特別養子縁組や里親での育休取得、企業がやるべきことは?


育児休業(育児休暇)に関する法律は、徐々に変化してきています。最近では、男性育休義務化がたびたびニュースとして注目されるようになりました。企業側は、法改正や社会の動きに合わせた柔軟な対応が求められています。
 
今回取り上げるのは、特別養子縁組をした親や里親の育児休業です。家族のあり方が多様化し、特別養子縁組をした親や里親である労働者も育休の取得が適用されました。近年の法改正によって適用範囲や期間が変更されていますが、詳しいルールはどのようになっているのでしょうか。また、企業はどのような準備をしておく必要があるのでしょうか。
 
HM人事労務コンサルティング代表で社会保険労務士の丸山博美さんに、お話を伺いました。

 
 

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特別養子縁組をした親や里親は育休を取得できる


――特別養子縁組をした親や里親は、育児休業などを取得することはできますか?
 
現在、特別養子縁組をした親や里親は、育児休業の取得が可能となっています。2017年の改正育児休業法施行以前は、育児休業法の対象となる子の要件は「法律上の子」に限定していました。「法律上の子」を具体的に言うと、「法律上の親子関係がある実子・養子」です。
 
そのため、法的な親子関係があるとされる「特別養子縁組」は育児休業の対象とされていましたが、特別養子縁組の「監護期間中」や、「里親」は対象外でした。里親は、あくまでも生みの親を法的な親とする考え方だったのです。
 
2017年の改正育児休業法の施行に伴い、以下が育児休業の取得可能対象として追加されているので、企業は確認が必要です。

 

  • 特別養子縁組の監護期間中(特別養子縁組を成立させるための6カ月以上の監護期間)の子
  • 養子縁組里親に委託されている子
  • その他これらに準ずるもの


これにより、特別養子縁組をした親に加えて、里親も育休を取得できるようになりました。
 
なお、「その他これらに準ずるもの」とは、「特別養子縁組により養親になろうとする者又は養子縁組里親に準ずる者として厚生労働省令で定める者(児童相談所長)に厚生労働省令で定めるところにより委託されている者」と定められています。具体的には「養子縁組里親委託決定を出す段階になってから、実親(等の親権者)が反対したため、やむなく養育里親として委託することになった者」が該当します。

 
 

看護休暇や時短勤務への対応にも注意


――「育児休業など」には、具体的には何が含まれますか?
 
そもそも育児休業とは、1歳に満たない子どもを養育する労働者が、子どもが1歳になるまでの間、会社に申し出ることで希望する期間内は育児のために休業できるという制度です。
 
育休は延長が可能です。法改正により、必要な場合は子どもが2歳になるまで再延長できるようになりました。
 
育休には、子の看護休暇、所定外労働の制限(残業の免除)、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置が含まれます。企業は、特別養子縁組や里親でも、これらの制度を含めた対応が必要です。特に子の看護休暇は、1日単位の取得だった時期もありましたが、2021年1月の改正により、時間単位で取得できるように変更されています。
 
参考:育児・介護休業法が改正されます!(厚生労働省)
 
――こうした法改正にはどのような背景があるのでしょうか?
 
「家族の多様性を認める」という考え方があるように感じられます。様々な事情で、特別養子縁組や里親という選択によって子どもを迎える方々がいます。しかしながら、そういった決断をした場合に、「法的な親であれば子どもを育むために受けられるはずの支援」を受けられないとなれば、子どもを迎える上での障壁となることは間違いありません。
 
育休取得対象者の拡大は、親になりたい方々と何らかの事情で実親の元を離れる子ども、双方にとって文字通り「改正」事項と言えるでしょう。

 
 

法改正に対応した就業規則作成のポイントとは


――養親や里親の育休取得にあたり、企業側が事前に準備するべきことを教えてください。
 
法改正への対応として、就業規則を改定しましょう。育児介護休業規程を別途定めている場合は、その規程の改定も必要になります。
 
「育児休業の対象となる子の範囲」について、法改正のタイミングで社内規定を変更していない場合、現行の規程では法改正前の定めになっている可能性が高いです。
 
具体的には、「育児休業の対象範囲」と「事業主が事実を証明する書類の提出を求めることができる対象」に、以下を追加します。

 

  • 特別養子縁組の監護期間にある子を養育していること
  • 養子縁組里親として委託されている子を養育していること
  • 当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められるにもかかわらず、実親等が反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子を養育していること(※)


(※)法律上の子となる「養子縁組」を児童相談所から認められていても、事情により、法律上の親子とはならない「里親」として育てているケース
 
そのほか、「育児休業の終了事由」に、特別養子縁組の請求棄却、養子縁組里親の委託解除などを加えることも想定されます。
 
就業規則を改定した際には労働者への周知徹底が必要です。このタイミングで、これまで以上に育休を取得しやすい職場風土の醸成に取り組むと、改正を良い方向に活かすことができると思います。

 
 

育休を取得しやすい職場風土の醸成を


――法改正以降、企業は具体的にどんな対応をしてきましたか?
 
法改正をきっかけに、労働者が育休を取得しやすい職場風土の醸成に取り組むケースがいくつか見受けられました。私自身も、就業規則改定とその後の周知徹底をお手伝いした際に、こうした取り組みにもご協力させていただきました。
 
具体的には、労働者を対象に産休・育休制度やこれを取得する権利について研修を行い、取得を促進します。企業側には、両立支援に関わる助成金活用を提案することもありますね。
 
――従業員からの育休申請があった場合、企業はどのような対応が求められますか?
 
まずは、育休取得が労働者の権利であることを踏まえて、取得を渋らないことです。仕事の割り振りや代替要員の確保にあたり、育休取得の希望があった場合に安心して休んでもらえる職場作りを目指します。特に、日本ではまだまだ男性の育休取得に抵抗のあるケースが多いので、まず管理者側の意識改革が求められるでしょう。
 
また、労働者の育休取得時には、両立支援関連の助成金を活用することができます。これに向けた下準備をしておくことも大切です。例えば、「出生時両立支援助成金(子育てパパ支援助成金)」は男性労働者の育休取得の際に活用可能な助成金ですが、育休取得以前に「男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土作りの取り組み」をしておくことが条件となっています。取り組みの例には、

 

  • 男性労働者の育児休業取得に関する管理職や労働者向けの研修を実施する
  • 男性労働者を対象にした育児休業制度の利用を促進するための資料配布等を行う


などがあります。社内制度の整備と並行して、申請しやすい職場の風土作りにも取り組めるのが理想です。
 
参考:2020年度 両立支援等助成金のご案内(厚生労働省)

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。
 
<取材先>
丸山博美さん
HM人事労務コンサルティング代表。社会保険労務士。大学卒業後、教育関連の会社に勤務。2014年にHM人事労務コンサルティングを設立。
 
TEXT:遠藤光太
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 

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