「再雇用制度」の内容やメリット、設定方法を解説 2021年4月に変更点も

話し合う高齢者

超高齢化社会に突入している日本において、高齢者の知識や知恵を活用することはとても大切なこと。その役割を果たすのが、定年を迎えた労働者を継続して雇用できる「再雇用制度」です。
 
「再雇用制度」とは、どのような制度なのでしょうか。メリットや注意点について、堀下社会保険労務士事務所・代表の堀下和紀さんに伺いました。

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「再雇用制度」とは?

「再雇用制度」とは、退職した労働者の希望次第で、企業が新たに労働契約を結ぶ制度のことです。この制度には、2つの種類があります。
 
1つは定年を迎えた従業員を再び雇用する「定年後再雇用制度」、もう1つは「ジョブリターン」や「アルムナイ」など、転職や家庭の事情などで一度離職した人を再雇用する、いわゆる「出戻り」と呼ばれる制度です。
 
とくに、急速に高齢化社会が進んでいる日本において、定年を迎えた世代の活躍の場を広げることは急務といえます。
 
実際に、2013年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が改正されて以降、多くの企業で定年を迎えた高齢者の再雇用が進んでいます。この法律改正によって、実質、定年の年齢を65歳未満にしていた企業は、65歳まで引き上げることが義務づけられました。

◆「高年齢者雇用安定法」第9条(2013年改正)

  1. 65歳までの定年の引き上げ
  2. 65歳までの継続雇用制度の導入
  3. 定年の廃止


そして2021年4月、「高年齢者雇用安定法」は再び改正されます。今回のポイントは以下の点。企業に対して、いずれかの措置を制度化する努力義務を設けるというものですが、「義務」ではなくあくまでも「努力義務」であることも覚えておきましょう。

◆「高年齢者雇用安定法」の改正による努力義務(2021年4月施行)

  1. 70歳までの定年の引き上げ
  2. 70歳までの継続雇用制度の導入
  3. 定年の廃止

 
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雇用内容の設定や福利厚生の有無は?

「高年齢者雇用安定法」によって、企業には前述の義務や努力義務が生じますが、雇用内容に法的な決まりはありません。あくまで企業単位の規定になります。しかし企業全体というよりも、各従業員単位で規定を設ける企業が多いようです。
 
形態や期間など、雇用内容の設定は労働者と話し合って決定するのはもちろんですが、次のような内容が一般的といえるでしょう。

◆再雇用後の一般的な雇用内容

  • 時給制
  • 1年ごとの契約更新
  • 賞与無し
  • 退職金無し
  • 賃金は再雇用前の60%~90%程度


雇用形態が正社員である必要はなく、契約社員、パート・アルバイトなどに変更することが可能です。雇用期間についても法的な決まりはなく、1年ごとに更新の有無を決定するケースや、労働者の年齢や体調を考慮し、6カ月契約を基本とするケースもあります。
 
結果的に、定年前と大きく雇用条件が変わる人もいれば、定年前と変わらぬポジションで同時間労働、同賃金という人もいます。再雇用者の状況や会社の実情に合わせて決めましょう。
 
ちなみに、「同一労働同一賃金」の施行後(中小企業における施行は2021年4月)は、「定年後再雇用制度」で採用した従業員にも、雇用形態の如何を問わず福利厚生は必要になるので注意してください。

 
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「定年後再雇用制度」の目的とメリット

そもそも、2013年に「高年齢者雇用安定法」が改正された背景には、厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことが影響しています。そのため、高齢者が活躍できる環境の整備が急務でした。
 
「定年後再雇用制度」の導入にあたり、「高齢化による労災」や「組織の硬直化」といったリスクを懸念する声も少なくありませんが、高齢者を再雇用するメリットは思いのほか大きいといえます。
 

◆「定年後再雇用制度」のメリット

  • 担当していた顧客をそのまま引き継げるので、顧客を失うリスクを低減できる
  • 長年培ってきたスキルや能力を活かすことができるので、生産性を維持することができる
  • 新たに従業員を雇用しなくてよいので、採用コスト、教育コストを低減することができる


もちろん、同時に若い世代を育てることも必要不可欠です。継続的な企業の成長を考えるならば、高齢者と若い世代それぞれのプラス面をバランスよく取り入れていく採用を目指しましょう。

 

※記事内で取り上げた法令は2020年10月時点のものです。
 
<取材先>
堀下社会保険労務士事務所 代表 堀下和紀さん
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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