慶弔休暇とはどのような制度か
「慶弔休暇」とは、会社の福利厚生の一環として、喜ばしく祝うべき出来事である「慶事」と、お悔やみごとや不幸な出来事である「弔事」があったときにそれぞれ休暇が取れる制度です。法律で義務付けられている制度ではないため、必ずしも福利厚生として取り入れる必要はないものの、多くの会社で導入されています。
会社で慶弔休暇を設ける場合は就業規則として定め、適応範囲や日数、有給か無給かなどの詳細を設定する必要があります。
また、会社によっては弔時のみ休暇が取得できる「忌引き休暇」を設けている場合もあります。
慶弔休暇を設定する際に決めること
慶弔休暇は、前述の通り「慶事」と「弔事」の際の休暇を含みます。ここでは、結婚や出産などの慶事を例に、慶弔休暇の設定例を説明します。
◆休暇の適用範囲と日数を決める
慶弔休暇制度を設定する場合は、まず休暇を取得できる適用範囲と日数を決めます。
適応範囲は会社によって異なりますが、慶事であれば主に従業員本人もしくは配偶者、その子どもの結婚や出産が対象になります。
・会社が定める慶弔休暇の一例(慶事の場合)
- 本人が結婚するとき:5日以内
- 子が結婚するとき:3日以内
- 配偶者が出産するとき:2日以内
- その他会社が必要と認めた場合:認めた日数
慶弔休暇で土日などの公休日を挟む場合は、以下の2通りのパターンがあります。会社の規定によって異なります。
- 公休日を除いた日数が休暇と認められる場合
- 公休日も慶弔休暇の日数に含められる場合
2の場合は、就業規則の日数に「連続7日以内」などと記します。
◆有給か無給かをあらかじめ定める
慶弔休暇を有給扱いとするか無給扱いとするかは会社が定めるため、各社の就業規則によって異なります。対応は、一般的に次のような事例があります。
- 年次有給休暇とは別の特別休暇として設定する。通常出勤として扱い、賃金を支払う。(有給)
- 通常出勤として扱うが、賃金は支払わない。(無給)
- 欠勤日として扱い、年次有給休暇を充当することを推奨する。(有給)
新婚旅行などで長期休暇が必要な場合は、従業員の年次有給休暇と組み合わせて慶弔休暇を取得することもできます。いずれのケースも就業規則で設定し、あらかじめ従業員に周知しておくことが大切です。
◆慶弔に際しての主な給付金
福利厚生の一環として、慶弔給付金(慶弔見舞金)を設けることもできます。慶事の際に支給される給付金には次のような種類があります。
- 結婚給付金(従業員本人が結婚した際に支給) 5,000円~5万円
- 出産給付金(従業員本人または配偶者が出産した際に支給)1万円~3万円
金額はあくまでも相場としての一例であり、会社や従業員の勤続年数によって異なります。
◆雇用形態に関わらず、慶弔休暇を設定する
慶弔休暇は雇用形態にかかわらず、アルバイトやパート、契約社員などに対しても原則として正社員と同様に付与する必要があります。これは、2020年4月より「同一労働同一賃金制度」が導入され、厚生労働省が示したガイドラインで次のように定めているからです。
“短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない”
ただし、必ずしも労働時間が異なる従業員に同一の条件で休暇を認める必要はありません。同ガイドラインでも相違を設ける場合に問題とならない旨が例とともに示されています。
同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)をもとに表を作成
慶弔休暇、こんなときどうする?
◆証明書の提出は必須にすべき?
慶弔休暇を申請する際は、証明書の提出を義務づけている会社と、不要としている会社があります。慶弔休暇の際は証明書の提出は不要とし、金銭が支給される結婚給付金などの祝い金の申請の際には、結婚給付金の場合は住民票の写し、出産給付金の場合は母子手帳の写しなどを証明書類として提出してもらうケースもあります。
◆従業員の個人情報を扱う上での注意点
従業員が提出した慶弔休暇や給付金の申請書及び証明書類は個人情報となるため、鍵付きのロッカーに保存するなど取り扱いには慎重を期す必要があります。
また、ほかの従業員への周知に関して、業務連絡として本人が休暇を取得する旨を伝えることは必要ですが、詳細は個人情報にあたります。第三者から社内に情報が漏れるとトラブルにつながる可能性もあるため、申請を受け付ける際に、情報の共有について本人の意思を確認することがベターです。
※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト