採用後にミスマッチが起きるワケ
厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」によると、新卒入社で3年以内に離職した人は大卒で32%、高卒では39.2%となっています。中途採用のケースも併せれば、多くの人材が何らかの理由で早期離職していることがうかがえます。
離職理由は人それぞれですが、企業側とのミスマッチが根底にある場合も少なくありません。食い違いが起こる理由としては、次のようなことが考えられます。
◆入社前には良い面しか見えていない
企業側は「入社してほしい」という思いから自社の魅力ばかりを伝えたり、求職者も内定を獲得するために良い条件だけを見て応募を決めたりすると、入社後の離職につながりやすくなります。
◆明確な採用基準がなく、経歴や学歴、成果だけを見て採用した
どんなに優秀な人材でも、会社によって合う、合わないは必ずあります。個々のパーソナリティよりも経歴ばかりを重視して採用した場合、経営理念や風土に合わなかったり、能力を十分に発揮できなかったりする可能性があります。
◆入社後のフォローがない
どんなに選考を重ねても、実際に働き始めてみないとわからない部分は必ずあります。しかし、入社以降も人事とコミュニケーションを取ることは可能です。それにもかかわらず、入社したら一切のフォローがなく、相談しづらい環境では長く勤めることが難しく感じてしまうでしょう。
適切な人材を探すためにできること
企業が適切な人材を獲得するためには、募集や選考の段階からミスマッチをなくすように働きかけることが重要です。
◆採用基準を明確にして採用戦略を立てる
募集を始める前に、どんな人材がいつまでに、何人程度必要なのかを明確にして、採用戦略を立てましょう。それにより、求める人材に焦点を絞ってアプローチできるようになります。
◆ターゲットに届くような募集をかける
業種や職種、会社の風土によって、採用したい人物像は異なります。ターゲットに合わせて求人媒体や採用手段を選定することがマッチング度を高めるためには重要です。
◆SNSで発信する
自社を知ってもらう手段の一つとして、SNSの活用も有効です。採用情報を発信するだけでなく、投稿を通して会社の風土や業務内容を知ってもらったり、求職者からの質問に答えたり、気軽なコミュニケーションを図るなどの使い方も可能でしょう。そうすることによって、自社の考えに共感した人材からの募集が期待できます。
◆面接では会社のデメリットもしっかり伝える
あらかじめデメリットや課題など自社のネガティブな面もきちんと伝え、入社後のギャップを少しでも減らしましょう。ただし悪い部分だけを伝えるとモチベーションを下げてしまうので、報酬や先輩社員の活躍など、メリットと合わせて伝える工夫も必要です。
◆面接では応募者の考え方や価値観を引き出す質問を
能力やスキル面では求めている人材に合致するとしても、会社の風土や経営理念にそぐわなければ、今後一緒に仕事をしていく上でズレが生じる恐れもあります。面接では応募者の考え方や仕事に対する価値観を引き出すような質問を通して、自社に合う人材かどうかも見極めましょう。
人材探しを行う上では、下準備が何より大切
漠然と“良い人材”を探すだけでは、なかなか理想の出会いは訪れないものです。どんな人材が必要なのか、どのようなタイプなら能力を発揮できるかなど、募集をかける前に具体的な人物像を描くことが自社にとって本当に“良い人材”と巡り合える確率を高めるコツです。やみくもに応募数を増やすだけでは、採用の手間が増えるだけです。目的を持った採用活動が、無駄のない人材探しにつながります。
参考:
厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00002.html