障害者雇用促進法とは 事業者が知っておきたいキーワード

障害者雇用促進法とは 事業者が知っておきたいキーワード

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)は、障がいのある人それぞれの能力に見合う就労を促進し、安定した職業生活を実現しようとする法令です。障害者雇用促進法の対象者のほか、民間企業が知っておくべき雇用義務制度上の「法定雇用率」「差別の禁止」「合理的配慮」といったキーワードを確認してみましょう。

求人を掲載

障害者雇用促進法の対象

現在の日本における障がいのある人の働き方は、「一般就労」と「福祉的就労」の2通りが想定されています。障害者雇用促進法の適用対象は一般就労です。

◆一般就労

企業と雇用契約を結んだ上で働きます。障害者雇用促進法では、その対象者を「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者(発達障害者を含む)」「その他心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定めています。

◆福祉的就労

一般就労が難しい障がいのある人を対象とした、その他の働き方の総称です。具体的には、障害者総合支援法に基づく就労継続支援事業が整備されています。

雇用義務制度(雇用率制度)とは

一定以上の規模の企業では、従業員数に対して障がいのある人を雇用する割合(法定雇用率)が義務づけられています。また、雇用義務制度の対象者は、障害者雇用促進法の対象者の一部に限られます。

◆法定雇用率

法定雇用率は現状の推移を踏まえ、少なくとも5年ごとに見直され、政令で定められる割合です。2020年4月現在、民間企業の法定雇用率は2.2%で、これは労働者45.5人に対して、雇用義務制度の対象となる障がいのある人を1人雇う計算になります。2021年4月までには、2.3%に引き上げられる予定です。
 
法定雇用率は、原則として法人単位で達成することが求められます。ただし、雇用促進の目的で一定の要件を満たす場合は、特例子会社を設立してその会社で障がいのある人を雇用することによって、親会社が雇用しているとみなす仕組みもあります(特例子会社制度)。

◆納付金制度

雇用義務制度の対象ながら法定雇用率を達成できない企業は、高齢・障害・求職者雇用支援機構に規定の納付金を納めます。納付義務の対象は、常用労働者数101人以上の事業者です。
 
納付金制度はいわゆる「罰金」の位置づけではありません。対象者を雇用する企業との経済的負担をならすほか、法定雇用率を超えて雇用する企業に助成金を支給したり、雇用水準を引き上げたりする目的で徴収されます。

差別禁止と合理的配慮の提供義務

2016年(平成28年)に施行された改正法では、「障害者に対する差別の禁止」と、「事業者による合理的配慮の提供義務」が明文化されました。どちらの概念も、障害の有無に関わらず労働環境の平等を実現し、障がいのある人の雇用を保障することを目的としています。

◆差別の禁止

応募者や労働者に対して、障害を理由に不当な取り扱いをすることを禁止します。職業能力などを適正に評価した結果、合理的な理由で区別する場合は該当しません。
 
不当な取り扱いの例)

  • 能力に関わらず、単に障害があることを理由に特定の業務を割り当てた(配置に関する差別)
  • 昇格の基準を満たしているのに、障害を理由に対象外とした(昇進に関する差別)
  • 参加資格があるのに、障害を理由に研修に参加させなかった(職業訓練に関する差別)

※詳細はこちら

◆合理的配慮の提供義務

一般企業の職場環境で障がいのある人が働こうとすると、様々な場面で不都合が起こることは少なくありません。そのような支障を改善して働きやすくするための考え方が「合理的配慮」です。職場やそこでの働き方において障害を理由に不利な影響を受けている場合、当事者の特性に合わせて合理的な措置を講じることを事業者に義務づけるものです。
 
事業者は、応募者や従業員から困っている事柄についての報告や提案を受け、本人と話し合って、労働環境の改善策を講じます。障がいの種類や程度、就いている業務によって、具体的にどのような措置が「合理的配慮」に当たるのかはケースバイケースです。
 
ただし、事業主に対して「過重な負担」が掛かる場合は、提供義務を負わないとされています。これは、事業活動への影響度や実現の難易度、費用面や企業規模、財務状況を踏まえて、個別の事例ごとに判断されます。とはいえ、利用できる公的支援をきちんと利用するなど、それぞれの事業主が可能な範囲で取り組むことが求められています。
 
合理的配慮に至るには、障がいのある従業員との話し合いが重要です。相談に応じて適切な対応ができるよう気軽に相談できる環境を整え、体制の整備や雇用管理上必要な措置を講じることが義務づけられています。また、適切な配慮ができない場合は、当事者へその理由を説明する必要があります。

誰もが働きやすい職場づくりを考える

障がいがあるかどうかに関わらず、従業員個々の能力に見合った業務分担となるよう人員配置を行うことは、企業活動の要です。応募者や従業員の持つ障がいの特性を確認し、適性を考慮しながら個別のに業務を課していきましょう。当事者のプライバシーに配慮し、情報管理に注意して進めていくことも大切です。
 
また、雇用義務制度の対象者である障害者を雇用する場合は、トレーナー役の社員と組ませるなど、より手厚い環境整備も必要です。特に働き始めの時期は、誰でも新しい環境を不安に思うもの。人事としてサポートできることを考えましょう。


※記事内で取り上げた法令は2020年3月時点のものです。
 
参考:事業者の方へ 障害者雇用のルール(厚労省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html

監修:うたしろFP社労士事務所 歌代将也
TEXT:森夏紀
EDITING:Indeed Japan + ノオト

 
“マンガで解説 

求人を掲載
準備はできましたか?求人を掲載

*ここに掲載されている内容は、情報提供のみを目的としています。Indeed は就職斡旋業者でも法的アドバイスを提供する企業でもありません。Indeed は、求人内容に関する一切の責任を負わず、また、ここに掲載されている情報は求人広告のパフォーマンスを保証するものでもありません。