AIを確認せずに放置しておくと、将来の労働力がインクルージョンや多様性に欠けたものとなり、社会で不利な立場に置かれたグループにとっての参入障壁となる可能性があります。一方で、責任を持ってAIを使用すれば、より良い仕事の未来を形作ることができるだけでなく、求職者が現在直面しているバイアスや障壁を緩和できる可能性があります。
9月21日に開催された Indeed FutureWorks 2023に、Indeed のESG(地球環境、社会、ガバナンス)担当SVPであるLaFawn Davisが参加しました。そして、出席した数百人の人事担当者を前に、AIに存在するバイアスという重大な課題や、すべての人々にとって、より良く公平な仕事の世界を実現するための、Indeed のResponsible AIチームによる取り組みについて語りました。

AIに織り込まれたアンコンシャスバイアス
はじめに、Davisは米国での最近のAIの実験の衝撃的な結果を紹介しました。
- 英語で「社会人」を意味する「working professionals」というプロンプト(AIが応答を生成するために必要な文字列や命令文)を入力し、画像を生成するように生成AIツールに指示したところ、返ってきた画像のすべてが白人労働者でした。
- 「ファストフード店の従業員」を意味する「fast-food workers」というプロンプトを入力し、同様に画像生成を指示したところ、米国のファストフード店の従業員の70%が白人であるにもかかわらず、返ってきた画像の70%は非白人を表したものでした。
- さらに、「doctors」と入力して医師の画像生成を指示しました。米国労働統計局によれば、医師の39%が女性であるにもかかわらず、生成された画像のうち、女性はわずか7%という結果でした。
明らかに、AIシステムには現実世界のバイアスが反映されています。そして、Davisが主張したように、こうしたバイアスには好ましくない影響が伴います。Davisは「このアルゴリズムによって、融資審査の結果や、刑事司法制度での扱われ方、就職面接の合否が決まります」と話します。
また、Davisはあるeコマースの多国籍企業の例を挙げ、米国の伝統的女子大学(歴史的に、女性に教育機会を提供してきた実績を持つ米国の大学の総称)を卒業した求職者に、その企業の採用アルゴリズムがペナルティを課していたことを指摘しました。Davisは、その企業の機械学習モデルが、男性に偏った過去のデータに基づいてトレーニングされていたことが原因だと説明しました。

バイアスや障壁を打ち破るAIの可能性
Indeed は2020年以降、AIをポジティブな形で活用する可能性を、その倫理的影響と共に模索してきました。その間に、社内にはResponsible AIチームが設置されました。
「Indeedというプラットフォームは、公平性を念頭に置いて構築されたツールです。私たちは公平な採用を目指して独自の道を歩んでおり、インクルーシブな採用についての自社の採用プロセスの評価や、再設計を継続的に行っています。また、学びながらベストプラクティスを取り入れ、公平な採用プロセスやアクセシビリティ、スキルベースの採用や、経済的な安定において、変革を推進するために取り組んでいます。」とDavisは述べています。
AIが求職者の条件を平等にし、採用企業が有能な人材を見つけるのに役立つ分野のひとつが、高等教育要件です。
Davisが説明したように、25歳以上のアメリカ人の62%が大学の学位を持っていません。この統計には、地方のアメリカ人の75%、アメリカの黒人の72%、ヒスパニック系アメリカ人の79%が含まれます。Indeed のデータによると、何百万人もの米国の求職者が Indeed を利用する際に「no college degree required(大学の学位は不要)」などのキーワードを使って検索しています。
スキルベースの採用は、学歴による採用の5倍、職歴のみによる採用の2倍以上、実務でのパフォーマンスを予測できることが証明されています。それにもかかわらず、採用企業が四大卒であることを必須要件とすることで、何百万人ものアメリカ人が自動的に採用プロセスから除外されることになります。
Davisはこれについて、「別の方法でスキルを獲得してきた」数百万人の求職者がチャンスを逃しているだけでなく、採用企業も優れた人材を採用するチャンスを逃すことになると主張しています。米国、英国そしてアイルランド内では Indeed のSkill Connectを求職者が利用することで、実践的な職業訓練プログラムで獲得したITスキルや専門能力を採用企業にアピールしやすくなり、そのような求職者を求める採用企業とのマッチングを行うことができます。
さらに Indeed は、リクルーターが応募者を書類選考する上で役立つAIツールを開発しており、Davisはこのツールによって「これまで検討されなかった可能性がある履歴書のスキルを検知できるようになります」と述べています。
Indeed は、AIを活用したチャットベースの検索ツールや、AIを活用したキャリアコーチやキャリアパイロットなど、他の方法で求職者を支援するためのAIの可能性を模索しています。午前中の基調講演で Indeed CEOのChris Hyamsが述べたように、現在、北米、英国、フランスの採用企業やリクルーターは Indeed のAI Job Description Generatorを使用することで、人間味のある採用活動により多くの時間をかけられるようになります。
また、米国などの一部の市場では、AIを活用して自社の賃金や給与を見直すことで、給与の透明性を高めることもできます。たとえば、これまで自社に存在しなかった職種に対しても、確実に適正な基本報酬でオファーができるようになります。
採用活動は人間を中心に行う
Davisは、AIができることをすべて適切にまとめたリストを示し、「AIにすべてを任せることはできないし、任せるべきではありません」と参加者に注意を促し、特に採用活動の成果を決定することに関しては、は人間が中心となって行うことの重要性を強調しました。アメリカ人の約71%が、採用に関する最終的な意思決定にAIを使うことに反対しています。また、Davisは、「米国の労働者の多くは、ロボットに最終決定権を持たせることを望んでいません。」と話します。
Indeed は、障壁に直面する累計3000万人の求職者の就業サポートを、2030年までに実現することを目指しています。2023年度には、93万2000人もの求職者の就業を支援しました。
AIとともに仕事を取り巻くより良い環境を築く鍵は、行動を起こすことです。「未来がどうなるかは誰にも分かりませんが、私たち全員が、より良い明日に向けて今日から少しずつ歩み始めれば、正しい方向に進んでいくはずです。私たちが協力することで、バイアスや障壁に直面している求職者が取り残されることがないようにできる可能性が高くなります。」とDavisは話します。