全体最適と部分最適、人事労務への活かし方とは?

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「全体最適」は、昨今求められている企業経営における考え方の一つです。対義語として使われる「部分最適」との違いや、組織を運営する上でこの2つをどのように人事労務に活かしていくべきなのか、株式会社人材研究所代表の曽和利光さんに伺いました。

 
 

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全体最適とは


「全体最適」とは、企業全体が最適な状態になることをいいます。一部(部署や個人など)の生産性や効率性ではなく、組織全体がもっともパフォーマンスを発揮できる経営方針を目指す考え方です。

 
 

部分最適とは


「部分最適」とは、企業においてある部署や個人などの一部のみの生産性や効率性を実現し、最適化された状態をいいます。

 
 

全体最適と部分最適は表裏一体 それぞれのメリット・デメリット


全体最適と部分最適は対義語として捉えられがちですが、生産性や効率性を向上させるという目的においては共通しています。しかし、部署や個人がそれぞれ自由に部分最適をはかり最高のパフォーマンスを発揮しても、全体最適につながるとは限りません。

 
 

◆全体最適のメリットとデメリット


メリット:個々に見直す箇所(部分最適)が明確になり、従業員が社内における自分の役割を認識しやすくなる。
デメリット:何か問題が起こった際、現場の判断で即座に動けない場合がある。

 
 

◆部分最適のメリットとデメリット


メリット:従業員一人ひとりのスキルアップや、部署ごとの成果につながりやすい。
デメリット:他部署との連携が失われ、互いの効果を打ち消しあってしまう可能性がある。

 
 

組織運営における全体最適と部分最適の考え方


全体最適を保ちながら、各々が部分最適を目指すのが理想的な組織運営の考え方だと思います。それを実現するためにもっとも重要なことは、人事労務の諸機能に一貫性を持たせることです。
 
人事労務における、採用・配置・評価・報酬・育成・代謝(人材の出入りや組織内での異動などの人の流れを作る作業)などに一貫性があるかどうかは、組織全体がうまくいくかどうか、全体最適と強く関係しています。
 
たとえば、ポテンシャル重視で新卒採用の比率を高める採用方針ならば、育成においては手取り足取り指導する方針をとる必要があります。また、即戦力を重視した採用方針ならば、報酬は成果重視で即高い給料を狙える人事制度を作るのが一貫性のある組織運営です。
 
しかし、方針通りポテンシャルの高い人材を採用したにもかかわらず、育成にはコストをかけず勝手に這い上がってきなさいという方針をとっていたり、即戦力となる人材を採用し、適切な部署に配置しても、旧態依然の年功序列型の報酬制度のままだったりでは意味がありません。
 
このように一貫性に欠けた人事機能では、各施策はうまくいっても、結局は摩擦を起こし、互いの効果を打ち消し合ってしまいます。つまり、部分最適ではあっても全体最適にはつながりません。

 
 

全体最適の成功のポイントと注意点


人事の諸機能に一貫性を持たせるためのポイントとして、以下が挙げられます。

 
 

◆強力な人物が諸機能の方向合わせを一手に引き受ける


経営者や人事トップなどがしっかりと方向性を合わせ、各施策間でのギャップを埋めていく働きをしましょう。

 
 

◆担当以外の機能を経験させる


自分が担当する人事機能以外のこともきちんとわかっている人材を人事担当にしましょう。人事部内で担当業務をローテーションさせたり、各機能を兼務させたりして、さまざまな機能を経験させることが大切です。
 
各人事機能の担当者は、自分の担当機能(採用など)だけを見て方針を決める部分最適をしてはいけません。かならずほかの機能と足並みをそろえた方針に方向を合わせてください。
 
それぞれが自分勝手な手段で自由に動き、部分最適だけに目を向けていては一貫性が失われ、全体最適にはつながらないことを常に意識することが重要です。

 
 
 

※記事内で取り上げた法令は2022年4月時点のものです。
 
<取材先>
株式会社人材研究所 代表 曽和利光さん
京都大学卒業後、リクルートに入社。人事部のゼネラルマネージャーとして培ったスキル・ノウハウと、2万人の面接経験を融合しワンランク上の人材を採用する独自手法を確立。その後、大手生命保険会社などで一貫して人事領域で活躍し、2011年に株式会社人材研究所設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新聞社)などがある。
 
TEXT:塚本佳子
EDITING:Indeed Japan + 南澤悠佳 + ノオト

 
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