「気になったニュース」を聞いてわかること
候補者に対して最近気になっているニュースを尋ねることで、日頃からどういった領域に関心を持っているのか、その関心の幅広さや深さがどれくらいなのかを探ることができます。
特に、マスコミ、広告、コンサルティングといった幅広い業種の顧客と接する業界、ファッション、エンターテインメント、ITなど常に最新のトレンドを押さえている必要がある業界の企業においては、候補者の知的好奇心の度合いや情報収集能力を知る手段として有効と考えられるでしょう。回答によっては、候補者が世の中に対してどのような着眼点を持っているのかなども伺い知ることができるかもしれません。
質問をする際の注意点
ただし、気になったニュースを尋ねる際に強く注意すべき点があります。それはコンプライアンス違反にならないようにすることです。面接において、尊敬する人物、愛読書、購読している新聞といった「思想」に触れる質問はNGとされています。同じように、気になるニュースについて質問をすることも、聞き方によってはコンプライアンス違反になる可能性があるのです。
ポイントは、「思想」に触れないよう質問の仕方に留意することです。気になったニュースを尋ねること自体は、社会情勢についてキャッチアップできているかどうかをチェックする意図であり、思想を聞いているわけではないので問題ありません。しかし「それについてどう思っていますか?」「感想を聞かせてください」まで踏み込むと、思想に触れるためNGとなる可能性が高まるでしょう。
候補者に気になったニュースを答えてもらったら、そこから関心を持ったことや疑問を感じたことをどれくらい調べたのかそのニュースを見た後に新たに始めたことはあるか、などを質問します。つまり「感想」ではなく、「行動」「知識」について掘り下げる質問にシフトすることが、コンプライアンス違反を免れるコツなのです。
また、そもそも自社の業界や分野と無関係のニュース、ビジネスに直結しないニュースについて深掘りすることは、面接評価に役立てることができないばかりでなく、候補者から不信感を持たれる恐れもあるため避けましょう。
面接評価に役立つ答えを引き出すコツ
では、注意点を踏まえた上でどのように質問すれば、面接評価に役立つ答えを引き出すことができるのでしょうか。
コツは「自社の業界や分野に関するニュースに絞って尋ねる」ことです。例えば自動車業界であれば「自動車に関連したニュースで最近気になったものはありますか?」のように質問してみましょう。あるいは、業界を志すなら最低限知っておいてほしいトピックがあれば、それに特化して「〇〇のニュースは知っていますか?」と尋ねることです。
前述したように、ここで感想を尋ねる質問をするとコンプライアンスに抵触する恐れがあります。しかし「そのニュースを踏まえて、この業界は今後どのような方向で発展していくのが望ましいと思いますか?」「当社ができることは何だと思いますか?」のような質問であれば、業務に直結する範疇なので問題ないでしょう。
このように自社や業界に関する質問であれば、コンプライアンス違反になる恐れがなく、なおかつ候補者の業界に関する知識レベル、習熟度、考えの幅広さや深さを伺い知ることができるため、面接の評価にも役立てられます。
<取材先>
人材研究所 代表取締役社長 曽和 利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
TEXT:北村朱里
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子+ ノオト