障害者雇用助成金の種類と注意点

働く障害者のイメージ

2021年3月1日より、企業に課される障害者の法定雇用率が引き上げられるなど、障害者雇用は一定規模以上の企業にとっては社会的な義務となっています。障害者雇用に当たって支給される障害者雇用助成金には、どのようなものがあるのでしょうか。種類や注意点について、株式会社人材研究所・曽和利光さんに伺います。

求人を掲載

障害者雇用助成金とは

企業には、常用雇用労働者の人数に対し、民間企業で2.3%以上、特殊法人や国・地方公共団体で2.6%の割合で障害者を雇用する義務、法定雇用率が課せられています。
 
障害者雇用助成金とは、事業主や企業が障害者を雇用するにあたって、施設の整備や雇用管理など、何らかの特別な措置が必要となる際に支給されるものです。制度が設けられた当初は障害者の雇用の後押しが主な狙いでしたが、現在は雇用後に障害者が業務にあたれているかなど、障害者の働く権利を守ることにも意識が向けられています。

障害者雇用助成金の種類

障害者雇用助成金は、現在11種類の制度があります。(※2022年12月時点の情報です)

◆障害者雇用給付金制度

障害のある人を雇用するには、障害を取り除くための必要経費が掛かります。雇用していない企業と雇用している企業との経済的負担の調整をすべく、雇用していない企業から徴収した障害者雇用納付金を雇用している企業に障害者雇用調整金として支給する制度です。なお、納付金を納める義務が発生するのは、常用雇用の従業員が100人を超える企業です。

◆在宅就業障害者特例 調整金・報奨金

自社との雇用関係のない在宅勤務の障害者に対して直接、または在宅就労支援団体を通して年間35万円以上の仕事を発注した場合に調整金・報奨金を支給する制度です。制度を利用するには、企業が常に法定雇用率を超えた障害者社員を雇用しており、かつ障害者雇用調整金または報奨金の申告をしている必要があります。

◆障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置助成金

保健施設・給食施設・教養文化施設など、障害者の雇用に際して、作業施設や福祉施設を設置した企業に支給される助成金です。

◆障害者介助等助成金

障害者を雇用する際に、必要な介助者を職場に配置する、またはそれを委嘱する企業に支給される助成金です。

◆重度障害者等通勤対策助成金

障害者が自ら運転できる自動車の購入費、障害者が公共交通機関を利用して通勤するための訓練担当者を委嘱する費用など、障害者の通勤を容易にするための対策を行う際に支給される助成金です。

◆重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度障害者を、10人以上継続して雇用している企業に支給される助成金です。今後の雇用に際し、事業施設を設置・整備する際に費用の3分の2が支給されます。

トライアル雇用助成金

障害者の雇用機会を増やすため、原則3カ月試行雇用する際に支給される助成金です。正規雇用の従業員と同等となる1週間の労働時間が30時間以上の「障害者トライアルコース」、週20時間以上の勤務を目指す「障害者短期間トライアルコース」の2種に分けられます。

◆特定求職者雇用開発助成金

特定の条件を満たした求職者を新たに雇用した企業に支給される助成金です。条件により、以下の3種に分けられます。

  • 特定就職困難者コース:ハローワークなどの紹介により、障害者・高齢者を継続雇用する企業を助成
  • 発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース:ハローワークなどの紹介により、発達障害者や難治性疾患患者を継続雇用する企業を助成
  • 障害者初回雇用コース:これまでに障害者雇用の経験がない、労働者数43.5~300人規模の中小企業が初めて障害者を雇用、申請した際に助成

◆障害者雇用安定助成金

障害者の雇用を安定的なものにする対策に対して支給される助成金です。以下の2種があります。
 

  • 障害者職場定着支援コース:障害者の特性に合わせ、雇用管理や雇用形態を見直したり、柔軟な働き方を工夫したりする企業に対して支給される
  • 職場適応援助コース:職場適応に課題を抱える障害者のため、職場にジョブコーチが出向いて支援を行う際に支給される

◆人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

障害者の職業に必要な能力の開発、向上を促進するため、教育訓練を行う施設を設置・運用する際に支給される助成金です。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

有期雇用労働者を、正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換する措置、もしくは無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する措置を継続的に取った場合に受け取れる助成金。障害者を雇用するだけではなく、職場定着を図るためのものです。

障害者雇用助成金制度を利用する際の注意点

障害者雇用助成金制度を利用する際は、以下の3点に注意しましょう。

◆障害者が利用しやすい環境の整備

身体的な障害、精神的な障害、発達障害など、障害の種類や本人の適性により、必要な配慮は異なります。障害者の得手不得手を見極め、その人に合った環境整備を心がけましょう。大規模な設備変更を行う必要は必ずしもなく、多少の改善や周囲のサポートで対応可能な場合もあります。

◆実雇用率のカウントの変動

障害の程度や種類に応じて実雇用率のカウントは変動します。正確な数値を算出するようにしましょう。

・身体障害者・知的障害者

週30時間以上、1年以上の雇用が見込まれる労働者:1人カウント
週20時間以上30時間未満の時短労働者:0.5人カウント

 

・重度の身体障害者・知的障害者

週30時間以上、1年以上の雇用が見込まれる労働者:2人カウント
週20時間以上30時間未満の時短労働者:1人カウント

 

・精神障害者(程度は不問)

週30時間以上、1年以上の雇用が見込まれる労働者:1人カウント
週20時間以上30時間未満の時短労働者:0.5人カウント
時短労働者であっても、新雇用から3年以内・精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内・令和5年3月31日までに雇用され、精神障害者福祉手帳を取得した人は1人としてカウント

 

◆他の労働者との差別をしないこと

企業には、他の通常の労働者と同じように業務に取り組めるような環境を、障害者側と協力しながらつくっていく必要があるでしょう。
 
労働人口が減っていく現代において、障害者も貴重な働き手です。助成金制度を上手く活用し、雇用に際して求められる特別な配慮、対策を施しましょう。また、設備など物理的な面だけではなく、障害者・企業・通常労働者の協力体制も忘れてはいけません。

 

<取材先>
株式会社人材研究所 曽和利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
 
TEXT:卯岡若菜
EDITING:Indeed Japan + 波多野友子 + ノオト

 
“マンガで解説 Indeedで求人をはじめよう! ダウンロードはこちら" 

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。