企業が座談会を行うメリットは?
就活中に実施される座談会は、会社説明会などの催しよりも、就活生と社員がカジュアルに交流できる貴重な機会です。では、なぜ企業は就活生を集めてこのような場を設けるのかといえば、目的は情報発信に他なりません。
とはいえ、採用担当者が自社について一方的に説明するような肩肘張った場ではなく、お互いがざっくばらんに話せる場とすることが大切です。集まった就活生からすれば、その企業に関心を持ち、より詳しい事情や雰囲気を知りたいと思っているから参加しているのであり、座談会はささやかな疑問を解消するまたとないチャンスです。企業側としても、できるだけ気軽なコミュニケーションが取れるムードを演出するべきでしょう。
企業が座談会で発信するべき情報
こうした座談会で、ホームページや会社案内に掲載されているような情報を伝えるのでは意味がありません。座談会を通して就活生に提供できる最大の情報は、現役社員です。どのような人材がどのような思いを持って働いているのか、リアルなサンプルとして見せることで入社意欲を高めてもらうことを意識しましょう。
そのため、必要なのは会社の説明ではなく、座談会に参加したその社員についての説明です。所属部署や年次、普段の仕事内容、そして仕事へのやりがいを伝えることが大切です。
就活生からよく出る質問
座談会の場で就活生からあがる質問内容には、いくつかのパターンが見て取れます。以下はその代表的なものの一部です。
◆入社動機
なぜその会社に入ろうと思ったのか、入社動機は就活生にとって他人事ではない関心事です。そこで先輩社員の入社の決め手を伝えることには、背中を押す意味があるはずです。
◆仕事のやりがい
どのような業務が待ち受けていて、そこにどれほどのやりがいがあるのかは、就活生が最も興味を持つポイントでしょう。参加社員はモチベーションの所在だけでなく、仕事を通してどのような成長が得られるのかを含めて実体験を伝えられれば理想的です。
◆社風
どれだけ会社案内を読み込んだところで、実際の社風や雰囲気、企業文化というのは、入社してみなければわかりません。現役社員の生の声は、就活生にとって貴重な情報となるでしょう。
◆不安要因について
たとえば「この業界はブラック企業が多いと聞いたのですが……」、「給料は年々上がっていますか?」などといった不安要因は、オフィシャルな面接の場では聞きにくいものです。それぞれが抱える不安をひとつひとつ解消することは、入社への意欲に直結するでしょう。
座談会を効果的に運用するコツ
座談会を効果的に実施するためには、どのような社員をセレクトするかが重要です。社内でエースと目される人材や、できるだけ好感度の高い人材を起用することも大切ですが、お互いにとって実のある座談会を目指すなら、就活生との相性を考慮しなければなりません。
たとえば理系の学生たちには理系出身の社員を、語学に長けた学生たちには、国際的な業務を担当する社員を、あるいは体育会系の学生たちには、同じく体育会系でバリバリ働く第一線の社員を当て込むなど、「誰に誰のトークを聞かせるか」という視点を持ってセレクトにあたるべきでしょう。
また、スムーズなコミュニケーションを図るためには、最初に参加者全員に自己紹介を求めたり、事前に質問を募るアンケートシートを用意したりするような工夫も有効です。最初は空気が硬くても、徐々に対話が盛り上がっていくなら、その座談会は成功と言えるでしょう。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:友清哲
EDITING:Indeed Japan + ミノシマタカコ + ノオト