社名変更=商号変更の登記とは
社名は、正式には商号といい、社名を変更することを「商号変更」といいます。商号変更を行うには、法務局で商号変更の登記を申請する必要があります。
◆社名変更の主なケース
社名変更を行う主なケースとして、下記があります。
・会社合併や分社化による変更
合併する複数の社名を合体させたり、分社化により新しい社名をつけたりする。
・サービス名を社名にする
会社が取り扱うサービスやブランド名をそのまま社名に変更し、親しみやすさや認知度を高める。
・事業内容に合った社名に変更
会社設立時の事業から変更があった場合に、現在の事業に合った社名に変更する。
・新ブランド確立に伴う変更
会社が立ち上げた新しいブランド名や、企業の新しいビジョンや理念などにまつわる社名にする。
・長い社名や漢字の社名を変更する
長い社名を短くしたり、漢字をカタカナにしたりして読みやすくする。海外展開する際にアルファベットに変更するケースもある。
社名変更における手続きや費用
ここでは、株式会社の社名変更の手続きを解説します。
◆社名変更を行う手順
1.株主総会を開く
株主総会を開き、特別決議による定款変更の決議を行う必要があります。議決権の過半数を保有する株主が株主総会に参加し、議決権の3分の2をもって決議の承認を得ます。また、会社法318条1項により株主総会の議事録の作成や、その本店での10年間の保管が定められています。議事録の作成や保管がなされなかった場合、100万円以下の過料に処せられることがあります。
2.登記申請書を作成
商号変更の登記申請書を作成します。このとき、新しい会社名での印鑑も作成します。
3.法務局への届け出
株主総会での特別決議の日の翌日から2週間以内に、本社の所在地を管轄する法務局に下記の5点をそろえて会社名の変更登記をします。また、社名変更の登記には登録免許税3万円が必要です。
- 新社名の印鑑届書
- 代表者の印鑑証明書
- 登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
◆変更登記後に手続きが必要な機関
・税務署
納税地を管轄する税務署に「異動事項に関する届出」を提出します。
・都道府県税事務所
地方税に関する手続きとして、各都道府県税事務所に法人異動届を提出します。様式や期限は各税事務所によって異なります。
・市町村
都道府県税事務所と同じく地方税に関する手続きとして、市町村に法人異動届を提出します。
・労働基準監督署
労災保険に関する手続きとして、労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出します。提出期限は社名変更の事実が発生した翌日から10日以内です。オンライン申請も可能です。
・年金事務所
社会保険料に関する手続きとして、「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出します。提出期限は社名変更の事実の発生から5日以内です。オンライン申請も可能です。
・ハローワーク
雇用保険に関する手続きとして、ハローワークに「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。労働基準監督署で交付される「労働保険名称、所在地等変更届の事業主控」が必要なため、先に手続きを済ませておきましょう。提出期限は社名変更があった日の翌日から起算して10日以内です。
◆その他、名義変更の届け出が必要な機関
- 金融機関
- 保険会社
- 不動産管理会社
- 各種公共料金
- 社有車がある場合は運輸支局
- 各種許認可を受けている行政機関
◆届け出を怠った(期日を過ぎた)場合のペナルティについて
・変更登記
法務局に対して、2週間以内の変更登記の申請を怠った場合は、裁判所から代表者個人に対して、100万円以下の過料が課せられる可能性があります(会社法976条1号)。
・許認可の名義変更
許認可の種類によっては、名義変更の届け出を怠った場合、始末書の提出が必要になる可能性があります。
社名変更における注意点
◆顧客、提携先への周知
社名変更を行う場合、顧客や仕入れ業者などの関係者に迅速に周知する必要があります。かつては郵送での通知が一般的でしたが、近年はメールで通知することもあります。BCCで大量に一斉送信すると、プロバイダやキャリアからブロックされるケースがあるため、メールを送る際、確実に知らせたい相手には、手間はかかりますが1件ずつ送る方がベターです。
◆ウェブサイトやロゴの変更
社名変更に伴って、自社ウェブサイトの社名表示やURL、社名ロゴの刷新などが必要になります。社名変更から時間を開けずに対応しましょう。
◆届け出は抜け漏れのないように
社名変更の手続きに関わる機関やそこでの手続き方法、提出期限は様々です。可能な限り事前に確認し、抜け漏れのないように注意しましょう。また、変更登記後の登記簿謄本は各所での手続きで求められるため、原本が必要なのか、またはコピーで良いのかなどを把握し、過不足のないよう準備しておきましょう。
社名は企業のイメージを決定する重要な要素です。社内で慎重に協議し、変更が決まったら、余裕を持って準備や手続きを行いましょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年5月時点のものです。
<取材先>
行政書士法人GOAL 代表 石下貴大さん
2014年、行政書士法人GOALを設立。行政書士としての業務に留まらず、会社設立や一般社団設立支援、それに伴うコンサルティングを得意とする。行政書士向け実務講習の場である「行政書士の学校」の校長を務めるほか、補助金助成金の検索&マッチングサイト「みんなの助成金」の運営や電子契約書事業にも取り組む。
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト