大手企業と中小企業の面接の違い
企業が面接の場で候補者に対して行うべきことは、大手企業であれ中小企業であれ、大きな違いはありません。ただし、いたずらに面接の回数が増えてしまうのは、大手企業にありがちなことです。
大手企業ではどうしても関係部署や関係者の数が多くなりがちであり、また、採用が濃厚である有力な候補者については、「誰々にも面通しをしておくべきだろう」といった忖度が働くのもよくあることです。
その点、中小企業のほうがよりスピーディーに選考を進められるはずで、この特性を生かさない手はありません。特に新卒採用時には、応募の総数が膨大になる大手企業とくらべて、選考期間を短縮したり、メール対応のレスポンスを迅速にしたりと、小回りの利いた対応がとれることは、中小企業ならではのメリットといえます。
さらに、一人ひとりの応募者とより密なコミュニケーションをとりやすいのも、中小企業の特性の一つです。採用担当者が単なる窓口業務にとどまらず、応募者との関係を醸成しやすいことは、入社意欲の増進にもつながるでしょう。
中小企業が面接でやりがちなミス
ただし、所帯の小さな中小企業だからこそ陥りがちなミスもあるので注意が必要です。
たとえば、営業職を採用するための面接であるにもかかわらず、実務とは無関係な部門の部長や役員の判断が必要になるなど、社内政治が影響してしまうケースです。これは採用の現場と会社の上層部の距離が近いために起こり得るもので、選考を滞らせる一因となります。
また、応募者が少ない場合、「もう少し待てば、より良い人材の応募があるかもしれない」と、すでに面接を進めている候補者に対する判断を保留してしまうケースも散見されます。
一度の募集でできるだけ優れた人材を確保したいというのは、企業として当然の望みですが、応募者はできるだけ早い合否判断を欲していることが多いです。自社の都合で選考を遅らせることは、結果的に会社に対する口コミ、心象を悪化させることにもつながるでしょう。
中小企業が上手に面接を活用するためには
面接において最も大切なのは、自社に適した人材を採用することであるのはいうまでもありません。人員に限りのある中小企業であれば、これはなおさらでしょう。
そして最適な人材を選ぶためには、候補者を横並びにして「相対評価」を行うことよりも、その人材のどこが自社に適し、自社でどのような能力を発揮してくれるかという「絶対評価」が必要です。極端にいえば、それが求める理想の人材であるなら、応募総数は1人だけでも構わないのです。
ところが採用担当者としては、一定の母集団に対して選考を行うとなれば、どうしてもそのなかでの評価の順列にこだわりたくなるものです。
そこで重要なのは、募集を行う前にあらためて、「なぜ人材を募集するのか」「どういう人材を採るのか」「どのポストに就く人材を採るのか」を明確にしておくことです。そのうえで、そうした人材を採用するために何回面接を実施し、それぞれ誰が面接を担当するのかを確定しておけば、無駄のないスピーディーな選考が行えるはずです。
逆に言えば、これらが曖昧なまま選考を進めてしまうと、中小企業のメリットである意思決定のスピードが発揮できず、結果として高い能力を備えた人材を逃してしまうことになり兼ねません。面接は事前の計画、戦略設計が大切であるということを再認識すべきでしょう。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト