人材アセスメントとは?その効果や研修方法

面談をしているイメージ


近年、「人材アセスメント」の言葉を耳にするようになりました。どのようなもので、どういった効果が得られるのでしょうか。組織・人事領域全般の調査・研究に詳しい、株式会社ビジネスリサーチラボ代表の伊達洋駆さんに、メリットやデメリット、導入のポイントなどを解説していただきました。

 
 

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人材アセスメントとは


英語で「評価・査定」の意味を持つ「アセスメント(assessment)」。「人材アセスメント」とは、文字通り、人材の能力や性格、意欲などを評価することを指します。
 
「人材アセスメント」は、「人事評価」と同じ意味で使われることもあります。しかし、より適正な人事評価を行うために、狭義には「客観性を重視した人事評価」や「外部機関や第三者などに依頼し、演習や適性検査などを用いて評価する方法」を指すケースが見られます。
 
この記事では、後者の狭義的な意味での人材アセスメントについて解説します。

 
 

人材アセスメントが必要とされている背景

 
 

◆従来の人事評価制度への疑問


従来の人事評価では、直属の上司が部下の普段の仕事ぶりをもとに行うのが一般的です。ところが、評価に際しては「バイアス」と呼ばれる無意識の思い込みや偏見が働くため、社内で完結する評価手法はときに客観性を欠くという問題点もあります。
 
人事評価をする側の心理的バイアスは数多く存在しますが、たとえば次のようなものが挙げられます。

 

  • 寛大化バイアス:「相手に悪く思われたくない」などの思いから、甘めの評価をつける
  • 厳格化バイアス:正しく評価しようと思うあまりに、厳しめの評価をつける
  • 相対化バイアス:複数の部下を持つ場合など、本来の基準でなく、部下同士を比べて評価をつける
  • ジェンダーバイアス:「男性はこういうもの」など、性別についての思い込みをもとに評価する

 
 

◆社会の変化に合わせた人事評価の必要性


日本の企業では、職能等級制度や年功序列制度が一般的だったことから、勤続年数とともに給与や役職も上がりやすい傾向がありました。近年はダイバーシティの拡大やグローバル化といった社会の変化に伴い、個人のスキルや能力、意欲などの評価が重要視されるようになっています。

 
 

◆マネジメント難易度の上昇


人材アセスメントは、採用や管理職への登用の評価に多く用いられます。しかし、上記のような社会情勢の変化により、多種多様な人材とコミュニケーションを取る必要性から、マネジメントの難易度が上がっています。管理職に相応しい人材を客観的に評価するために、人材アセスメントが求められています。

 
 

人材アセスメントの主な手法


人材アセスメントには、次のような手法があります。

 
 

◆人材アセスメント研修


架空のシチュエーションを設定し、その中での行動や発言を観察する「シミュレーション」などの手法を用いて、受講者の能力や性格などを評価します。研修の運営は外部機関に依頼するケースが多く見られます。

 
 

適性検査


多肢選択式の質問に答え、人材の能力や性格などを見極めます。検査の種類は、採用試験用や管理職候補者に向けたものなど様々です。パーソナリティテストである「SPI」など、外部機関のサービスを利用して行うものがほとんどです。

 
 

◆面談


対面やオンライン上での会話を通して評価する手法です。定期的に行われる人事評価面談のほか、行動特性など、仕事で必要な力を測るコンピテンシー面談などがあります。社内で行う場合は、客観性を担保するために、部署内の上司のみではなく、人事担当者が同席したり実施したりするケースもあります。

 
 

◆多面評価(360度評価)


上司や人事担当者のみではなく、本人の同僚、部下、取引先など、利害関係者にアンケートを行って多方面から評価する手法です。時間と手間がかかるため、導入している企業はそれほど多くはありませんが、少人数のみで評価するより適切な評価ができると考えられています。自社で企画・実施する場合と、外部機関に依頼する場合があります。

 
 

人材アセスメントのメリットとデメリット

 
 

◆メリット

 

  • 外部機関が行う人材アセスメントでは、「アセッサー」と呼ばれる訓練を受けた専門家による評価を実施。社内のみの人事評価に比べて、適切な評価が期待できる。
  • 専門家が評価に参加することにより、被評価者である従業員にも納得感が生まれる。
  • 適切な評価をもとに適材適所に人員を配置することで、従業員が能力を発揮しやすくなる。企業も業績の向上が見込め、双方にメリットがある。
  • 被評価者である従業員のスキルや能力など、現在の状態がわかるため、従業員自身が今後の目標を設定しやすくなる。

 
 

◆デメリット

 

  • 人は他者評価よりも自己評価の方が高い傾向にある。従業員にとって思わしくない評価だった場合、専門家による客観的な評価であることからショックを受ける可能性がある。
  • 従業員本人や上司が、外部機関による評価の内容を「本人そのものの価値」と結びつけてしまうリスクがある。全人格的な評価ではなく、あくまで一側面の評価であることを理解する必要がある。
  • 一般的な社内面談よりも準備や関わる人数が増えるなど大掛かりになるため、日常業務の片手間では実施できず、工数と労力を要する。

 
 

人材アセスメントの導入ポイント

 
 

◆評価のためだけに用いない


人材アセスメントは適切な評価を行うための手法ですが、デメリットの項目でも述べたように、評価内容を本人そのものの価値と結びつけてしまうリスクがあります。従業員の現時点でのレベルを知り今後の目標を定めるなど、人材育成や組織開発の観点に立って、企業側と従業員の双方が、評価結果をポジティブな方向に活かし、よりよい未来につなげていく意識が重要です。

 
 

◆自社ならではのビジョンを設定する


人材アセスメントの導入にあたっては、自社がどのような人材を求めるのか、どのような会社づくりをしていきたいかなど、独自の評価基準を設定することが大前提です。ビジョンがあいまいなまま評価の手法だけを取り入れてしまうと、評価に振り回されて、従業員と会社の両方の未来にマイナスの影響を与える危険があります。

 
 

◆試行錯誤と見直しは必須


自社の求める人材像やビジョンを描くことは必要不可欠ですが、そこに正解はありません。
自社の歴史や社風、状況などを踏まえて自社ならではの基準を設定した後は、定期的に見直しを図り、ブラッシュアップしていきましょう。
 
人が人を正しく評価することはとても難しいことです。だからこそ、個人をしっかりと評価する姿勢を意識して、企業と従業員のよりよい将来のために、制度を整えていきましょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年11月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表 伊達洋駆さん
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『人材マネジメント用語図鑑』(共著;ソシム)など。
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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