューチャーアーキテクト株式会社 HR戦略グループ 採用チーム チーフ 岡田美佳子氏

IT企業に限らず、あらゆる企業が優秀なIT人材の採用に乗り出している昨今。そんな状況にあって、「お客様の経営とITをデザインして未来を描き、実現する」というミッションを掲げるITコンサルティンググループのフューチャーは、法人向け情報発信サービス「note pro」を使いオウンドメディア「未来報」を開設した。

同社は、社員や企業カルチャー、社内イベントなどを紹介する精力的な情報発信によって、内定承諾率アップを成功させたという。メディアプラットフォームを使った情報発信の運営方針や、伝えたいメッセージについて、フューチャーグループに属するフューチャーアーキテクトHR戦略グループ 採用チーム チーフの岡田美佳子氏に聞いた。

岡田美佳子氏 フューチャーアーキテクト株式会社 HR戦略グループ 採用チーム チーフ。2011年に人材アセスメント企業へ新卒入社。HRコンサルタントとして企業の選考プロセス改善に取り組んだのち2016年にフューチャーアーキテクトに入社。フューチャーおよびフューチャーアーキテクトの新卒採用を担当する。2020年1月より採用オウンドメディア「未来報」を立ち上げ、編集長として採用広報を推進中。

タイムリーな情報はnoteで発信し、採用サイトとの使い分けを明確に

フューチャーアーキテクト株式会社 岡田美佳子氏

ーー採用サイトだけでなく、別のメディアを使って、オウンドメディアリクルーティングを始めた理由について教えてください。

今の時代は情報が多く、採用においても一つの媒体に数万社という企業が掲載されています。そのなかで、どうすればフューチャーに合う方に当社を見つけてもらい、理解を深め、内定に承諾いただけるのかを考えたとき、会社の魅力を積極的に発信することが必要なのではないかと感じました。

採用サイトよりもタイムリーに幅広く生の声を届けていくことができたら、フューチャーの魅力がもっと伝わるのではないかと考えたのです。そこで2020年1月に、新卒も中途もターゲット層に含め、note proで「未来報」を立ち上げました。

当初、自社で独自の採用メディアを立ち上げることも検討しましたが、立ち上がりまでのスピード感やコストを考え既存のプラットフォームを活用することを選びました。また、社員にも読んでほしいと思っていたので、求職者向けのSNSよりも、様々なコンテンツが掲載されているプラットフォームのほうが読まれやすいのではないかと考え、noteを採用しました。

ーー未来報には「ビジネス」「新人研修」「イベントレポート」「カルチャー」「workstyle」「フューチャーのひと」といったカテゴリがあります。採用サイトとはどのように使い分けをしていますか。

採用サイトは、2021年1月にフルリニューアルしました。それ以前のサイトはいろいろなコンテンツを盛り込んで階層が深くなり、見る方が迷子になりやすいという課題がありました。

そこで、リニューアル後は採用サイトと未来報で載せるコンテンツを分け、採用サイトはシンプルでわかりやすい構成にしました。同時に、あちこちに未来報への導線を作って、より深く知りたい人は幅広くタイムリーな情報がある未来報を読んでいただくようにしています。採用サイトと未来報の使い分けがきちんとできるようになりました。

企画段階から伝えたいメッセージを明確にし、PVよりも承諾率を追う

オウンドメディア「未来報」のキャプチャ
「もっとタイムリーに」「もっと様々な情報を」発信することを目的とした未来報では、入社式や研修など会社の「旬」なイベントや、社員の「素顔」を伝える記事が多く紹介されている

ーー未来報の記事執筆はどのように進めていますか。

記事の執筆は、基本的には社内の採用チームと現場の社員が協力して行っています。開設当初は、書いてみたら内容にまとまりがなかったということがあり、書き直す負荷が高かったため、今は書く前に必ず企画書を作り、伝えたい相手は誰なのか、何を伝えたいか、読んでもらってどういう状況になったら理想的かを考えています。内容にブレがないように企画書の段階で相談しています。

記事で最も大切にしているのは、打ち出したいメッセージです。私たちが伝えていきたいメッセージは、自社のフィロソフィーをもとに作った「初めてに挑戦する」「ないものはつくる」「難題を楽しむ」「本質を見極める」「大義を問う」の5つです。記事を通じて、これらのメッセージを伝えることを意識しています。

万人に向けて発信するより、新卒もキャリアも含めた選考中の方、内定者、社員を「伝えたい相手」とし、記事作成に取り組んでいます。そのため、PVは重要視していません。PVにとらわれすぎず、「伝えたい相手」に響く濃いメッセージを発信しようと心がけています。

ーーPVを重要視していないということですが、何をKPIとして設定されていますか。

社外においては内定承諾率、社内においてはエンゲージメントの向上です。PVは多いほうがよいのですが、それよりも未来報を読んでフューチャーにマッチする方に内定承諾してもらうことを目標にしています。「少人数でいいからきちんと伝わるほうがいい」と、社内では意識を共有して進めています。

新卒内定者の認知率は96%、入社意思決定への影響は4割近くに

採用について語る、岡田氏

ーー2020年の未来報スタートから2年経ちました。オウンドメディアリクルーティングにおいて、どのような成果や影響がありましたか。

新卒を対象とした内定者アンケートでは、未来報の認知率は2021年採用で91%、2022年で96%でした。実際に読んだという人は2021年で74%、2022年は91%まで伸びました。内定承諾率に関しては、以前は40%台でしたが、未来報を始めてから50%を安定的に超えるようになってきました。

コロナ禍で情報を取りにくかった2021年でも承諾率が上がったのは、様々な施策の効果があったと思いますが、未来報の影響も大きいと思っています。実際、「入社意思決定に未来報の影響はありましたか」という質問に「はい」と答えた人は2021年だと15%でしたが、2022年は38%に伸びています。

キャリア採用に関してはまだ過渡期ですが、「未来報を読んでこういう会社に入りたいと思いました」と承諾のきっかけになったり、選考中の方が事前に読んできてくださったことで面接がスムーズに進んだりするケースが増えてきました。面接官やイベントの登壇者が、自身で書いた記事を紹介することもよくあり、様々な場面で活用できています。

ーー今後における採用への接続に関して、どのような目標を描いていますか。

キャリア採用においては部門別に採用しているので、応募にダイレクトにつながるような記事をもっと作っていきたいですね。当社では採用管理システム「Talentio」を使用しており、ジョブディスクリプションから未来報の記事にリンクできるようにしています。関連記事が増えることで、応募検討時に未来報を読んで理解を深めてくださる方も増えるのではないかと思います。

未来報を読んでくださった方が入社して、その方が「いい会社だよ」と未来報で発信してくれて、また次の採用につながっていくような循環の起点になれば嬉しいです。

ーー今後のオウンドメディアリクルーティングの中長期的な目標、展開について教えてください。

オウンドメディアリクルーティングは長く続けることで効果が出るものだと思うので、まずは発信を続けていきたいです。

発信量と質についてはまだまだ改善できると感じています。記事を書くときのガイドラインがあるのですが、それをアップデートして、社員がより書きやすく、スムーズに仕上げられるような体制作りが必要です。

採用広報にもっと力を入れていきたいと採用チーム内でも議論を交わしています。未来報を軸に、そのほかの観点でもコミュニケーションをデザインし、私たちが伝えたいと思っているメッセージを届けることで、当社のファンを増やしていきたいです。