忌引き休暇とは? 就業規則で定める内容や労務上の手続きを解説社内制度の基礎知識

喪服を着た女性の手元の写真


従業員の身内に不幸があったとき、会社で休暇を申請できる「忌引き(きびき)休暇」。忌引き休暇とはどのような休暇なのかを解説します。今回は、人事担当が知っておきたい社内制度のあり方や労務上の手続きについて、寺島戦略社会保険労務士事務所代表で社会保険労務士の寺島有紀さんに伺いました。

 
 

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忌引き休暇とは?


忌引き休暇とは、従業員の親族が亡くなった際、社員が葬儀や通夜に出席するために取得できる休暇のことです。法律で義務付けられている休暇制度ではありませんが、多くの会社で設けられています。
 
また「忌引き休暇」として明示していなくても、喜ばしく祝うべき出来事である「慶事」、お悔やみごとや不幸な出来事である「弔事」があったときにそれぞれ休暇が取れる「慶弔(けいちょう)休暇」として制度を整えていることもあります。

 
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社内でどんな制度があり得るか


忌引き休暇の細かいルールや条件は各社が決めることができるため、会社によって異なります。たとえば、休暇を取得できる適用範囲をどうするのか、有給と無給どちらの扱いになるのか、どれだけの日数が取得できるのかなどを決めます。これらは就業規則として定め、詳細を設定する必要があります。

 
 

◆休暇の適用範囲と日数を決める


忌引き休暇を設定する場合は、まず休暇を取得できる適用範囲と日数を決めます。適用範囲となるのは従業員本人の二親等内であることが多く、近い親族であるほど長い日数の休暇を取得できるのが一般的です。

 

  • 会社が定める忌引き休暇の一例(本人から見た続柄)
  • 配偶者:7日以内
  • 父母:5日以内
  • 子:5日以内
  • 配偶者の父母:3日以内
  • 祖父母:3日以内
  • 兄弟(姉妹):3日以内
  • 孫:2日以内
  • その他会社が必要と認めた場合:認めた日数


忌引き休暇で土日などの公休日を挟む場合は、会社の規定により異なりますが以下の2通りのパターンがあります。

 

  1. 公休日を除いた日数が休暇と認められる場合
  2. 公休日も忌引き休暇の日数に含められる場合


2の場合は、就業規則に「連続7日以内」などと記します。

 
 

◆有給か無給かを定める


忌引き休暇を有給扱いとするか無給扱いとするかは会社が定めることができるので、各社の就業規則によって異なります。忌引き休暇の対応について、一般的に次のような事例があります。

 

  1. 年次有給休暇とは別の特別休暇として設定する。通常出勤として扱い、賃金を支払う。(有給)
  2. 通常出勤として扱うが、賃金は支払わない。(無給)
  3. 欠勤日として扱い、年次有給休暇を充当することを推奨する。(有給)


いずれにせよ、就業規則であらかじめ設定し、全社で周知しておくことが重要となります。

 
 

◆弔事の際の給付金


慶事や弔事の際に、祝い金や見舞金として「慶弔給付金」を設けることもできます。
弔事の際の給付金としては、従業員本人や、従業員の身内が亡くなったときに支給される「死亡弔慰金」があります。相場は1万円から10万円程度で、会社や勤続年数によって異なります。

 
 

◆雇用形態に関わらず忌引き休暇の設定は必要


忌引き休暇は雇用形態にかかわらず、アルバイトやパート、契約社員などに対しても原則として正社員と同様に付与する必要があります。これは、2020年4月より「同一労働同一賃金制度」が導入され、厚生労働省が示したガイドラインで次のように定めているからです。

 

“短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない”


そのため、忌引き休暇を正社員のみとしていた企業は制度変更を行う必要があります。ただし、必ずしも労働時間が異なる従業員に同一の条件で休暇を認める必要はないため、同ガイドラインでも相違を設ける場合に問題とならない旨が例とともに示されています。

 

短時間労働者A  勤務日の設定/通常の労働者と同様 慶弔休暇の付与(通常の労働者との比較)/同様の付与 短時間労働者B 勤務日の設定/週2日勤務 慶弔休暇の付与(通常の労働者との比較)/勤務日の振替が基本 振替困難な場合のみ慶弔休暇を付与同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)をもとに表を作成

 
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忌引き休暇、こんなときどうする?

 
 

◆社員の都合で規定日数より休暇が必要な場合


葬儀会場が海外など遠方であったり、悲しみが大きく故人を悼む時間が必要だったりと、本人から会社が規定した忌引き休暇の日数よりも多く休暇を申請したいと希望があった場合は、対応を決める必要があります。
 
会社で定めた忌引き休暇とは別に有給休暇を取得してもらったり、無給扱いにして休暇を認めたりと、本人と相談して対応を決めることが望ましいでしょう。

 
 

◆社内に規定はないが忌引き休暇の希望があった場合


社内に忌引き休暇制度がない状態で、従業員から忌引きをしたいという申し出があった場合は、応じなくても法的には問題はありません。
 
ただ、会社で忌引き休暇制度がない場合、今後も同様のケースが生じることが想定できます。従業員と良好な人間関係を築き、継続させていくことは、社員の働く意欲にもつながり、結果会社にとっても良い環境を生み出します。この場合は特別休暇を認めたり、年次有給休暇の消化を促したりするなどの対応も考えられます。
 
いざというときに対応に困る前に、休暇制度について見直してみることも重要といえるでしょう。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
 
<取材先>
寺島戦略社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士 寺島有紀さん
 
TEXT:宮永加奈子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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