バイト採用と社員採用、雇用契約の違いとは?

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一般的にバイト採用と社員(以下、正社員)採用の雇用形態は異なります。雇用契約上、どのような違いがあるのでしょうか。社会保険加入の有無、福利厚生の適用範囲における条件や手続きの違い、バイト採用時の注意点などについて、ブレイン社会保険労務士法人代表社員の北村庄吾さんに伺いました。

 

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バイト(パートタイム労働者)と正社員の雇用契約上の違い

一般的に、バイト(パートタイム労働者)と正社員の雇用契約上の違いとして、「雇用期間の定めの有無」「労働時間」「給与形態」「福利厚生の有無」があげられます。

 

◆バイト(パートタイム労働者)の雇用契約

  • 雇用期間の定めの有無……雇用期間の定めのある有期雇用
  • 労働時間……社員と比較して労働時間が短く、働く時間は自分で決められることがある
  • 給与形態……時給制が多く、働いた分だけ支給される。一般的に賞与や退職金は支給されない
  • 福利厚生の有無……一定の条件を満たさないと社会保険(健康保険や厚生年金など)への加入はできない。企業独自の福利厚生の対象にならないケースがある

 

◆正社員の雇用契約

  • 雇用期間の定めの有無……雇用期間の定めのない無期雇用
  • 労働時間……1日8時間、週40時間など、あらかじめ決まっている
  • 給与形態……月給制が多く、企業によって賞与や退職金が支給される
  • 福利厚生の有無……社会保険への加入や企業独自の福利厚生の対象になる

 

バイトと正社員の社会保険加入の条件や手続きの違い

バイトも正社員も、社会保険加入の条件や手続きに違いはありません。正社員の場合、雇用契約上、入社と同時に社会保険への加入条件を満たしているケースがほとんどです。しかし、バイトの場合は注意が必要です。現状、以下の条件を満たしている場合、バイトであっても社会保険に加入する義務があります。

◆社会保険加入の条件

  1. 企業規模……従業員数が501名以上
  2. 労働時間……週の所定労働時間が20時間以上
  3. 雇用期間……雇用期間が1年以上見込まれる
  4. 賃金……月額8万8,000円以上

ただし、2020年5月に成立した「社会保険の適用拡大」により、1の企業規模については、2022年10月以降は「101人以上」、2024年10月以降は「51名以上」の企業に適用されます。
 
また、3の雇用期間については、2022年10月以降は「2カ月超見込まれる」場合、バイトも社会保険加入が義務となります。
 
社会保険にはいくつか種類がありますが、それぞれ労働時間によって適用の有無が変わります。「社会保険の適用拡大」に沿って順次適用されます。

 

  1. 労災保険……労働時間に関係なく適用
  2. 雇用保険……1週20時間以上、31日以上の雇用見込みで適用
  3. 健康保険・厚生年金保険……正社員の労働時間の3/4以上で適用(正社員が週40時間の場合、バイトは30時間以上)

 
週40時間以上の場合、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険はすべて適用。 週30時間以上40時間未満の場合、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険はすべて適用。 週20時間以上30時間未満の場合、労災保険と雇用保険は適用、健康保険と厚生年金保険はケースによる。 週20時間未満の場合、労災保険は適用、雇用保険、健康保険、厚生年金保険は適用されない。

 

福利厚生の適用など、バイト待遇の充実は必須

企業はバイトの働き方に応じて、正社員と均衡のとれた待遇を確保する必要があります。これは「時間労働者および有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法)に定められています。具体的には、以下のとおりです。

 

◆差別的待遇の禁止

  1. バイトなどが正社員と同じ内容の仕事をしている場合、パートタイム労働者であることを理由に賃金などの待遇を差別的に取り扱ってはいけない。
  2. 1以外のパートタイム労働者についても、仕事の内容や成果、能力や経験、意欲を考慮して、正社員とバランスがとれる待遇(賃金の決め方、教育訓練の機会、福利厚生施設の利用など)にしなければならない。

 

◆正社員登用の機会を与える義務

次のいずれかの措置を取らなければならないとされています。

  1. 外部から正社員を募集する場合、バイトなどにも募集に関する情報を周知する。
  2. 正社員のポストを社内公募する際、バイトなどにも応募する機会を与える。
  3. 一定の資格を有するパートタイム労働者を対象に、バイトなどから正社員になるための試験制度を設けるなど転換制度を導入する。

 

バイトを採用する際の注意点

近年の法改正により、バイトなどパートタイム労働者に対する規制が強化されています。国は正社員との格差をなくすため、「同一労働同一賃金」や「社会保険の適用拡大」などの法改正を行ってきました。バイトを採用する際には、労働基準法やパートタイム労働法にのっとり、様々なことに留意する必要があります。以下は主な注意点です。

 

◆バイト採用の注意点

  1. 文書交付による労働条件の明示が義務づけられている。
  2. バイトやパートを含めて10名以上の労働者を雇う企業では、就業規則の作成が義務づけられている。
  3. 期間の定めがある契約を繰り返した結果、勤続年数が5年以上になると「無期転換権」が発生する。これを行使されると、バイトは無期雇用契約となり、正当な理由がなければ解雇できない。
  4. 最低賃金がアップし続けているため、最低賃金違反への留意が必要。
  5. バイトなどから待遇について説明を求められた際、誠実に対応する。

とくに気をつけたいのは、1の労働条件の明示義務です。バイトであっても、以下の労働条件を文書で交付しなければなりません。

 

◆労働基準法による文書明示義務

  • 労働契約期間
  • 就業場所
  • 従事する業務内容
  • 労働時間(始業・終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日など)
  • 賃金(計算および支払方法、賃金締切日、支払時期)
  • 退職(解雇事由含む)

 

◆パートタイム労働法による文書明示義務

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

労働力人口が減少する中、単純に「安く雇えるから」という理由でバイトを採用する時代ではありません。いまや、バイトのほうが良い職場を選ぶ時代になってきています。企業はその点を踏まえて、バイト採用も正社員同様に計画的に進める必要があるでしょう。

 

 

※記事内で取り上げた法令は2022年8月時点のものです。
 
<取材先>
ブレイン社会保険労務士法人 代表社員 北村庄吾さん
中央大学卒業。社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。1991年に法律系国家資格者の総合事務所Brainを設立。ワンストップサービスの総合事務所として注目を集める。1993年より起業家の育成にも力を入れ、第3次起業家ブームを牽引。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

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