BCP対策とは
「BCP対策」とは、Business Continuity Planの略で、事業継続計画のことです。
地震や台風による自然災害、テロやシステム障害、感染症による混乱など、企業が危機的状況下に置かれた際に、重要な業務が継続できる方法や対策をあらかじめ計画しておくことをいいます。つまり、BCP対策は企業が講じるべきリスクマネジメントの一つです。
リモートワークを想定したBCP対策
自然災害などによって従業員が出社できなくなった場合でも業務を滞りなく続けるための方法の一つに、リモートワークがあります。
リモートワークを想定した場合のBCP対策で重要なのは次の2点です。
1.セキュリティ対策
リモートワークにおけるBCP対策でもっとも重要なのは、デバイスの整備です。これをしっかり整えておかないと、情報漏洩などのリスクが高まります。コスト面などの理由から、従業員が個人で所有するPCを業務利用する「BYOD」を許可している企業もあるかもしれませんが、これは極力避けるべきでしょう。企業がセキュリティ対策を適切に講じたPCを従業員に提供するのが、もっとも安全といえます。
2.コミュニケーション環境を整備する
ネットワーク環境の整備も重要です。リモートワークでは従業員同士はもちろん、取引先など社外の人たちとのコミュニケーションが希薄になりがちです。それが原因で、業務が停滞する可能性が考えられます。より意識的にコミュニケーションを図るためにも、オンラインで会議やミーティングを行うための環境を整えましょう。
また、災害によってインターネットがつながらなくなる可能性も考えられます。それでもコミュニケーションがとり続けられるように、インターネットが接続できなくなった場合の対策も必要です。
リモートワーク中の被災における企業のリスク
リモートワーク中に災害が起こった場合、企業のリスクとして以下が考えられます。
1.従業員の安否確認がとれない
一番のリスクは従業員の安否確認がとれないことです。企業は労働者に対して安全配慮義務を負っています。それはリモートワークでも変わりません。自宅以外の場所を仕事場としている従業員がいる場合、必ずその場所を特定しておきましょう。
2.事業・サービスの復旧に時間かかる
事前に対応を決めていなかったことから、初動が遅れ、事業・サービスに影響を及ぼすことが考えられます。重要な事業・サービスが停止してしまったら、当然企業にとって大きなリスクになります。自社に必要なBCP対策をしっかり講じることが大切です。
リモートワーク中の自然災害に対して企業が備えるべきこと
災害に備えて、オフィスにおいて避難訓練などを行っている企業はあるかもしれませんが、リモートワークが普及してきた中では「リモートワークを想定した災害対応マニュアル」の整備が必須になります。リモートワーク中の自然災害時の対応方法を整備して従業員に周知し、いざというときに実行できるよう準備しておくことが重要です。
◆災害対応マニュアルに必要な事項例
1.誰が何をするか決めておく
非常事態下での行動の取り方を、個々の従業員ごとに管理し、徹底していくことが重要です。そのためにも、誰が何をするのか役割をきちんと決めておく必要があります。
2.連絡先と連絡方法を整理しておく
従業員がオフィスにいる場合と違い、リモートワークでは緊急時に連絡がとれる方法を確認しておかなければなりません。インターネットがつながらなかった場合の対策も必須です。
3.必要な物資を配布しておく
オフィスに常備している防災グッズを、各従業員の自宅にも配布しましょう。いざというときの備えになります。
4.安否確認訓練を行う
実際の避難訓練と同様に、リモートワーク環境下でもスムーズに安否確認ができ、適切な避難ができるように訓練する必要があります。安否確認システムや一斉通知システムなど、オンラインサービスを導入するのも方法の一つです。
企業は、有事の際にも従業員の安全を管理する役割を負っています。何よりも従業員の身の安全が第一なので、定期的にマニュアルを見直したり、定期的に訓練を行ったりするなど、有事に備えましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年6月時点のものです。
<取材先>
社会保険労務士法人堀下&パートナーズ 代表 堀下和紀さん
慶應義塾大学商学部卒業。大手企業を経て、社会保険労務士法人堀下&パートナーズを設立。訴訟、労働組合案件等トラブル解決を含め、顧問先は2100社を超える。
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト