高度人材とは
外国人が日本に滞在するには「在留資格」の取得が必須です。働くことを目的とした在留資格は通称「就労ビザ」と呼ばれています。さらに、その中でも就労系在留資格の一つである「高度専門職」のビザを取得した外国人を「高度人材」と言います。
「高度専門職」では、スキルや経験に応じて評価する「ポイント制」を採用しています。「高度専門職1号」からスタートし、1号のポイントを維持したうえで3年間在留し、一定の要件を満たすことで「高度専門職2号」に移行が可能です。「2号」は「1号」に比べ、在留期間や活動内容の優遇が大きくなります。
「高度専門職1号」の活動内容は、「イ」「ロ」「ハ」の3種類に分けられています。
- 「イ」
高度学術研究活動や日本での研究、研究の指導、教育 - 「ロ」
高度専門・技術活動、自然科学、人文科学の分野での活動 - 「ハ」
高度経営管理・活動、事業経営または管理業務
「高度専門職2号」の場合、活動内容の区別が設けられていないため、仕事の幅がさらに広がります。
高度人材の優遇措置とは
日本では海外から優秀な外国人材を招くため、多くの優遇措置を設けています。高度人材の優遇措置として、主に以下の5つがあります。
◆在留資格の審査期間が短縮される
外国人が日本の在留資格を得るためには、事前に申請を行い、審査に通らなければなりません。申請には3種類あります。外国人が日本に移住するための「在留資格認定証明書交付申請(認定申請)」、国内の外国人留学生などが就労ビザに変更するための「変更申請」、そして在留期間を更新するための「更新申請」です。
これらの申請に対する審査は、一般的な就労ビザの場合、認定申請で2~3カ月、変更申請で1~2カ月ほどの期間が必要です。しかし、高度人材の場合は認定申請で10日以内、変更申請で5日以内と大幅に短縮されます。そのため、通常よりもスピーディに手続きを行えます。
◆「5年」の在留期間が与えられる
一般的な就労ビザでは「1年」「3年」「5年」の中から、いずれかの在留期間が与えられます。年数は、採用する企業の規模や安定性、本人の今までの在留状況を総合的に判断され決定します。しかし、高度人材は最初から最長の「5年」という在留期間が与えられます。
◆「永住権」が取得しやすくなる
外国人が日本に無期限で在留するためには「永住権」を得なければなりません。しかし、永住権の申請には、日本での在留期間が「10年以上」という要件があります。ただし、高度人材の場合、ポイントが70点以上だと在留期間が「3年」、80点以上だと「1年」で申請が可能です。最大で9年も在留期間を短縮できるのは、大きなポイントでしょう。
◆親や家事使用人の帯同が認められる
日本で働くにあたって両親と一緒に移住したい場合、高度人材以外では両親を呼ぶための在留資格はありません(ただし例外的に認められる場合もあり)。また、母国で家事使用人などを雇っていた場合も同様です。ただし、高度人材に限っては一定以上の基準を満たすことで、どちらの在留も認められます。
◆配偶者の就労も優遇される
通常、就労資格を取得するには学歴や職歴など、一定の要件が定められています。しかし、高度人材の配偶者であれば、要件を満たさずとも就労が可能です。
これらの優遇措置は、企業側にとってもメリットがあります。たとえば、高度人材はビザの審査期間が短く許可率も高いため、入社日を早めることができます。また、在留期間が長いことも、長期で働いてもらいやすくなるというメリットもあるでしょう。
高度人材は企業にとって魅力的な存在
高度人材の優遇措置は、日本で働く外国人にとって魅力です。在留にあたって制限が少ない高度人材を採用することは、企業にもメリットが多いでしょう。今後、新たな人材を増やしたいと考えている企業は、高度人材の採用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
<取材先>
行政書士法人Climb・代表社員 森山敬さん
1982年、神奈川県川崎市出身。大学卒業後、民間企業でエンジニア、SV、法務を経験したのち2011年5月に行政書士として独立開業。開業当時から一貫して外国人の在留資格案件を専門とし、年間で約1,000件の在留資格申請をする。著書に「外国人観光客ビジネスがよ~くわかる本」がある。
TEXT:稲垣恵美
EDITING:Indeed Japan + 成瀬瑛理子 + ノオト