フレックスタイム制を導入する際の時間外業務の考え方


2019年4月1日より「働き方改革関連法案」が順次施行されるなか、環境整備のひとつとして「フレックスタイム制」の導入を考えている企業は少なくないようです。
 
フレックスタイム制で気をつけたいのが「時間外業務」の基準。通常勤務のフルタイムとは異なるので注意が必要です。そこで、フレックスタイム制の時間外業務の考え方や、導入の際のポイントについて、堀下社会保険労務士事務所・代表の堀下和紀さんに伺いました。

 
 

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フレックスタイム制とは?


フレックスタイム制とは「変形労働時間制」のひとつで、「flex(柔軟性のある、自由のきく)」の名前の通り、労働者が自身の状況に合わせて働く時間を調整できる制度のことです。
 
一定期間(清算期間)の中であらかじめ総労働時間を決め、その所定労働時間をクリアすれば、出社時間や退社時間、1日に働く時間を労働者が自由に決めることができます。

 
 

フレックスタイム制の導入には「労使協定」の締結が必須


企業がフレックスタイム制を導入するためには、以下の2点の手続きが必須です。

 
 

◆フレックスタイム制導入に必要な手続き


1)就業規則等への規定
就業規則、その他これに準ずるものに「始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる」旨を定め、従業員に周知させる必要があります。
 
2)「労使協定」の締結
企業と従業員の間で基本的なルールを決め、「労使協定」を結ぶ必要があります。その際に定める項目は以下の通りです。
 
(1)対象となる労働者の範囲
(2)清算期間(上限3カ月)および清算期間の起算日
(3)清算期間における総労働時間(所定労働時間)
(4)標準となる1日の労働時間
(5)労働者が必ず労働しなければならない「コアタイム」を定める場合、その開始および終了の時刻
(6)労働者の選択で労働することができる「フレキシブルタイム」を定める場合、その開始および終了の時刻
 
(5)のコアタイムと(6)のフレキシブルタイムは必須ではありませんが、定める場合は労使協定に明記する必要があります。また、(2)の清算期間が1カ月を超える場合は、労働基準監督署に届け出る必要があるので注意してください。

 
 

フレックスタイム制のメリット・デメリット


フレックスタイム制の導入を検討する際に気をつけたいのは、適した業種・職種、適さない業種・職種があるということです。
 
たとえば、個人での業務が多い業種・職種なら、時間を自由に使えることがメリットとなり、生産性のアップにつながります。
 
一方で、チームワークが必要なプロジェクトや、他部署・他企業との連携の多い業種・職種の場合、タイムラグが発生し、働きにくい環境になってしまうこともあります。
企業ごとに仕事の進め方がありますので、以下にあげるメリット・デメリットを参考に、自社の業務内容と照らし合わせたうえでの導入をおすすめします。
 
また、会社全体で導入しなければいけないわけではありません。部署ごとや労働者ごとの導入で効率化を実現できるケースもあります。

 
 

◆フレックスタイム制のメリット

  • 労働時間を効率的に配分できるため、労働生産性の向上と残業の軽減が期待できる。
  • 仕事と生活の調和(ワークライフバランス)が図りやすくなることで、労働者に長く定着してもらえるようになる。

 

◆フレックスタイム制のデメリット

  • 清算期間における労働時間の確認、残業代の計算など、勤怠管理が複雑になる。
  • 担当者不在の時間が増えるため、取引先対応がおろそかになる。
  • 従業員間のコミュニケーション不足の恐れがある。

 
 

時間外業務と関係してくる「36(さぶろく)協定」とは?


フレックスタイム制は従業員個々の労働時間にばらつきがあり勤怠管理が複雑になるため、とくに時間外業務(残業)の把握がおろそかになりがちですが、時間外業務が発生すれば、当然、残業代を支払わなければなりません。
 
とはいえ、残業代を払えばいいということではありません。通常勤務もフレックスタイム制も同様ですが、従業員に時間外業務をさせるためには、まずは企業と労働者の間で「36協定」を締結し、労働基準監督署に提出する必要があります。
 
従業員が1名でも、雇用形態がアルバイトやパートであっても「36協定」の提出は必須です。提出せずに時間外業務をさせると「違法な残業」となり、是正勧告の対象になります。修正されない場合、書類送検されることもあるので気をつけましょう。
 
また「36協定」を結んだとしても、時間外業務の上限は労働基準法で定められています。それを超えた場合は違法となるので注意してください。

 
 

フレックスタイム制の時間外業務をどう管理する?


時間外業務についての考え方は、通常勤務とフレックスタイム制では異なります。通常勤務の場合、「1日8時間」「週40時間」を超えた分が時間外業務になります。
 
フレックスタイム制の場合、1日単位では判断しません。仮に1日8時間以上働いた日があったとしても即時間外業務とはならず、「清算期間」を通じて「法定労働時間の総枠」を超えた分が時間外業務としてカウントされます。清算期間が1カ月を超える場合は、さらに1カ月ごとの計算も必要になります。

1カ月で、清算期間の暦日数が31日の場合、法定労働時間の総枠は177.1時間。 清算期間の暦日数が30日の場合、法定労働時間の総枠は171.4時間。 清算期間の暦日数が29日の場合、法定労働時間の総枠は165.7時間。 清算期間の暦日数が28日の場合、法定労働時間の総枠は160.0時間。  2カ月で、清算期間の暦日数が62日の場合、法定労働時間の総枠は354.2時間。 清算期間の暦日数が61日の場合、法定労働時間の総枠は348.5時間。 清算期間の暦日数が60日の場合、法定労働時間の総枠は342.8時間。 清算期間の暦日数が59日の場合、法定労働時間の総枠は337.1時間。  3カ月で、清算期間の暦日数が92日の場合、法定労働時間の総枠は525.7時間。 清算期間の暦日数が91日の場合、法定労働時間の総枠は520.0時間。 清算期間の暦日数が90日の場合、法定労働時間の総枠は514.2時間。 清算期間の暦日数が89日の場合、法定労働時間の総枠は508.5時間。
 
 

◆清算期間が1カ月超える場合のフレックスタイム制の時間外業務


(1)1カ月ごとに、労働時間が週平均50時間を超えた分
(2)清算期間を通じて、労働時間が法定労働時間の総枠を超えた分
※(1)でカウントした労働時間を除く
 
法的には以上が「時間外業務」となり、「36協定」の締結・届出ならびに残業代の支払い義務が生じます。
 
ここで気をつけたいのは、「36協定」の締結・届出の必要はないものの、「所定労働時間」を超過すれば、その分の残業代は発生するということです。フレックスタイム制の「時間外業務」の定義は少々複雑なので、きちんと把握し、残業代の未払いが起きないように気をつけましょう。
 
フレックスタイム制は、労働者が自由に出社・退社時間を決められるといっても、当然、企業側には各従業員の労働時間をきちんと把握する義務があります。勤怠状況を正確に把握するために、タイムカード方式を見直し、クラウド型の勤怠管理システムを導入することをおすすめします。
 
しかし、そもそも企業がフレックスタイム制を導入するメリットのひとつは、労働者が時間を効率的に使うことで生産性を上げ、残業が軽減できること。
 
まずは、あらかじめ定めた「所定労働時間の範囲内で仕事をする」「極力残業をしない」ということを、労働者に徹底させることが重要だと思います。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2020年9月時点のものです。
 
<取材先>
堀下社会保険労務士事務所
代表 堀下和紀さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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