労働法とは
労働法とは、労働に関する法令の総称です。労働法という名称の法律が存在するわけではなく、労働問題に関する様々な法律をまとめて呼ぶものです。
◆労働法の成立背景
企業や事業主などの「雇用する側」と、社員や店舗スタッフなどの「雇用される側」が労働契約を結ぶ際、本来であれば両者は対等の立場にあります。どのような労働条件で働くかについても、双方の合意が必要です。
ところが、実際の社会では、雇用する側の立場が強くなることが少なくありません。そこで、雇用される側(労働者)を守るためのルールとして制定されたのが労働に関する法律です。代表的なものに、「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」を合わせた労働三法があります。
ここでの「雇用される側」とは、正社員だけでなくパート・アルバイトや派遣社員なども含まれます。採用担当者は、それぞれの立場を正しく認識した上で、雇用される側を尊重しなければいけません。自社の立場を守りながら採用目標を達成するべく、業務を進めていきましょう。
人事業務の担当者が知っておくべき労働法
人事領域の業務では、人材の配置や異動、人事考課などを行います。事業計画に沿った適切な人員配置を検討するため、従業員の雇用形態や就業におけるルールをしっかり把握しましょう。
◆短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称:パートタイム・有期雇用労働法)
アルバイトやパートと呼ばれる短時間勤務の従業員(パートタイム労働者)について、十分な能力を発揮できるよう公正な待遇を確保するための法律です。働き方改革関連法によって、「同一労働同一賃金」が導入され正規従業員との不合理な待遇差を解消することが求められるほか、新たに有期契約労働者が対象に含まれました。
◆労働者派遣法
派遣労働者は、労働契約を結んだ会社で働くのではなく、派遣元の会社と契約して別の会社(派遣先)に派遣されます。従来、労働者派遣は職業安定法により禁止されていましたが、実態として派遣労働が増加していたことから、派遣労働者の職場環境の整備などを目的として1986年に施行されました。現在は、パートタイム労働者と同じく、働き方改革関連法によって同一労働同一賃金が導入されています。
◆障害者の雇用の促進等に関する法律
各企業に障害者の一定割合の雇用(法定雇用率)を義務づけているほか、差別の禁止と合理的配慮の提供を定めています。合理的配慮とは、障害の有無に関わらず平等な機会を提供するために、個別の対応や支援を行うことです。
◆高齢者雇用促進法
高齢者の雇用促進と安定のために定められた法律です。企業に求められる雇用確保義務年齢は、2013年の改正時に65歳に引き上げられました。現在、企業は65歳までの雇用確保措置として、以下の3つの選択肢から選ぶ必要があります。
- 定年年齢を65歳以上に引き上げる
- 現在雇用している本人が希望する場合は定年後も65歳まで継続雇用する
- 定年制度自体を廃止する
また、改正により2021年4月からは70歳までの就業確保が努力義務(罰則なし)となっています。
労務領域の担当者が知っておくべき労働法
労務管理の担当者は、就業規則の整備や勤怠管理、社会保険の手続きや衛生環境の整備などを行います。従業員の雇用条件や働き方に関するルールは多岐にわたるため、不明点は都度確認するようにしましょう。
◆最低賃金法
賃金の最低限度額を定めた法律です。最低賃金額の指標には、都道府県別の「地域別最低賃金」と、産業別の「特定最低賃金」の2種類があります。
◆育児・介護休業法
子育てや介護をしながら働く労働者の雇用継続のために制定された法律です。子育ての場合は、最長で子が2歳に達するまでの連続した期間に育児のため休業することを、男女を問わず労働者の権利として定めています。介護の場合は、要介護家族1人につき3回まで、通算93日を上限として分割した休業の取得が可能です。また、これらを理由に雇う側が不合理な扱いをすることを禁止しています。
◆労働安全衛生法
高度成長期に深刻化した労働災害に対応するため、労働基準法の一部を独立させて制定された法律です。職場での労働者の安全と衛生の最低基準を設け、快適な職場環境づくりを推進します。
労働法の全体像を掴み、人事・労務の業務に生かす
従業員が安心して業務に取り組める職場環境を実現するために、人事や労務の業務はとても大切です。各種労働法の目的や取り組み義務を把握し、より明確な目的のもとで業務を進めるようにしましょう。また、法律は改正されるため、常に最新情報を確認することが大切です。
※記事内で取り上げた法令は2021年8月時点のものです。
監修:うたしろFP社労士事務所 社会保険労務士 歌代将也
TEXT:森夏紀
EDITING:Indeed Japan + ノオト