秋採用とは
新卒を対象とした採用活動は、一般的に春から夏にかけて行われます。一方で、夏までに内定者を確保できなかった、内定辞退者が出た、あるいはより多数・多様な人材を求めるといった理由から9月~12月頃に行う採用活動が「秋採用」と呼ばれています。
秋採用でターゲットとなる学生のタイプ
多くの学生が既に内定を獲得している時期に行う秋採用は、春~夏の採用とはターゲットが異なります。秋に就職活動を行っている学生は、主に次のようなタイプに分けられます。
◆就職以外の進路から方向転換した学生
大学院への進学、起業、家業の継承など就職以外の進路を考えていた学生が、民間就職志望へと方向転換したケースです。
◆公務員志望から方向転換した学生
公務員を目指していたが試験に受からなかった、または将来の展望が変わったなどの理由から、民間就職志望へ切り替えた学生です。
◆部活動などに打ち込んでいた学生
体育会系の部活動などに打ち込んでおり、夏までに就職活動を行っていなかった学生です。
◆海外大学の在学生、卒業生
海外の大学は日本と卒業時期が異なるため、日本の大学生とは異なるタイミングで就職活動を行うことがあります。また、海外の大学を卒業して日本に戻ってきた学生が秋に就職活動をしているケースも考えられます。
◆春~夏に就職が決まらなかった学生
春から夏に就職活動を行っていたものの内定を得られなかった、就職したいと思える企業が見つからなかった、内定を得たが何らかの理由で辞退した学生です。
秋採用を最大限活用するためのポイント
秋採用という機会を最大限に活用するためには、自社にエントリーした学生一人ひとりの「春~夏に就職を決めなかった(決まらなかった)理由」を把握し、それに合ったアプローチを行うことがポイントです。理由の探り方としては「あえて今の時期に就職活動をしているのは、どういった背景があるのですか?」のように面接時に尋ねてみるのがよいでしょう。
何らかの明確な目的意識を持って別の進路から就職活動へ方向転換したタイプの学生には、自身が描いているキャリア、その中で自社に求めていることを具体的に聞き出した上で、自社の理念やカルチャーにフィットするかどうかを判断するのがおすすめです。
春~夏の就職活動がうまくいかなかったという学生には、その原因をどのように分析しているのか、就職活動の経験から何を学んだかなどを尋ねることで、本人が持つポテンシャルが見えてきます。
秋採用のメリット・デメリット
秋採用を行う際に考えられるメリットとデメリットは次の通りです。
◆メリット
- 確固たる目的意識を持っている、人とは違う経験を積んでいるなど、個性ある魅力的な学生と出会える機会となる
- 海外経験があり外国語が堪能な人材を採用できる可能性がある
- 学生にとって現役で就職を決める最後のチャンスであるため、内定辞退率が低いことが期待できる
- 秋採用を行っている企業はまだ多くないため、競争率も春~夏と比べて高くない。特に地方企業や中小企業にとって好機となる
- 春~夏に比べて応募数が少ない傾向にあるため、一人の学生にじっくり時間をかけて選考やフォローがしやすい
◆デメリット
- 前述した通り、秋に就職活動をしている学生は多様な経験や確固たる目的意識を持っていることが多いため、それを生かせる業務でない場合(単純作業が多いなど)はミスマッチとなる可能性もある
- 採用業務を年1回から2回に増やすことで、採用担当者の負担やコストが増える。場合によっては春~夏に内定を出した学生のフォローや翌年の採用活動の準備と並行する必要があり、採用担当者の増員や育成も検討する必要が出てくる
こうしたメリットとデメリットを踏まえ、秋採用という機会を最大限に活用してはいかがでしょうか。
<取材先>
アルドーニ株式会社・代表取締役 永見昌彦さん
外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年携わった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務に携わっている。
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト