人材アセスメントとは
人材アセスメントとは、人材の能力や性格、意欲などを評価することです。より適切な人事評価を行うために、狭義では「客観性を重視した人事評価」や「外部機関や第三者などに依頼し、演習や適性検査などを用いて評価する方法」を指します。
人材アセスメント研修を行う目的
本記事内での「人材アセスメント研修」とは、人材アセスメントの手法の一つで、外部機関に依頼をして、被評価者である従業員の能力や性格、意欲などを評価する機会を指します。
外部機関から派遣される「アセッサー」が評価を行うため、社内のみで実施する人事評価に比べて、より客観性のある評価が期待できるといわれています。
人材アセスメント研修は、主に従業員の昇進や昇格、管理職を選出する際、候補者にその適性があるかを判断するために用いられるケースが多く見られます。
人材アセスメント研修の内容
代表的な人材アセスメント研修の一つに「シミュレーション」があり、次のようなステップで実施されます。
1.管理職候補となる従業員を同じ場所に集める
2.架空のシチュエーションを作り出し、その設定上で候補者に役を与える
(例:食品会社の工場を舞台として、A・B・C・Dさんがそれぞれ工場長となる)
3.各候補者が、設定された状況の中でどのような言動をとるかをアセッサーが観察し、評価をする。
この時アセッサーは、候補者が、あらかじめ設定したポイントに該当する行動をとったかを確認しながら、候補者の能力や性格、意欲などを評価していきます。
研修には、ほかにも様々な種類があります。研修によっては手間や時間がかかるため、目的に応じて選ぶといいでしょう。
- 複数の企業の管理職候補が集まって研修を行うケース
- ワークの後に面談を実施するケース
- カードなどを用いて、より簡易に「シミュレーション」に近い研修を行うケース など
人材アセスメント研修を行う前に企業が準備しておくこと
◆求める能力の定義
自社が求める人材像が明確で、必要な能力が定義できている企業であれば、人材アセスメント研修を効果的に活用することができるでしょう。
逆に、このような定義やビジョンを持たない段階で、人材アセスメント研修を導入しても、評価基準が曖昧なため、十分な効果を得ることはできません。自社の進む方向性を明確にすることが先決です。
◆成長に活かそうとする意識が企業内で共有されている
人材アセスメント研修の結果を従業員にフィードバックすることで「なぜこのような結果が出たのか」「今後、どのような改善していくか」など、内省を経て成長に活かしていくことができます。
人材アセスメント研修を行う際のポイント
◆研修の目的を従業員に伝える
人材アセスメントやその研修は、その人の持つ能力や性格、意欲などのごく一部を評価するための手法であり、全人格を評価するものではありません。
評価にネガティブな要素が含まれていた場合、被評価者である従業員が受けるショックは想像以上に大きなものです。企業側は人材アセスメント研修の意図を明確にし、従業員が「さらなる成長を目指すためのギフトである」という意識を持てるよう、心を配りましょう。
◆状況やポジションに合った能力を定義する
たとえば、管理職に求められる能力の一つとして「リーダーシップ」が挙げられます。メンバーを引っ張っていくタイプのリーダーもいれば、人の話をじっくり聞き、個々の自主性を引き出すタイプのリーダーもいます。同じ会社でも、部署によって必要とされる能力は違うものです。ポジションに適した人材の能力を定義した上で、人材アセスメント研修を導入しましょう。
人材アセスメント研修は、あくまでそれぞれの企業が求める基準に能力や意欲、性格が合っているかを評価するツールの一つです。手法から入るのではなく、自社ならではの基準を定めてから臨みましょう。
※記事内で取り上げた法令は2021年11月時点のものです。
<取材先>
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表 伊達洋駆さん
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『人材マネジメント用語図鑑』(共著;ソシム)など。
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト
