試用期間とは?
試用期間とは、採用した人材が、勤務態度や能力、スキルなど、自社の従業員としての適性を持っているかどうかについて、企業が評価判断するために設ける期間のことを言います。
人材を採用する際は、面接や適性検査などを通して自社に適した人材を選んでいきますが、それだけで従業員の適性を正確に見極めるのは難しいというのが実情です。そのため、採用後に一定期間を試用期間として設定し、実際に仕事をしている様子を見て適性を評価することができます。
法的な試用期間の設置義務はなく、設けるかどうかは会社や採用の方針にあわせて決めることができます。また、期間について明確な定めはありませんが、1カ月〜6カ月に設定するケースが一般的です。
試用期間中に雇用契約を終了できる? 解雇予告はいつまでにすべきか
試用期間は法律上「解約権留保付雇用契約」にあたります。長期雇用を前提とした雇用契約はスタートしているものの、試用期間中は解約する権利を企業が持っているという状態です。そのため、試用期間中であれば、解雇を認められやすいという傾向はあります。
試用期間中に雇用契約を終了する場合、雇用を開始して14日を経過した後に解雇するのであれば、通常の「解雇」と同じ扱いになります。試用期間満了後に雇用契約を終了する場合も同様です。そのため通常の解雇手順に従って、少なくとも30日前に「解雇予告」をする必要があります。
もしも、30日前に解雇予告をしなかった場合は、解雇予告手当を支払う必要が生じます。例えば、告知が解雇の20日前になってしまった場合は、10日分の平均賃金を解雇予告手当として企業は負担することになります。
試用期間での解雇によるトラブルを防ぐには
◆雇用契約時に試用期間の内容を明確に
まずは、採用を決定して雇用契約を行う段階で、試用期間についてしっかりと説明しておくことが大切です。周りに試用期間で解雇された人がいない場合は、試用期間は“あってないようなもの”という認識を持ってしまっている従業員もいます。試用期間がいつまでか、どのような場合に本採用に進まない場合があるのかなどを採用した従業員に共有しておくようにしましょう。
◆適切な指導を行い、改善を促す
試用期間で雇用契約を終了する場合、通常の解雇より認められやすくはなりますが、客観的に合理的な理由であり、社会通念上相当とされる場合に認められる、という点は通常の解雇と同じです。以下のような場合には、試用期間中の解雇として認められやすい傾向があります。
- 出勤不良:出勤率が悪い、無断欠勤や遅刻を繰り返す場合
- 勤務態度の悪さ:上司の指示に従わない、協調性に重大な問題があるような場合
- 経歴詐称:職歴や学歴、資格やスキルなどの重大な詐称があった場合
ただし、上記のような状況が生じたからといって、自由に企業側が解雇をできるわけではありません。安易に解雇をすると、後々不当解雇だと訴えられ、慰謝料などの請求をされるケースもあります。
出勤不良や勤務態度に問題がある場合は、従業員に対して適切な指導をしたり、改善を促したり、また、別の業務を担当させるなど、その従業員が活躍できるように企業側が働きかける必要があります。また、やむを得ず解雇する場合も、従業員の言い分を聞く面談なども適宜行い、可能な限り納得してもらったうえで解雇することも大切です。
◆感情的にならず、冷静に対応する
指導や面談時に、人格を否定するような言葉を用いたり、罵詈雑言を浴びせたりするなど、感情的なコミュニケーションを行うと、後々問題になる可能性もあります。淡々と冷静な態度で対応をするように心がけることが大切です。
試用期間で雇用契約を終了する際の手続きは?
試用期間の途中で雇用契約を終了する場合でも、原則として通常の解雇と同様の手続きが必要になります。
離職証明書などのハローワークへの手続き、健康保険・厚生年金の手続き、源泉徴収票の交付、住民税の特別徴収に関する手続きなど、多岐にわたります。試用期間だからといっても手続きは変わらないので、作業負荷を減らすためにも、採用ミスマッチを起こさないようにすることが最善の策となるでしょう。
※記事内で取り上げた法令は2022年2月時点のものです。
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:武田明子
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト