社員寮のメリットとデメリット 導入に向いている企業とは

社員寮でくつろいでいる社員のイメージ


安い費用で住むことができる社員寮は、従業員にとって大きなメリットがありますが、企業にとっても様々なプラスの効果があります。全国500棟以上の学生寮・社会人寮を運営する共立メンテナンス・レジデンス事業支援部の川野太郎さんに、企業が社員寮を導入することのメリットやデメリット、また社員寮がもたらす効果や注意点についてお話を聞きました。

 
 

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自社直営、アウトソーシングなど様々な運営形態


――社員寮にはどのようなタイプがありますか? また、選ぶ上でのポイントがあれば教えてください。
 
社員寮の形態は、一般的に独身寮のほか単身赴任寮、家族寮、男女別の寮などがあります。まずはその区分けを検討した上で、社員寮の建物を自社で所有するのか、賃貸物件を借りるのか、さらに運営を自社で行うのか、管理会社などに委託するのかなどを検討します。どのタイプを選ぶかは、企業の財政状況や従業員の年齢構成、男女比などを勘案して総合的に判断するのが良いでしょう。
 
――寮の間取りにはどんなものがありますか。
 
大別すると、一般的なワンルームマンションのように各自の生活スペースが完全に分かれている寮と、それぞれの個室とは別で食堂や浴場、洗濯場などの共用スペースが設けられた集合寮があります。
 
集合寮の場合は、食堂の運営スタッフなどを置く場合が多いようです。生活面のサポートができるため、従業員の健康維持につながります。一方で、会社の人とオフの時間まで関わりたくない社員が多い場合には、各部屋に台所などの設備も付いている寮が向いているでしょう。
 
――社員寮を運営する企業の割合はどのように変化していますか?
 
当社の調査では、2000年~2010年ごろまでは社員寮を手放す企業が増え、減少傾向にあったと感じています。しかしその後、働き方改革や業務の効率化が進みました。社員同士のコミュニケーションが減っていくことを危惧した経営者に社員寮を導入する意識が高まり、社員寮が増加傾向にあったのだと感じています。
 
しかし、コロナ禍になり集団生活が難しい状況になってからは、増加傾向は一旦落ち着いているようです。ただ、当社の寮運営においても感染症対策を徹底することでクラスターの発生を抑えることはできていますし、知り合い同士が身近で生活していることで体調が悪い場合の差し入れや、悪化したときに病院に連絡する、救急車を呼ぶなどのサポートもできます。コロナ禍による精神的な孤立を防ぐことにもつながるでしょう。感染症に関して、集団生活は必ずしもマイナスの面ばかりではなく、メリットも大きいと感じているところです。

 
 

会社への帰属意識が生まれ、離職率低下につながる


――社員寮を用意するメリットについて、どのように感じていますか?
 
メリットは大きく分けて3つあります。一つ目は、会社への帰属意識が高まることです。会社が用意した施設や設備を使いながら、同僚と過ごすことによって愛社精神が育まれます。また、仕事に悩んだり、落ち込んだりしたときに寮の仲間に話を聞いてもらって立ち直ることができたという話もよく聞きます。仲間との結束が強まって、より一層会社への帰属意識が高まるようです。
 
二つ目は、福利厚生が充実することで、離職率が低下したり採用の大きな強みになったりする点です。従業員が自分で賃貸物件を借りる場合に比べ、寮費は一般的に安く設定されます。入寮者は「会社に優遇されている」と感じ、そうした心理が離職率を下げることにつながります。採用についても、遠方から入社する場合に寮が完備されていると、防犯面での不安軽減や家探しの負担軽減などができるため、応募者本人や保護者も安心できます。
 
そして三つ目が、従業員の成長を促せる点です。これは寮によって差があるかもしれませんが、寮長がいる場合は施設のルールや寮長からの指導により、あいさつや集団ルールの遵守など、規律のある生活を求められます。また、おのずと先輩や仲間とコミュニケーションを取る機会が生まれて様々なことを学び、人間的に成長できるというメリットもあると考えています。
 
――では、会社が社員寮を用意するデメリットはありますか?
 
社有型の寮を持っている場合には、コストがかかるため、財政面でのリスクを抱えることになります。物件が老朽化すると入寮希望者が減る可能性があるので、適宜リフォームや建て替えが必要です。これは企業にとって大きな負担になるでしょう。
 
また、オフの時間まで会社の人たちと会いたくないと考える人もいます。そうした抵抗感を持つ従業員が多い組織は、社員寮を持つメリットが少ないかもしれません。
 
ただ、こうしたデメリットは、専門の業者に寮の管理・運営をアウトソーシングすることでクリアできる場合もあります。様々な選択肢があるので、メリットとデメリットを照らし合わせて自社に合うスタイルを検討するのがおすすめです。

 
 

体力が必要な職種や採用に悩む企業に


――社員寮を持った方がよいと考えられる企業の職種や条件はありますか。
 
当社が運営する社員寮の事例を挙げると、基礎体力が求められる建設系の会社が多く利用しています。現場で作業をする従業員が入寮するケースです。大浴場や温かい食事が用意されている寮では、力仕事で汗をかいた後、まっすぐに寮に帰ってお風呂に入り、きちんと温かい食事を摂ることができるので生活のリズムが整います。従業員の健康増進によって、日中の作業効率も上がるというメリットが生まれています。
 
他にも、社員寮を勤務地の近くに用意すれば通勤時間が短くなります。新しい環境で精神的負担が大きくなりがちな新入社員でも、従業員の生活時間に余裕が生まれます。また、社によっては災害など緊急時のBCP(事業継続計画)対策として社員寮を確保する企業もあります。
 
都心の会社が地方の人の採用を推し進めたい企業の場合には、寮があることが従業員の家族の安心感につながり、アピールポイントになります。人材確保という視点から社員寮の導入を考えるのも一つの考え方ではないでしょうか。
 
――社員寮を準備するにあたって、設備の面で会社はどこまで準備しておくべきでしょうか?
 
当社の場合は、各部屋に生活に必要な家具一式やエアコン、Wi-Fiなどを完備しています。一式そろっていれば、入寮者の負担も少なく、引っ越しも楽になるでしょう。企業側にとっても、遠方の支社からの長期出張者を社員寮の空き部屋に受け入れることが可能になり、その部分のコスト削減にもつながるので、ある程度の家具などをそろえておくことをおすすめします。

 
 
 

<取材先>
共立メンテナンス レジデンス事業支援部 川野太郎さん
 
1979年創業。創業時より社員寮や学生寮の運営を手掛け、現在は各種コンセプト寮など幅広いスタイルにも対応し、全国に500棟以上を展開。自社の管理栄養士監修のメニューを全国の寮で提供するなど、長年のノウハウを生かしながら各企業の社員寮の運営を担っている。
 
TEXT:岡崎彩子
EDITING:Indeed Japan + 笹田理恵 + ノオト

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