生理休暇とは? 労務的基礎知識と配慮すべきポイント

労働基準法で必要に応じた取得が定められている生理休暇。しかし、厚生労働省の調べによると、生理休暇を取得する女性従業員の割合は年々減少し、1%を割っているというデータもあります。
 
取得率が低い理由の一つとして挙げられるのが、企業側の周知不足です。そもそも生理休暇とはどのような制度なのでしょうか? 生理休暇の条件や労務的基礎知識、配慮すべきポイントについて、うたしろFP社労士事務所の社会保険労務士、歌代将也さんが解説します。

 

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生理休暇とは


労働基準法第68条により、「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と定められています。これは女性の妊娠・出産を可能とする生理的機能を保護するために定められた制度です。
 
必ずしも「生理休暇」という名称である必要はありませんが、生理日の就業が著しく困難な女性従業員が休暇を請求したときは、いずれの企業も、その申し出を断ることはできません。
 
対象となる女性従業員に請求されたにもかかわらず生理休暇を付与しなかった場合の罰則規定もあり、具体的には30万円以下の罰金を科されるおそれがあります(労基法120条1項)。
 
厚生労働省の2015年度「雇用均等基本調査」によると、女性労働者がいる事業所のうち生理休暇の請求者がいた事業所の割合は「2.2%」(2007年度5.4%)。女性労働者のうち生理休暇を請求した者の割合は「0.9%」です。この結果から、ほとんどの企業において生理休暇制度が機能していない現状がうかがわれます。

 
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生理休暇の労務Q&A


企業側は生理休暇をどのように就業規則に定め、対象となる女性従業員が請求した場合に備えればいいのでしょうか。よくある疑問に回答します。
 
Q1.生理休暇は「有給」にすべき?

A1.生理休暇中の賃金については、労働基準法で定められておらず、無給としても違法にはなりません。有給扱いにするかどうかは、労使間で取り決められます。
 
なお、厚生労働省の2015年度「雇用均等基本調査」によると、生理休暇中の賃金を「有給」とする事業所の割合は25.5%(2007年度42.8%)となっています。現状では「無給」として扱う企業のほうが多いようです。

 

Q2.「半日単位で取得したい」と従業員から要望があった場合の対応は? 

A2.生理休暇は著しく体調を崩している時間に休ませるという考え方のため、対象者から「半日単位」「時間単位」で請求された場合には、その要望に応えなければなりません。仮に、就業規則で、半休や時間単位での休暇制度について定めのない企業であっても、半休や時間単位での取得を認める必要があります。

 

Q3.生理休暇の取得日数に「上限」を設けてもいい?

A3.生理休暇の取得日数を就業規則で制限することはできません。生理期間や苦痛の程度には個人差があり、一般的な基準を設けられないためです。ただし、「有給とするのは月〇日まで」「月〇日を超過する場合は無給とする」というように有給扱いにする日数を定めることはできます。


Q4.生理休暇を「正社員のみ」に付与できる?

A4.生理休暇を正社員のみに限定することは労働基準法違反となります。生理休暇は、生理日の就業が著しく困難な女性労働者全員に適用されるものです。雇用形態や役職、年齢、勤続年数などにより、対応を変えることはできません。


Q5.生理休暇の取得が多い社員に対して、医師による診断書を求めてもいい?

A5.生理休暇は、その性質上、当日もしくは後日の申請となります。また、その際には「医師の診断書を求めず、簡単な証明でよしとする」という通達が過去に出ています。本人の負担が大きい申請方法は避けるほうがいいでしょう。

 

Q6. 初の女性社員を雇用し、生理休暇を導入する場合、就業規則で決めておくべきことは?

A6.まずは生理休暇について就業規則に明記します。有給・無給の扱いや、時間単位・半日単位での申請方法などは運用ルールとして決めておくとスムーズです。また、管理職に対して生理休暇の概要を説明し、「生理日の就業が著しく困難な女性従業員の休暇請求を断るのは労基法違反に当たること」や「すべての女性従業員に適用されること」「医師からの診断書を求めるのは適切ではないこと」などの基礎知識を周知しておくといいでしょう。

 
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大切なのは、社員の体調に配慮した職場づくり


2019年4月より、有給休暇の取得が義務化されました。年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者は、そのうち年5日以上を取得する必要があります。有給休暇が余っている社員に対しては、生理休暇よりも先に、有給休暇の取得を促す企業も多いでしょう。
 
生理休暇を積極的にアナウンスし、取得を奨励していくかどうかは企業の判断に委ねられるところです。いずれにしても最も大切なのは、生理にかかわらず「体調不良により就業が困難になった社員が、気軽に休みを申し出られる環境づくり」といえます。
 
生理休暇の名称を「ウェルネス休暇」に変更し、生理だけではなく、更年期による体調不良や不妊治療の通院にまで適用範囲を広げた企業の事例もあります。産業医など専門家のアドバイスを得ながら、社員の健康管理や体調不安に配慮した有給休暇の制度をつくることも一案です。加えて、体調不良時に周囲に気兼ねしすぎることなく、休みを申し出られる風土をつくることが、職場の働きやすさを向上させる意味でも重要だといえるでしょう。

 

※記事内で取り上げた法令は2021年2月時点のものです。


参考:
厚生労働省『平成27年度雇用均等基本調査』
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-27-03.pdf


監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:猪俣奈央子
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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