採用代行とはどのようなサービスなのか?
採用代行サービスは、最近では「RPO(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)」とも呼ばれ、多くの業者が存在しています。
対応範囲は多岐にわたり、その役割は大きく「アセスメント」と「オペレーション」の2つのジャンルに分類されます。たとえば、面接代行や書類選考代行、あるいはエージェントのデータベースから適した人材を見立てるなどの選考評価は、アセスメントに属します。他方、選考過程で発生する応募者との日程調整、合否連絡といった事務作業や会場設営などは、オペレーションに属します。
一度に多くの人材を採用する大手であれば特に、企業の人事部だけではマンパワーに限りがあり、こうした採用代行サービスが重宝されているのです。
採用代行のメリットとデメリット
企業が面接を行う目的のひとつに、応募書類だけではわからないその人物の人となり、魅力、ポテンシャルを見極めることがあります。しかし大量の応募があった場合、すべての応募者を面接するには膨大な労力と時間が掛かります。
そこで採用代行サービスを活用すれば、その分のリソースを本来のコア業務にまわすことができます。コア業務とは、有望な人材の入社意欲を喚起する動機づけや、最終的な意思決定を指しています。つまり、採用代行事業者によって選定された有力な応募者を、より丁寧に、的確に見極めるリソースが生まれるわけで、これは企業にとって大きなメリットでしょう。
また、人材採用には繁閑差が付き物です。そのため企業としては、採用にあたる人事担当の人材を常時雇用しておくよりも、必要な時期に採用代行サービスを契約するほうが、コスト面でも有利と言えます。
ただしその反面、応募者の側からすれば、相対する面接官がその企業の人間なのか、それとも外部の人間なのか判別がつきにくい点はデメリットでしょう。応募者は面接官を通してその会社の雰囲気を知ろうとするものですから、それが実は採用代行事業者の人間であったとなれば、入社後のミスマッチにつながってしまう可能性はどうしても否めません。
採用代行サービスを上手に活用する秘訣
面接などの採用実務をすべて外部に一任してしまうと、社内に採用ノウハウが蓄積されないことを懸念する人もいるかもしれません。しかし、これは大きな誤解です。なぜなら、人事部の社員に採用業務を委ねた場合こそ、その社員が退職すると、よほど入念な引き継ぎ体制をとらないかぎり、ノウハウの一部を失うことにつながるからです。
しかし、外部の採用代行事業者であれば、クライアント企業の過去の採用活動履歴や人材データなどがすべて機械的に管理され、たとえ担当者が変わったとしても、ナレッジとノウハウは引き継がれます。いわば自社に適した採用ノウハウを外部に保管しているようなもので、社内の人事リソースを最小限に抑えて採用代行サービスに頼る企業が多いのも、こうしたメリットによるものです。
ただし、作業量に応じて料金が発生する従量課金の事業者と取引する場合は、社内で担うべき行程と外部に委ねる行程を明確に切り分けることがコストの面でも重要です。採用代行サービスを有効に活用するためには、そのメリットを正しく認識したうえで、自社にとって最適な体制を吟味することが大切なのです。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト