どんなプログラムを組めばいい? オンラインインターンシップを成功に導く手順とコツ


企業の採用活動において重要なのが、インターンシップです。しかしコロナ禍によって、対面形式でインターンシップを開催することが難しい状況になりました。そこで出てきたのが、「オンラインインターンシップ」という新しい手法です。
 
オンラインインターンシップを成功させ、採用に繋げるためには、どのようなプログラムを組めばいいのでしょうか。オンラインインターンシップを実施するための準備や手順、参加者からの声、注意点などについて、船井総合研究所・タレントディベロップメントセンターの山本翼さんに聞きました。

 
 

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「2段構え」で開催? オンラインインターンシップの実情とプログラム構成


――オンラインインターンシップは、どのような形で実施されているのでしょうか? 日程やプログラムの内容について教えてください。
 
最も多いのは、「1dayオンラインインターンシップ」の形式です。午前中に会社説明およびレクチャー、午後から簡単なワークなど体験プログラム、最後に社員座談会や交流会など、1日に様々なプログラムを体験してもらいます。
 
弊社では6日間のオンラインインターンシップを開催しているのですが、全体の構成は同じです。初日の午前中に会社案内やワークの説明、午後から6日目まではグループワークで参加者自身が事業計画を立て、最後にフィードバックで業務内容への理解を深めてもらいます。
 
――オンラインインターンシップを6日間も実施する企業は、珍しいのではないでしょうか?
 
そうですね。1dayであれば気軽に参加できますが、期間が長くなればなるほどハードルが上がってしまう可能性はあります。一方で企業側としては、ワークの時間を長く取れるため、より深く業務を理解してもらえるメリットがあります。それにより、採用選考時の意欲や事業内容に対する理解度のレベルが変わってくるのです。
 
なかには、1dayの後に3daysでのオンラインインターンシップを実施している企業もありますね。
 
――それは、1dayインターンシップの参加者から絞っていくのでしょうか?
 
1dayの参加者に「次は3daysのオンラインインターンシップもあるので、興味がある人は来てください」と誘導するケースや、「成績優秀者のみ次のステップに進めます」と選抜しているケースがあります。誰でも参加してもらえる1dayプログラムで求職者との接点を増やし、興味がある人には深く業務理解をしてもらう長期間のインターンシップに誘導する、いわば「2段構え」の構成にすれば、その後の採用活動でも確度の高い応募者が集まるでしょう。
 
業務内容にもよりますが、質の高いワークを実施すれば手応えを感じてもらえますし、自社に対する理解度が高まることは間違いありません。
 
そこで重要となるのが、ワークの難易度の調整です。何を体験させて、どういう気づきを感じてもらいたいのか。ヒントを与えすぎると簡単になり、「レベルが低い」と思われる可能性があります。逆にヒントが少ないと、意図しない方向へズレてしまうかもしれないので、実践を重ねて調整していく必要があるでしょう。

 

見本 Funai Soken 1week winternship グループワークの概要 ◆グループワークのテーマについて 本グループテーマは、実際に過去に弊社がご支援させて頂いた企業の実例を元に、内部情報のみ一部デフォルメし、設定しております。 したがって、「実際に船井総研によくご相談いただいている内容を」を、学生の皆さんに考えて頂くものになっています。 ◆グループワークのゴールについて ご相談頂いた企業に対し、『仮に、皆さんのグループでコンサルティングを行うとしたら、どのようなコンサルティングを行うか?』という提案書を作成頂き、船井総研の社長を、相談企業の社長に見立てて、プレゼンテーションを行っていただくことがグループワークのゴールです。 ◆グループワークの進め方について 学生の皆さん自信が「コンサルティングチーム」になって、戦略立案・シナリオ策定・実行試作のスケジュール立案などを行っていただきます。 各グループにコンサルタント社員がアドバイザーとして入りますが、皆さんのチームの「マネージャー」にあたる立ち位置です。上手にアドバイスをもらいながら、学生の皆さんが中心となってワークを進めてください。 Funai Consulting inc 1week Internship▲船井総研で実施したオンラインインターンシップの資料(画像提供:船井総合研究所)


――たとえば、営業職を対象とするオンラインインターンシップなら、営業手法を学ぶワークを中心にすればよいのでしょうか?
 
それもありますが、自社の商品を購入した顧客の声やアンケートを元に「どういうものが好まれているか」「自社の強みとは?」という分析をしてもらうプログラムも考えられます。
 
ワークの内容が営業テクニックに偏ってしまうと、参加者は「どの会社でも同じでは?」、「営業力の強い会社の方がいい」と思ってしまうかもしれません。「営業=きついイメージがあるかもしれないけど、お客さまに喜ばれることがやりがいに繋がるんですよ」といった意識を自然にマインドセットできると理想的でしょう。

 
 

服装はスーツ? 社員同士は仲がいい?……参加者が気にする意外なポイント


――実際に貴社のオンラインインターンシップに参加した学生からは、どんな声が挙がっていますか?
 
グループワークの時間を長くとっているので、「業務内容についてここまで深く理解できたのは初めて」「プロの意見が聞けて、貴重な経験だった」という感想をよくもらいます。
 
――学生からの声で見えてきたことや、注意すべき点があれば教えてください。
 
コンテンツについては、体験型のプログラムを中心として、なるべく若い社員に企画を出してもらうとよいでしょう。学生が楽しいと思える、あるいは今いる社員自身が「やりたいな」と思うような内容にするべきです。
 
内容がつまらないと、学生の間で自社の評判が悪くなっていきます。一度作ったプログラムを使い回すのではなく、参加者の満足度をチェックしながらブラッシュアップしましょう。満足度が上がれば、口コミや紹介で、次年度の参加者増加にも繋がります。「オンラインインターンシップ=商品」と捉え、十分に検討しなければなりません。
 
――その1年だけで考えるのではなく、翌年、翌々年にも繋がるようなインターンシップにする必要がある、と。
 
その通りです。大学の先輩が後輩に広めるケースもありますし、ゼミの教授から「あの企業のインターンシップ、行った方がいいよ」と紹介されて参加した、という声もありました。そういった口コミはどんどん広がっていくので、侮れないですね。
 
――良い評判を広めるためにも、参加者の満足度を確認しながら改善していかなければなりませんね。内容面のほかに学生が気にするポイントはありますか?
 
参加するときの服装を気にする人は多いですね。「服装自由」と伝えていても、実際にはほとんどの学生がリクルートスーツで参加しています。なかには「ずっと自宅なので、スーツに着替えないと気持ちが切り替わらない」という意見もありました。意識を変えるという意味で、あえて服装をスーツに指定するのも方法の一つです。
 
弊社で気づいたのは、服装の変化によって緊張感が変わるということ。最初はみなさん緊張した面持ちですが、「上着を脱いでください」「ネクタイを外していいですよ」と言うと、一気に場が緩むのです。弊社ではそれを「ジャケットソリューション」と呼んでいます(笑)。
 
プレゼンのときは上着を着てもらう、ちょっと緩めたいときは脱いでもらうなどを指示すれば、緊張感のオン・オフをコントロールできるかもしれません。
 
――なるほど。「ジャケットを着る」「脱ぐ」で雰囲気や意識が変わるのは面白いですね。
 
あとは、社員同士が仲良く話しているかどうかを見て、風通しが良い会社なのか判断している学生がいました。
 
自分が客として飲食店に行ったとき、「バックヤードのスタッフ同士が楽しそうに話しているな」「店長の機嫌が悪そうだな」という雰囲気によって、お店に対する印象が変わることがありますよね。オンラインインターンシップも同じだと考えてよいでしょう。
 
弊社のオンラインインターンシップでは、最後に社長が学生のプレゼンに対してコメントを述べます。それに対して私が軽く茶々を入れたり、なるべくフランクに雑談したりすることで、風通しの良さをアピールする工夫をしています。

 

実施されたオンラインインターンシップの様子▲船井総研で実施されたオンラインインターンシップの風景(画像提供:船井総合研究所)

 
 

コロナ禍が落ち着いた後も、オンラインインターンシップは残る


――ここまで挙がった以外に、オンラインインターンシップで「これはやったほうがいい」というポイントはありますか?
 
中小企業であれば、社長も積極的に顔を出し一緒に取り組んでいる姿勢を見せることが、参加者への訴求力に繋がります。「社長と直接話ができるのなら、参加してみよう」と思う学生は少なくありません。
 
会社のビジョンを語りつつ、「ウチに来てほしい」という熱意を伝えられるのは、やはり社長です。オンラインインターンシップでは、社長が一方的に話すより、対話形式のプログラムを組むほうが良いでしょう。
 
――これからオンラインインターンシップの実施を考えている人事・採用担当者に求められる姿勢やマインドは?
 
とりあえずやってみる、それが一番大事です。プログラムの構成やグループワークなど、内容の作りこみについては、できる限り他社の成功事例をモデルにしながら検討してみてください。
 
今後ワクチンが普及し、コロナ禍が落ち着いたとしても、オンラインインターンシップは無くならないと考えています。交通費がかからず、大人数に向けて開催できるメリットを考えると、オンラインインターンシップはある程度、定着するはずです。
 
「今やっておかないと時代遅れになる」という認識を持ち、なるべく早くオンラインインターンシップに取り組むべきではないでしょうか。

 
 
 

<取材先>
船井総合研究所
タレントディベロップメントセンター チーフプロフェッショナル
山本翼さん
 
1992年神戸生まれ。2014年に京都大学総合人間学部を卒業後、株式会社船井総合研究所に新卒で入社。再生エネルギーのコンサルティング部門に配属され、2016年には自身が中心となり、電力自由化ビジネス参入に関する書籍を出版。2019年7月より、船井総合研究所自身の事業戦略を加速するために新設された「タレントディベロップメントセンター」に異動し、採用・育成・配置・評価などの戦略人事を担っている。

船井総合研究所/人材開発コンサルティング(HRD支援部) ホームページ
https://hrd.funaisoken.co.jp/


TEXT:村中貴士
EDITING:Indeed Japan + ノオト

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